【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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レオンとケインは鬼になる

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なんか、すごいことになってるんだよ。

ライナスは、ここ最近のレオンたちの変化に付いていけないでいる。
何というか、すごいのだ。レオンもケインも鬼気迫るものがある。

前は熱心に剣の稽古に励む、というぐらいの表現がピッタリで、微笑ましいと言うか、何というか、とにかく笑って見守っていられるレベルだったのだ……が。

……鬼気迫るってこういうことかな。

ついライナスがそう思ってしまうほど、今の彼らの自分への追い込み方がすごいのだ。

鬼のように稽古する。
鬼のように勉強する。
鬼のように調査する。
鬼のように稽古する。
鬼のように勉強する。
鬼のように……。

いや、オレのボキャブラリーの低さのせいじゃないよ。
細かい説明を省いたから、ただのバカみたいな言い方になったけどさ。

たぶん、この間の孤児院のバザー会場を視察したことが大きかったのだろう。
まだ12歳のエレアーナ嬢が、孤児院経営のため、また孤児の将来のために、懸命に考えて行動を起こす様子を目の当たりにして、まっすぐな性格のレオンと実直なケインは素直に触発されたようで。

もともと治安もよく、穏やかな暮らしができる国ではあるが、貧しい人や恵まれない人はもちろん存在していて、そのためのきめ細やかな政策は施行されているものの、やはり抜けているところはあるわけで。

自分の足りない所を突き付けられたような。
これまで安穏と、ただ学び励むだけで満足していた自分を恥じたくなるような。
背筋がびっと伸びるような、そんな感覚。

王太子でなければできないこと、宰相の一人息子でなければ知りえないこと、そんな自分なりの何かを、あの2人は見つけようと必死で。
今の2人の顔には、甘えなどどこにも見えない。

……すごいお嬢さんだよなぁ。

育ちが良くて性格が良くて頭もいい。
たぶん王族とか貴族とかだったら、それだけで十分崇められ誉めそやされるってのに。
綺麗なドレスを着て、笑っていれば安穏と暮らせるのに。
そういうことじゃない、まだ全然足りていないんだと、言葉じゃなく思い知らされた。

いや、きっとあのお嬢さんは、足りてないとか思ったりもしないんだろうけど。

そして、そんなことを人にも思ったりしない、それはわかってるけど、ただ自分で自分を恥じたくなくて。
だから、殿下も、ケインも、考える。必死になる。
民のために、今の自分には何ができるのかって。

……考えてみれば。
上から施すだけで満足してちゃダメなんだって、そんなことオレは思いもしなかった。
困ってるんなら、助けてあげればいい。なければあげればいい、そんな感じで、ただ軽く考えてた。
それも必要なんだって、エレアーナ嬢は言うけど、でもそこで終わらせないことも必要なんだって。

だから。
殿下もケインも、今は自分の時間を自分のためだけには使わない。
勉強や剣の稽古も今まで以上に励んでいるけど、合間を縫って国民のことを考える時間を取っている。

孤児院にハーブの苗を無償で提供したり、公共事業の視察について行ったり、病院を慰問したり、過去の災害のデータを調査して季節ごとの予想を立てたり。
無償で教育を受けられる学校なんて構想も、密かにあるらしい。
文字通り、小さなことから大きなことまで.それこそ、どんなことでも。

自分にできることを見つけようと、殿下もケインも必死だ。
その必死さが、男のオレから見てもすごくカッコいい。

……もうどっちが兄ちゃんか、わかんないよな。
ほら、オレって剣しか取り柄ないしさ。

いやいやいや、そういうことじゃなくて。

……とにかく、明日は、北区のキルフィエ街にある、もう一つの孤児院でバザーを開催する予定で。
殿下は、子どもたちのバザー用販売品の材料にと、小さめの木材をいくつも寄付した。
あと、加工するための道具も。

それを運び込んだときの子どもたちの顔が、ものすごく可愛かったっけ。
無邪気な顔で、オレたちに抱きついてきて。
オレも殿下もケインもぐちゃぐちゃにされて。
他の警護の者たちも、子どもたちに囲まれて、なんか嬉しそうだった。
……ケインが、黙ったまんま、一生懸命子どもを高い高いしてるの、すごく笑えたし。

殿下たちのここ最近の急激な成長ぶりは、陛下も宰相もいたく喜んでるらしい。
そのせいなのか、今度のバザーは最初から最後まで現場にとどまって手伝うよう言われている。

警護であるオレの存在に甘えすぎるなと、殿下たちも短剣一振りを腰に差して気を引き締めるようにとのお言葉だ。

もちろんオレは、いつもどおり長剣だけど。
だって護衛だもの。

ま、とにかく、剣の腕ならオレはまだまだ負けてない。
騎士だからね、オレはそれでいいんだ。うん、そう、絶対。

よーし、明日はオレも張り切って手伝うぞ!
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