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あなたを想う贈り物
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「これなどは、どうでしょうか? デザインも素敵ですし、きっとお好みだと思うのですけれど」
「ああ、そうだな」
エレアーナとケインバッハは、王都の中央にある大きな宝飾店に来ていた。
義姉アリエラへの贈りものを選ぶためだ。
結婚式を終え、今、二人は次期領主夫婦として、所領を巡っている。
勿論、新婚旅行を兼ねてのことだ。
ブライトン公爵領は王都からさほど離れておらず、往復にはあまり時間がかからない。
だが、広い領地をゆっくりと見て回れるよう、日程にはかなりのゆとりが取られていた。
旅行の間は天候にも恵まれた事もあり、恐らくは甘い新婚生活を心ゆくまで楽しめたであろう二人のために、何か記念の品を、とエレアーナが思いたったのだ。
「ああ、でも、お揃いでお兄さまも身につけられる品だといいですよね。せっかくのお祝いですもの」
「ふむ。だとすると義兄上にはカフスなどはどうだろう」
「そうですね。でしたらお義姉さまへの贈りものと石をお揃いにするか、デザインを統一して互いの色の石を嵌めるか・・・」
「互いの色の石にする方がいいと思う。俺ならば、そちらの方が断然嬉しいが」
「まあ、そうなんですのね。ではそのようにいたしましょう」
嬉しそうにショーケースの中を覗き込む。
「ああ、お伝えし忘れてましたけど、これはわたくしが購入して贈るのですからね? ケインさまはお財布を出したりしないでくださいね?」
その言葉に、ケインバッハは思わず目を細める。
「ケインさま?」
「・・・いや。相変わらず人を喜ばせるのが好きだな、と感心して」
「え?」
「初めて会ったときもそうだったろう? レオンの乳母のための見舞いの品を包んで、手渡していた」
目をぱちぱちと瞬かせ、それから思い出したのか、ああ、と頷いた。
「手作りの薔薇の匂い袋と蒸留水でしたか?」
「ああ」
懐かしそうに頷く。
「あの後、レオンと俺とでちゃんと渡しに行ったんだ。彼女の家まで訪ねて行って。・・・贈りもの、すごく喜んでいたな」
「そうですか、それは良かったです」
エレアーナはすごく嬉しそうに相槌を打った。
「その帰り道で、君を見かけた」
「え? どこででしょう」
きょとんとした顔で問い返す。
「ジュールベーヌ孤児院で。シルフィは・・・レオンの乳母は、トロスト区に住んでいるから」
「まあ、そうだったんですか」
「君は外で子どもたちに囲まれていて、文字か何かを教えているようだった。俺もレオンも、その光景を偶然見かけて、凄く・・・」
突然言葉が途切れ、不思議そうにエレアーナが言葉を繰り返す。
「凄く?」
「・・・凄く美しいものを、神聖なものを見たような気がして・・・」
「ええ? ケインさま、そんな大袈裟な」
目を丸くしながら返された言葉に、ケインバッハは大まじめに頷いた。
「本当だ。その後、俺もレオンも、王城に到着するまで黙りこくってしまってね。なんというか・・・衝撃だったんだ。自分の未熟さを思い知ったというか・・・」
ゆっくりと、慎重に確かめるように言葉を紡いでいく。
「将来、施政の一端を担う者として、まだまだ学ぶべき点があるというのを、今更ながら思い知って。それに努力の価値というものを改めて知ったんだ。俺も・・・レオンも」
「ケインさま・・・」
「俺はまだまだ未熟だ。知らねばならないことが依然として山ほどある。だが、努力した先の未来が、そのとき見えたから。だからそれ以来、それこそ寝る間も惜しんで動き回ったよ」
ショーケースに落としていた視線が、すっとエレアーナに向けられる。
「まだ成長の途上ではあるが・・・今の俺があるのは君という目標が出来たからだ。それは恐らく・・・レオンも」
