【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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バザー会場にて その2

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「へぇ、ハーブティーって、いろいろな種類があるんですね」
「そうだね、どれを選べばいいのか迷うな。エレアーナ嬢、おススメとかあるかな?」
「そうですね。飲みやすいものを用意してはいるのですが、初めての方でしたら、カモミールとかレモングラス、後は、ジャスミンなどはいかがでしょうか」
「じゃあ、その3つを頼んで僕たちで飲んでみようか。エレアーナ嬢はどうする?」
「では、わたくしはラベンダーにしますわ」
「うん、じゃあ、ライナス。頼んできてよ」
「無理ですよ。オレ、そんな呪文みたいな名前、覚えられる自信ないです」
「……では、俺が行こう。エレアーナ嬢、申し訳ないがもう一度、お茶の名前を言ってもらっても?」
「あ、では、わたくしもご一緒しますわ」

屋台周辺には、あちらこちらにテーブルや椅子が置いてあり、購入した軽食や飲み物を自由に楽しめるようになっている。

注文した茶葉を子どもたちがポットに入れて蒸らしている間、エレアーナとケインバッハは少々、手持無沙汰で。

そう言えば、この方が話してるところって、ほとんど見たことなかったわ。

知り合ってからそれほどの期間も経っていないが、会ったときはいつもレオンハルトが話をしていた。ケインバッハは、それこそ一言か二言くらいで。

無口? それとも嫌われてる……とか?

エレアーナに盛大な勘違いをされかけているとも知らず、ケインバッハは黙ってお茶が出てくるのをじっと待っている。

「……あの、ここの屋台でハーブティーを出すのは初めての試みなんです。今回の評判が良かったら、ここで子どもたちがハーブを育てることもできるかと思いまして」
「……なるほど」
「よろしかったら、お茶の感想を教えてくださると嬉しいですわ。参考にしますので」
「……感想とは」
「えぇと、飲みやすさとか、味とか、好きとか嫌いとかでも結構です。思ったことは何でもおっしゃってくださるとありがたいですわ」
「……了解した」

何かしら、これ? 罰ゲームか何か? 

私、よっぽど嫌われてるんじゃないかしら。
殿下に無理やり誘われて、来たくもないのに連れてこられたとか?

でも、私が誘ったわけじゃないんだから、こんな嫌そうにされても困るのだけれど。

会話を続けることを諦めて、2人で静かに待つことにして。

茶葉の蒸らし時間が終わり、子どもたちがカップに注いだお茶をスタンドの台の上に乗せる。
まとめて運んだ方がいいだろうと、横からトレイを差しだせば、ケインバッハさまは出てきたばかりのお茶を見つめたまま固まって。

「どうかなさいまして? ケインバッハさま」
「……いや、こんなに……」
「え……?」
「……こんなに、お茶によって色が違うとは、思わなくて……」
「……」
「色も、とても……」

目を見開いて、ゆっくりと言葉を紡いで、それから。

少しだけ、口角が上がって。

たったそれだけで、すべてが伝わる。

「……綺麗ですね」

するとケインバッハさまは、私を見て、それから、優しく目を細めて。

「ああ、……とても綺麗だ」

私を見つめて、そう言うものだから、……お茶の色のことだってわかっているのに。

頬が赤くなったのが、自分でもわかってしまって、いくらなんでも自意識過剰でしょって、自分で自分に突っ込んでみても、治まらなくて。

恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。

「……調子が悪いのか?」
「は?」
「顔が赤いが」
「……お気遣いありがとうございます、ケインバッハさま。でも、大丈夫ですわ」

すると、トレイを持ってレオンハルトさまたちの待つテーブルへと向かうケインバッハさまの足が、ピタリと止まって。

「あの・・・?」
「……呼び方」
「へ?」

思わず間抜けな声が出てしまった。

「今はお忍び中だから、その、呼び方……」
「えっと、ではなんと……」
「……ケイン」
「へ?」

本日2度目の間抜け声。

「ケインで、いい」
「……」

もうダメ、これ。今、私、きっと、すごい赤くなってる。
気のせいだと思いたいけど、たぶん、絶対。

「では、……ケインさま」
「……ん」

ケインさまの顔も、少し赤いような気がするけど、きっとそれは気のせい。
きっとそれは、私の願望。
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