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17-9 再びの旅立ち
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ヨゼフとの話を終えたアリアドネは自室へと戻ってきた。
「早速、荷造りをしないといけないわね」
ポツリと呟くと、アリアドネは早速荷造りの準備を始めた――。
21時――
「ふ~……終わったわ」
アリアドネの前には3つのトランクケースが置かれている。中に入っているのは、ステニウス家から持参したミレーユのお下がりの古めかしい服ばかりだった。
クローゼットには支給された服やメイド服などが吊り下げられているが、アリアドネはその服を持っていこうとは思わなかった。何しろ、これらの服は自分のものではないからだ。
別のクローゼットにはエルウィンからおくられた美しいドレスが何着も掛けられているが、アリアドネは一度も袖を通したことがない。
「いずれエルウィン様は結婚されるはずだわ。その方にこのドレスを使って貰えればいいわね。尤も……相手の女性に気に入ってもらえればだけど……」
アリアドネは寂しそうに笑った。
「そうだわ、黙っていなくなるのだからせめて置き手紙くらいは書いていきましょう」
ライティングデスクに向かうと、アリアドネは早速3通の手紙をしたためた。1通はエルウィン宛に、そしてもう一通はミカエルとウリエルの為に。最後の1通は、自分に親切にしてくれた下働きの女性達に心を込めて。
そしてヨゼフとの待ち合わせの時刻になった――。
****
深夜0時――
アリアドネとヨゼフの姿が城の裏門にあった。2人の前には荷馬車に繋がれた馬がいる。この馬は2人がこの城に来るときに連れてきた馬だった。
「アリアドネ、荷馬車に乗りなさい」
白い息を吐きながらヨゼフがアリアドネに声を掛けた。
「はい」
素直に返事をしたアリアドネは荷馬車に乗り込むと、ヨゼフが声を掛けてきた。
「いいかい?4月とは言っても『アイデン』地方は寒い。荷馬車の中から出ないようにするんだよ」
「はい、でも……ヨゼフさんは大丈夫なのですか?私だけ荷馬車の中にいるのは何だか申し訳なくて……」
「そんなことは気にする必要はない。沢山厚着をしているし、それに……ほら」
ヨゼフは両手を広げてアリアドネに見せた。
「この通り、アリアドネが編んでくれた手袋にマフラーまでしているから大丈夫だよ」
「ヨゼフさん……」
実は、アリアドネはヨゼフの為にマフラーと手袋を編んでいた。それを先程手渡していたのだ。
「よし、それでは行こうか?」
ヨゼフは御者台に乗るとアリアドネに声を掛けた。
「はい」
「では、とりあえず一番近い宿場村を目指そう」
そしてヨゼフは手綱を握りしめると、馬車はガラガラと音を立てて走り始めた。
「アイゼンシュタットの皆さん……今までお世話になりました……」
アリアドネは暗い夜空にポカリとシルエットとして浮かび上がるアイゼンシュタットを見つめながら、別れの言葉を口にした。
この日……アリアドネとヨゼフは半年間暮らしたアイゼンシュタットを旅立っていった――。
「早速、荷造りをしないといけないわね」
ポツリと呟くと、アリアドネは早速荷造りの準備を始めた――。
21時――
「ふ~……終わったわ」
アリアドネの前には3つのトランクケースが置かれている。中に入っているのは、ステニウス家から持参したミレーユのお下がりの古めかしい服ばかりだった。
クローゼットには支給された服やメイド服などが吊り下げられているが、アリアドネはその服を持っていこうとは思わなかった。何しろ、これらの服は自分のものではないからだ。
別のクローゼットにはエルウィンからおくられた美しいドレスが何着も掛けられているが、アリアドネは一度も袖を通したことがない。
「いずれエルウィン様は結婚されるはずだわ。その方にこのドレスを使って貰えればいいわね。尤も……相手の女性に気に入ってもらえればだけど……」
アリアドネは寂しそうに笑った。
「そうだわ、黙っていなくなるのだからせめて置き手紙くらいは書いていきましょう」
ライティングデスクに向かうと、アリアドネは早速3通の手紙をしたためた。1通はエルウィン宛に、そしてもう一通はミカエルとウリエルの為に。最後の1通は、自分に親切にしてくれた下働きの女性達に心を込めて。
そしてヨゼフとの待ち合わせの時刻になった――。
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深夜0時――
アリアドネとヨゼフの姿が城の裏門にあった。2人の前には荷馬車に繋がれた馬がいる。この馬は2人がこの城に来るときに連れてきた馬だった。
「アリアドネ、荷馬車に乗りなさい」
白い息を吐きながらヨゼフがアリアドネに声を掛けた。
「はい」
素直に返事をしたアリアドネは荷馬車に乗り込むと、ヨゼフが声を掛けてきた。
「いいかい?4月とは言っても『アイデン』地方は寒い。荷馬車の中から出ないようにするんだよ」
「はい、でも……ヨゼフさんは大丈夫なのですか?私だけ荷馬車の中にいるのは何だか申し訳なくて……」
「そんなことは気にする必要はない。沢山厚着をしているし、それに……ほら」
ヨゼフは両手を広げてアリアドネに見せた。
「この通り、アリアドネが編んでくれた手袋にマフラーまでしているから大丈夫だよ」
「ヨゼフさん……」
実は、アリアドネはヨゼフの為にマフラーと手袋を編んでいた。それを先程手渡していたのだ。
「よし、それでは行こうか?」
ヨゼフは御者台に乗るとアリアドネに声を掛けた。
「はい」
「では、とりあえず一番近い宿場村を目指そう」
そしてヨゼフは手綱を握りしめると、馬車はガラガラと音を立てて走り始めた。
「アイゼンシュタットの皆さん……今までお世話になりました……」
アリアドネは暗い夜空にポカリとシルエットとして浮かび上がるアイゼンシュタットを見つめながら、別れの言葉を口にした。
この日……アリアドネとヨゼフは半年間暮らしたアイゼンシュタットを旅立っていった――。
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