12 / 12
12話
しおりを挟む
「ねぇ、この学園の誰とも付き合いたくないって言ってるけど、ひょっとして別の学園に好きな人がいるの?」
「まさか。そんなはずないじゃない」
腕組みして答える。
「だ、だったら……僕じゃ駄目なの? これでも僕は……」
「女の子に人気があるって言いたいんでしょう? でもそれが何か?」
だけど、そんなことは今の私には全く関係ないことだ。
「何って……それじゃ、どうして駄目なのか教えてよ」
必死に尋ねてくるサイラス。俯いてプルプル震えている姿は可愛らしいけれども……。私は『クールビューティ』。決して感情で流されたりはしない。
「なら、はっきり言ってあげる。私はねぇ! あなた達みたいなお子ちゃまは嫌なのよ!!」
ビシッとサイラスを指さした。
「お、お子ちゃまって……だって僕たち5歳だよ?」
顔を真っ赤にさせて訴えるサイラスは今にも泣きそうになっている。
「ええ、そうよ。私も5歳、あなたも5歳。だけどねぇ、私は大人の男性がいいの! チンチクリンの子供には興味ないのよ!」
「チ、チンチクリンて……う、うわあぁああんっ! ステファニーのばかーっ!!」
とうとう、サイラスは我慢できずに泣きながら走り去って行った。
きっとあんなに泣けば今日の昼休みは泣きつかれて、お昼寝タイムに入るだろう。
「全く。子供のくせに、この私と付き合おうなんて……10年、いえ15年は早いわね」
バサッと長い髪の毛を後ろに払う。
「え~と……確か、今日の予定はお遊戯に、園庭遊び‥‥‥お昼寝タイムの後は図工だったわね。まぁ図工ぐらいは出てもいいかしら……だったら、行く先は決まっているわね」
私は立ち上がると星組の教室には寄らず、図書室へ足を向けた。
****
「あら、いらっしゃい。ステファニーさん。またクラスを抜け出してきたのね?」
司書の女性がカウンターから笑顔で私を迎える。この人だけが私を子ども扱いしないでくれる。
だから私は彼女に親近感を抱いていた。
「おはようございます。はい、またしても抜け出してきました。お勧めの恋愛小説はありますか?」
「ええ、勿論です。何しろステファニーさんの為だけに用意した本ですから」
ニコリと笑みを浮かべ、女性司書は本をカウンターに置いた。
「この本はお勧めですよ。中々濃厚な恋愛が描かれていますから」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
喜んで本を受け取ると、私は早速いつもの席に座って読書を始めた。
「…‥はぁ~……やっぱり恋愛小説って最高よね……前世を思い出すわ……」
私の前世は25歳の日本人女性で、フリーのイラストレーターだった。仕事と恋人に恵まれ、充実した日々を過ごしていたそんなある日。
大きな仕事を任され、何日も寝ないで必死にイラストを制作し……納品したその日の内に倒れてしまい、気が付いたらこの世界に生まれていたのだ。
前世の記憶が鮮明に残っている私が、普通でいられるはずがない。
精神年齢が成人に達しているのに、幼稚な子供達と混ざって幼稚な授業? を受け入れられるはずが無い。
そこで図書室に逃げ込み、先生用の図書コーナーで大人の恋愛小説を読んでいた。
その現場を司書の女性……エリザベスさんに見つかってしまい、今に至る関係になったのだ。
「ステファニーさん、お茶をどうぞ」
読書をしていると、エリザベスさんが紅茶を注がれたティーカップを置いてくれた。
「ありがとうございます」
笑顔で返事をするとエリザベスさんがニコリと笑った。
「この間は痴話喧嘩に巻き込まれて大変でしたね?」
「本当に大変でしたよ。全く……5歳児のくせに、最近の子供はませているのだから」
紅茶を飲むとため息をつく。
「でも、あの男の子とは仲良く遊んでいたじゃないですか?」
「え!? な、何故それを!?」
「実は私もあの日、恋人と動物園に行っていたのですよ。中々お似合いのカップルでしたわ。皆、あなた達を見て微笑ましく笑っていましたから」
「まぁ、彼は普通の5歳児よりは大人びているかもしれませんけど……所詮、私の相手ではありませんから」
ため息をつくと、司書の女性は更に笑顔になった。
「あら? でも今は駄目でも、将来はどうなるか分かりませんよ? 何せ、この学園は大学まで一貫校ですから」
