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太陽は再び輝いて
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あの後、偶然近くで現場を見ていたお兄さまから、何があったかを詳しく聞いた。
カトリアナさまの大胆さに驚かされて。
普段は大人しい方だけれど、いざという時に行動力があるのは、なんとなく感じてはいたものの。
レオンさまを捕まえて、叱咤激励するほどの度胸があるとは思わなくて。
「そのような資質こそ、王太子妃に望まれるものですわよね・・・」
そうぽつりと零したら、兄は、ふっと笑んで、私の頭をぽん、と撫でた。
「まぁ、エレなら王太子妃を立派に務められるだろうと分かりきってはいるが、カトリアナ嬢もその器であることは間違いないな」
と、なぜか楽しそうに言った。
レオンさま説教事件で、すっかりカトリアナさまのことを気に入ったのか。
最近やたらと、マスカルバーノ家のおふたりの名前が、兄の口から出てくるのだ。
兄ももうじき19になる。
筆頭公爵家の跡取りであること、また外務部第二秘書として華々しく活躍していることもあって、縁談は引きも切らず、それこそ洪水のように押し寄せてきて。
今のところ、それらすべてを、兄の方から断っているけれども。
公爵家の次期当主として、いつか配偶者を迎える日が来ることは確実で。
でも、出来れば。
アリエラさまみたいな方が、奥さまになってくれたらいいなぁ・・・なんて。
ごめんなさい、アリエラさま。
勝手に思っちゃってます。
「・・・む? なんだ?」
あら、じーっとお兄さまの顔を見つめていたら気づかれてしまったわ。
「いえ・・・。なんでもありませんわ」
「なんでもなくはないだろう? 言いたいことがあるなら言いなさい」
ふわりと優しい笑顔で、追及される。
「あの、ええと・・・」
どうしよう。勝手な願望だから、言われても困るよね。
「その・・・いつか、お兄さまも、奥方さまをお迎えになるのだな、と」
名前だけ、伏せておこう。
「もし、ですけれど、出来れば、わたくしも気兼ねなくお話が楽しめるような、明るくて優しい方がお義姉さまになってくださるといいな、と」
怒られちゃう、かな?
そっと兄の顔を盗み見る。
あら? お兄さま、どちらを向いてらっしゃるの?
「・・・お兄さま?」
「・・・なんだ」
「どうして、そちらを向いてらっしゃるのですか?」
「あー、うむ。・・・ちょっと壁に・・・汚れが、あってな。少々・・・気になって、確認しているのだ」
「? そうなんですか」
流石はお兄さま。チェックが厳しいのですね。
私には、綺麗に磨き上げられているようにしか見えませんが。
「あー、・・・エレ」
「はい。なんでしょう? お兄さま」
「私の妻となる女性に関してだが、ブライトン家の跡継ぎとして、私も全く考えていない訳ではない。先ほどのお前の意見も、ちゃんと考慮に入れているから、安心しなさい」
「はい。ありがとうございます」
「・・・ああ」
そうなの。もう考えてらっしゃるのね。
お兄さまの意中の方って、どんなご令嬢なのかしら。
・・・・それにしても。
お兄さまったら、よほど壁の汚れが気になっておられるのね。
ずっとあちらを向いたままだわ。
「エレアーナお嬢さま」
エントランスの方から、執事がやって来た。
「あら、ハインツ。どうしたの?」
「こちらを。レオンハルト王太子殿下からのお手紙が届きました」
ハインツが、すっと淡い水色の封筒を差しだした。
「・・・レオンさまから?」
なにかしら。
お手紙を頂くなんて、初めてだわ。
「わたくし、部屋に戻らせていただきますね。ああ、ハインツ。お兄さまが、壁の汚れを気にしてらっしゃるわ。確認して、後で綺麗にするようメイドに言っておいてね」
「かしこまりました」
「いや、ハインツ・・・」
アイスケルヒに壁の汚れについて確認するハインツの声を背中で聞きながら、封筒を手に部屋に戻る。
どんなことが書いてあるか、少し心配で。
カトリアナさまからの励ましで、元気になっていたらいい、と、思っているけれど。
恐る恐る封を切る。
初めて見るレオンさまの字は。
美しく整った、とても読みやすい字で。
文面には、私の知っている、レオンさまらしさが溢れていた。
親愛なるエレアーナ嬢
寒さが厳しくなってきたね。
その後、何事もなく過ごせているだろうか。
この間は、ほんの少しだったけど、君の顔が見られて嬉しかった。
せっかくお茶に誘ってくれたのに、一緒に過ごせなくてごめんね。
本当はもう少し君と一緒にいたかった。
時間も取ろうと思えば取れたんだ。
君も気付いていたかもしれないけれど、ずっと僕は罪悪感で一杯だった。
僕が、君のことを王太子妃にと望まなければ、君はこんな目に遭わなかったのに、と思っていてね。
会いたくて堪らないのに、会うとすぐに逃げ出したくなる、そんな態度は、君から見てもおかしく見えただろう。
でも、カトリアナ嬢に叱られたよ。
自分の想いを否定するな、と。
だから、まずは謝らせてほしい。
心配をかけてごめん、
そして、気づかない振りをしてくれて、ありがとう。
もう自分から後ろに下がることはしないから、覚悟していてね。
君の心が誰のものか、それがはっきりとわかる日まで、ケインと正々堂々張り合って、君を精一杯想い続けるから。
近いうちに、また様子を見に行くよ。
心からの感謝と愛を込めて
レオンハルト・リーベンフラウ
ふふ。
良かった。元気になられたのね。
そうよ。レオンさまには、いつも笑っていてほしい。