「・・・」
「こうして、俺は運よく君の伴侶となる未来を手にすることが出来た。それは、もしかしたらレオンのものだったかもしれないのに」
その言葉に、エレアーナの瞳が揺れる。
「だが俺は、これをただの幸運で終わらせはしない。絶対に必然に変えてみせる」
そっとケインの手が、エレアーナの頬に触れる。
「君をその腕に抱く者は、天が轟こうとも、地が割れようとも、俺以外にはいなかったのだ、と、この国に住む誰もが認めざるを得ないように・・・そんな男に俺はなるから」
「ケインさま・・・」
少し照れくさそうに笑って。
ショーケースをこつんと人差し指で叩いた。
「・・・それで、その決意表明として、俺から君に贈りものをしたいのだが」
「え?」
「指輪でも、首飾りでも、耳飾りでも、腕輪でも、何でも構わない。君の選ぶものならば。ただ、いつも身に着けていてくれると嬉しい。・・・駄目だろうか?」
幸運ではなく必然。
私たちの出会いは、そのようなものであったと認めてもらえるように。
貴方はどこまでも真っ直ぐな方で。
非難にも、中傷にも、陰口にも、噂にも、決して怯むことはない。
きっと気付いておられるのだ。
王太子殿下の婚約者候補だったくせにケインさまと、と、わたくしが一部の貴族から陰で囁かれていることを。
誰がなんと言おうと、貴方の愛を疑うことなど、一生ないと誓えるけれど。
貴方の愛を何時如何なるときも信じていると、それで伝わるのならば。
「・・・ありがとうございます。とても嬉しいですわ。いつも肌身離さず身につけることをお約束します」
ケインは微かに口の端を上げた。
「ありがとう、こちらこそ嬉しいよ」
誰からも、何も言われない生き方なんて出来る人はいない。
ましてや、私たちが生きているのは貴族の世界だ。
それでも。
自分には何一つ恥じるところが無いと、胸を張っていられるように。
そんな貴方だから好きになったのですもの。
ケインバッハは真剣な眼差しでショーケースを覗き込み、エレアーナに告げた。
「では、早速、選ぶとしよう。まず明日帰ってくる義兄姉上たちへの贈りものを。それから君への贈りものだ」
「ああ、そうだな」
エレアーナとケインバッハは、王都の中央にある大きな宝飾店に来ていた。
義姉アリエラへの贈りものを選ぶためだ。
結婚式を終え、今、二人は次期領主夫婦として、所領を巡っている。
勿論、新婚旅行を兼ねてのことだ。
ブライトン公爵領は王都からさほど離れておらず、往復にはあまり時間がかからない。
だが、広い領地をゆっくりと見て回れるよう、日程にはかなりのゆとりが取られていた。
旅行の間は天候にも恵まれた事もあり、恐らくは甘い新婚生活を心ゆくまで楽しめたであろう二人のために、何か記念の品を、とエレアーナが思いたったのだ。
「ああ、でも、お揃いでお兄さまも身につけられる品だといいですよね。せっかくのお祝いですもの」
「ふむ。だとすると義兄上にはカフスなどはどうだろう」
「そうですね。でしたらお義姉さまへの贈りものと石をお揃いにするか、デザインを統一して互いの色の石を嵌めるか・・・」
「互いの色の石にする方がいいと思う。俺ならば、そちらの方が断然嬉しいが」
「まあ、そうなんですのね。ではそのようにいたしましょう」
嬉しそうにショーケースの中を覗き込む。
「ああ、お伝えし忘れてましたけど、これはわたくしが購入して贈るのですからね? ケインさまはお財布を出したりしないでくださいね?」
その言葉に、ケインバッハは思わず目を細める。
「ケインさま?」
「・・・いや。相変わらず人を喜ばせるのが好きだな、と感心して」
「え?」
「初めて会ったときもそうだったろう? レオンの乳母のための見舞いの品を包んで、手渡していた」
目をぱちぱちと瞬かせ、それから思い出したのか、ああ、と頷いた。
「手作りの薔薇の匂い袋と蒸留水でしたか?」
「ああ」
懐かしそうに頷く。