「それは無いですよ。だって、私先程こっぴどく彼を振りましたから。今の私はおままごとの恋愛より、本の中の恋愛の方が余程興味ありますからね」
そして再び本に目を通した。
この時の私はまだ何も知らない。
15年後……輝くような美青年になったサイラスといずれ結婚するという事実を――
<完>
「まさか。そんなはずないじゃない」
腕組みして答える。
「だ、だったら……僕じゃ駄目なの? これでも僕は……」
「女の子に人気があるって言いたいんでしょう? でもそれが何か?」
だけど、そんなことは今の私には全く関係ないことだ。
「何って……それじゃ、どうして駄目なのか教えてよ」
必死に尋ねてくるサイラス。俯いてプルプル震えている姿は可愛らしいけれども……。私は『クールビューティ』。決して感情で流されたりはしない。
「なら、はっきり言ってあげる。私はねぇ! あなた達みたいなお子ちゃまは嫌なのよ!!」
ビシッとサイラスを指さした。
「お、お子ちゃまって……だって僕たち5歳だよ?」
顔を真っ赤にさせて訴えるサイラスは今にも泣きそうになっている。
「ええ、そうよ。私も5歳、あなたも5歳。だけどねぇ、私は大人の男性がいいの! チンチクリンの子供には興味ないのよ!」
「チ、チンチクリンて……う、うわあぁああんっ! ステファニーのばかーっ!!」
とうとう、サイラスは我慢できずに泣きながら走り去って行った。
きっとあんなに泣けば今日の昼休みは泣きつかれて、お昼寝タイムに入るだろう。
「全く。子供のくせに、この私と付き合おうなんて……10年、いえ15年は早いわね」
バサッと長い髪の毛を後ろに払う。
「え~と……確か、今日の予定はお遊戯に、園庭遊び‥‥‥お昼寝タイムの後は図工だったわね。まぁ図工ぐらいは出てもいいかしら……だったら、行く先は決まっているわね」
私は立ち上がると星組の教室には寄らず、図書室へ足を向けた。
****
「あら、いらっしゃい。ステファニーさん。またクラスを抜け出してきたのね?」
司書の女性がカウンターから笑顔で私を迎える。この人だけが私を子ども扱いしないでくれる。
だから私は彼女に親近感を抱いていた。
「おはようございます。はい、またしても抜け出してきました。お勧めの恋愛小説はありますか?」
「ええ、勿論です。何しろステファニーさんの為だけに用意した本ですから」
ニコリと笑みを浮かべ、女性司書は本をカウンターに置いた。
「この本はお勧めですよ。中々濃厚な恋愛が描かれていますから」
「本当ですか!? ありがとうございます!」
喜んで本を受け取ると、私は早速いつもの席に座って読書を始めた。
「…‥はぁ~……やっぱり恋愛小説って最高よね……前世を思い出すわ……」
私の前世は25歳の日本人女性で、フリーのイラストレーターだった。仕事と恋人に恵まれ、充実した日々を過ごしていたそんなある日。
大きな仕事を任され、何日も寝ないで必死にイラストを制作し……納品したその日の内に倒れてしまい、気が付いたらこの世界に生まれていたのだ。
前世の記憶が鮮明に残っている私が、普通でいられるはずがない。
精神年齢が成人に達しているのに、幼稚な子供達と混ざって幼稚な授業? を受け入れられるはずが無い。
そこで図書室に逃げ込み、先生用の図書コーナーで大人の恋愛小説を読んでいた。
その現場を司書の女性……エリザベスさんに見つかってしまい、今に至る関係になったのだ。
「ステファニーさん、お茶をどうぞ」
読書をしていると、エリザベスさんが紅茶を注がれたティーカップを置いてくれた。
「ありがとうございます」
笑顔で返事をするとエリザベスさんがニコリと笑った。
「この間は痴話喧嘩に巻き込まれて大変でしたね?」
「本当に大変でしたよ。全く……5歳児のくせに、最近の子供はませているのだから」
紅茶を飲むとため息をつく。
「でも、あの男の子とは仲良く遊んでいたじゃないですか?」
「え!? な、何故それを!?」
「実は私もあの日、恋人と動物園に行っていたのですよ。中々お似合いのカップルでしたわ。皆、あなた達を見て微笑ましく笑っていましたから」
「まぁ、彼は普通の5歳児よりは大人びているかもしれませんけど……所詮、私の相手ではありませんから」
ため息をつくと、司書の女性は更に笑顔になった。
「あら? でも今は駄目でも、将来はどうなるか分かりませんよ? 何せ、この学園は大学まで一貫校ですから」