ちょっとだけ意地悪で、少し強引で、なのに優しさに溢れたあのお方には。
太陽のような微笑みが、一番似合うのだから。
カトリアナさまの大胆さに驚かされて。
普段は大人しい方だけれど、いざという時に行動力があるのは、なんとなく感じてはいたものの。
レオンさまを捕まえて、叱咤激励するほどの度胸があるとは思わなくて。
「そのような資質こそ、王太子妃に望まれるものですわよね・・・」
そうぽつりと零したら、兄は、ふっと笑んで、私の頭をぽん、と撫でた。
「まぁ、エレなら王太子妃を立派に務められるだろうと分かりきってはいるが、カトリアナ嬢もその器であることは間違いないな」
と、なぜか楽しそうに言った。
レオンさま説教事件で、すっかりカトリアナさまのことを気に入ったのか。
最近やたらと、マスカルバーノ家のおふたりの名前が、兄の口から出てくるのだ。
兄ももうじき19になる。
筆頭公爵家の跡取りであること、また外務部第二秘書として華々しく活躍していることもあって、縁談は引きも切らず、それこそ洪水のように押し寄せてきて。
今のところ、それらすべてを、兄の方から断っているけれども。
公爵家の次期当主として、いつか配偶者を迎える日が来ることは確実で。
でも、出来れば。
アリエラさまみたいな方が、奥さまになってくれたらいいなぁ・・・なんて。
ごめんなさい、アリエラさま。
勝手に思っちゃってます。
「・・・む? なんだ?」
あら、じーっとお兄さまの顔を見つめていたら気づかれてしまったわ。
「いえ・・・。なんでもありませんわ」
「なんでもなくはないだろう? 言いたいことがあるなら言いなさい」
ふわりと優しい笑顔で、追及される。
「あの、ええと・・・」
どうしよう。勝手な願望だから、言われても困るよね。
「その・・・いつか、お兄さまも、奥方さまをお迎えになるのだな、と」
名前だけ、伏せておこう。
「もし、ですけれど、出来れば、わたくしも気兼ねなくお話が楽しめるような、明るくて優しい方がお義姉さまになってくださるといいな、と」
怒られちゃう、かな?
そっと兄の顔を盗み見る。
あら? お兄さま、どちらを向いてらっしゃるの?
「・・・お兄さま?」
「・・・なんだ」
「どうして、そちらを向いてらっしゃるのですか?」
「あー、うむ。・・・ちょっと壁に・・・汚れが、あってな。少々・・・気になって、確認しているのだ」
「? そうなんですか」
流石はお兄さま。チェックが厳しいのですね。
私には、綺麗に磨き上げられているようにしか見えませんが。
「あー、・・・エレ」
「はい。なんでしょう? お兄さま」
「私の妻となる女性に関してだが、ブライトン家の跡継ぎとして、私も全く考えていない訳ではない。先ほどのお前の意見も、ちゃんと考慮に入れているから、安心しなさい」
「はい。ありがとうございます」
「・・・ああ」
そうなの。もう考えてらっしゃるのね。
お兄さまの意中の方って、どんなご令嬢なのかしら。
・・・・それにしても。
お兄さまったら、よほど壁の汚れが気になっておられるのね。
ずっとあちらを向いたままだわ。
「エレアーナお嬢さま」
エントランスの方から、執事がやって来た。
「あら、ハインツ。どうしたの?」
「こちらを。レオンハルト王太子殿下からのお手紙が届きました」
ハインツが、すっと淡い水色の封筒を差しだした。
「・・・レオンさまから?」
なにかしら。
お手紙を頂くなんて、初めてだわ。
「わたくし、部屋に戻らせていただきますね。ああ、ハインツ。お兄さまが、壁の汚れを気にしてらっしゃるわ。確認して、後で綺麗にするようメイドに言っておいてね」
「かしこまりました」
「いや、ハインツ・・・」
アイスケルヒに壁の汚れについて確認するハインツの声を背中で聞きながら、封筒を手に部屋に戻る。
どんなことが書いてあるか、少し心配で。
カトリアナさまからの励ましで、元気になっていたらいい、と、思っているけれど。
恐る恐る封を切る。
初めて見るレオンさまの字は。
美しく整った、とても読みやすい字で。
文面には、私の知っている、レオンさまらしさが溢れていた。
親愛なるエレアーナ嬢
寒さが厳しくなってきたね。
その後、何事もなく過ごせているだろうか。
この間は、ほんの少しだったけど、君の顔が見られて嬉しかった。
せっかくお茶に誘ってくれたのに、一緒に過ごせなくてごめんね。
本当はもう少し君と一緒にいたかった。
時間も取ろうと思えば取れたんだ。
君も気付いていたかもしれないけれど、ずっと僕は罪悪感で一杯だった。
僕が、君のことを王太子妃にと望まなければ、君はこんな目に遭わなかったのに、と思っていてね。
会いたくて堪らないのに、会うとすぐに逃げ出したくなる、そんな態度は、君から見てもおかしく見えただろう。
でも、カトリアナ嬢に叱られたよ。
自分の想いを否定するな、と。
だから、まずは謝らせてほしい。
心配をかけてごめん、
そして、気づかない振りをしてくれて、ありがとう。
もう自分から後ろに下がることはしないから、覚悟していてね。
君の心が誰のものか、それがはっきりとわかる日まで、ケインと正々堂々張り合って、君を精一杯想い続けるから。
近いうちに、また様子を見に行くよ。
心からの感謝と愛を込めて
レオンハルト・リーベンフラウ
ふふ。
良かった。元気になられたのね。
そうよ。レオンさまには、いつも笑っていてほしい。
ちょっとだけ意地悪で、少し強引で、なのに優しさに溢れたあのお方には。
太陽のような微笑みが、一番似合うのだから。
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