「あの後、レオンと俺とでちゃんと渡しに行ったんだ。彼女の家まで訪ねて行って。・・・贈りもの、すごく喜んでいたな」
「そうですか、それは良かったです」
エレアーナはすごく嬉しそうに相槌を打った。
「その帰り道で、君を見かけた」
「え? どこででしょう」
きょとんとした顔で問い返す。
「ジュールベーヌ孤児院で。シルフィは・・・レオンの乳母は、トロスト区に住んでいるから」
「まあ、そうだったんですか」
「君は外で子どもたちに囲まれていて、文字か何かを教えているようだった。俺もレオンも、その光景を偶然見かけて、凄く・・・」
突然言葉が途切れ、不思議そうにエレアーナが言葉を繰り返す。
「凄く?」
「・・・凄く美しいものを、神聖なものを見たような気がして・・・」
「ええ? ケインさま、そんな大袈裟な」
目を丸くしながら返された言葉に、ケインバッハは大まじめに頷いた。
「本当だ。その後、俺もレオンも、王城に到着するまで黙りこくってしまってね。なんというか・・・衝撃だったんだ。自分の未熟さを思い知ったというか・・・」
ゆっくりと、慎重に確かめるように言葉を紡いでいく。
「将来、施政の一端を担う者として、まだまだ学ぶべき点があるというのを、今更ながら思い知って。それに努力の価値というものを改めて知ったんだ。俺も・・・レオンも」
「ケインさま・・・」
「俺はまだまだ未熟だ。知らねばならないことが依然として山ほどある。だが、努力した先の未来が、そのとき見えたから。だからそれ以来、それこそ寝る間も惜しんで動き回ったよ」
ショーケースに落としていた視線が、すっとエレアーナに向けられる。
「まだ成長の途上ではあるが・・・今の俺があるのは君という目標が出来たからだ。それは恐らく・・・レオンも」
「・・・」
「こうして、俺は運よく君の伴侶となる未来を手にすることが出来た。それは、もしかしたらレオンのものだったかもしれないのに」
その言葉に、エレアーナの瞳が揺れる。
「だが俺は、これをただの幸運で終わらせはしない。絶対に必然に変えてみせる」
そっとケインの手が、エレアーナの頬に触れる。
「君をその腕に抱く者は、天が轟こうとも、地が割れようとも、俺以外にはいなかったのだ、と、この国に住む誰もが認めざるを得ないように・・・そんな男に俺はなるから」
「ケインさま・・・」
少し照れくさそうに笑って。
ショーケースをこつんと人差し指で叩いた。
「・・・それで、その決意表明として、俺から君に贈りものをしたいのだが」
「え?」
「指輪でも、首飾りでも、耳飾りでも、腕輪でも、何でも構わない。君の選ぶものならば。ただ、いつも身に着けていてくれると嬉しい。・・・駄目だろうか?」
幸運ではなく必然。
私たちの出会いは、そのようなものであったと認めてもらえるように。
貴方はどこまでも真っ直ぐな方で。
非難にも、中傷にも、陰口にも、噂にも、決して怯むことはない。
きっと気付いておられるのだ。
王太子殿下の婚約者候補だったくせにケインさまと、と、わたくしが一部の貴族から陰で囁かれていることを。
誰がなんと言おうと、貴方の愛を疑うことなど、一生ないと誓えるけれど。
貴方の愛を何時如何なるときも信じていると、それで伝わるのならば。
「・・・ありがとうございます。とても嬉しいですわ。いつも肌身離さず身につけることをお約束します」
ケインは微かに口の端を上げた。
「ありがとう、こちらこそ嬉しいよ」
誰からも、何も言われない生き方なんて出来る人はいない。
ましてや、私たちが生きているのは貴族の世界だ。
それでも。
自分には何一つ恥じるところが無いと、胸を張っていられるように。
そんな貴方だから好きになったのですもの。
ケインバッハは真剣な眼差しでショーケースを覗き込み、エレアーナに告げた。
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