「それは無いですよ。だって、私先程こっぴどく彼を振りましたから。今の私はおままごとの恋愛より、本の中の恋愛の方が余程興味ありますからね」
そして再び本に目を通した。
この時の私はまだ何も知らない。
15年後……輝くような美青年になったサイラスといずれ結婚するという事実を――
<完>
872
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(10件)
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢アンジェリカの最後の悪あがき
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【追放決定の悪役令嬢に転生したので、最後に悪あがきをしてみよう】
乙女ゲームのシナリオライターとして活躍していた私。ハードワークで意識を失い、次に目覚めた場所は自分のシナリオの乙女ゲームの世界の中。しかも悪役令嬢アンジェリカ・デーゼナーとして断罪されている真っ最中だった。そして下された罰は爵位を取られ、へき地への追放。けれど、ここは私の書き上げたシナリオのゲーム世界。なので作者として、最後の悪あがきをしてみることにした――。
※他サイトでも投稿中
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
悪役令嬢が睨んでくるので、理由を聞いてみた
ちくわ食べます
恋愛
転生したのは馴染みのない乙女ゲームの世界だった。
シナリオは分からず、登場人物もうろ覚え、タイトルなんて覚えてすらいない。
そんな世界でモブ男『トリスタン』として暮らす主人公。
恋愛至上主義な学園で大人しく、モブらしく、学園生活を送っていたはずなのに、なぜか悪役令嬢から睨まれていて。
気になったトリスタンは、悪役令嬢のセリスに理由を聞いてみることにした。
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
断罪の準備は完璧です!国外追放が楽しみすぎてボロが出る
黒猫かの
恋愛
「ミモリ・フォン・ラングレイ! 貴様との婚約を破棄し、国外追放に処す!」
パルマ王国の卒業パーティー。第一王子アリオスから突きつけられた非情な断罪に、公爵令嬢ミモリは……内心でガッツポーズを決めていた。
(ついにきたわ! これで堅苦しい王妃教育も、無能な婚約者の世話も、全部おさらばですわ!)
私を選ばなかったくせに~推しの悪役令嬢になってしまったので、本物以上に悪役らしい振る舞いをして婚約破棄してやりますわ、ザマア~
あさぎかな@コミカライズ決定
恋愛
乙女ゲーム《時の思い出(クロノス・メモリー)》の世界、しかも推しである悪役令嬢ルーシャに転生してしまったクレハ。
「貴方は一度だって私の話に耳を傾けたことがなかった。誤魔化して、逃げて、時より甘い言葉や、贈り物を贈れば満足だと思っていたのでしょう。――どんな時だって、私を選ばなかったくせに」と言って化物になる悪役令嬢ルーシャの未来を変えるため、いちルーシャファンとして、婚約者であり全ての元凶とである第五王子ベルンハルト(放蕩者)に婚約破棄を求めるのだが――?
婚約破棄された人たらし悪役令嬢ですが、 最強で過保護な兄たちと義姉に溺愛されています
由香
ファンタジー
婚約破棄のその日、
悪役令嬢リリアーナは――弁明すら、しなかった。
王太子と“聖女”に断罪され、すべてを失った彼女。
だがその裏で、王国最強と名高い三人の兄と、
冷静沈着な義姉が、静かに動き始めていた。
再検証によって暴かれる“聖女の嘘”。
広場で語られる真実。
そして、無自覚に人を惹きつけてしまう
リリアーナの優しさが、次々と味方を増やしていく――。
これは、
悪役令嬢として断罪された少女が、
「誰かの物語の脇役」ではなく、
自分自身の人生を取り戻す物語。
過保護すぎる兄たちと義姉に溺愛されながら、
彼女は静かに、そして確実に幸せへ向かっていく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
続編ですか? ……もしかするといずれ書くかもしれません。
お読みいただき、ありがとうございました★
感想ありがとうございます。最終的にサイラスの初恋は叶いました