125 / 256
嬉しい知らせ
しおりを挟む
「マイセンなら、わたくしも憶えていますわ。あの時考えたプログラムが、ちゃんと実を結んでいるのですね。わたくしもマイセンの騎士服姿、見てみたかったですわ」
「騎士になったのなら、この先いくらでも会う機会はあるんじゃないかな。もしかしたら、そのうち腕を上げて騎士団長になったりしてね」
今日は、王城にある中庭で、アリエラやエレアーナ、シュリエラも招ばれて、カトリアナとお茶を楽しんでいる。
勿論、レオンハルトやケインバッハだけでなく、アイスケルヒも後から合流して。
悪阻も収まり、お腹の膨らみも少し目立ち始めたアリエラは、ようやく回復した食欲のお陰で、一時期げっそりと痩せた頬も元に戻り、だいぶ健康的になっていた。
アイスケルヒが、甲斐甲斐しく焼き菓子などをアリエラの手元に持ってくるのを温かい目で皆が見守っていた。
「はあ・・・。あと半年もしないうちに、お姉さまとお義兄さまの赤ちゃんがお生まれになるのですね」
「ええ、わたくしも待ちきれませんのよ。お兄さま、是非、わたくしにも抱っこさせて下さいね?」
「勿論だとも」
この話題になると、アイスケルヒの頬は緩みっぱなしだ。
このテーブルに着いている者たちは誰も、アイスケルヒが『氷の貴公子』などと呼ばれていたことを思い出しもしないだろう。
「カトリアナさまは、一年半後には結婚式ですわね」
「そうですわね。でもまだまだ学ばなければいけない事が沢山あって、間に合わないのではないかと心配なんですのよ」
困ったように微笑む姿は、王太子妃の座が約束された今となっても相変わらず謙虚なままだ。
「カトリアナはよくやってるよ。とても優秀だと教師たちも褒めていたもの」
「結婚式までにちゃんと終わらせようと必死で勉強しているだけですわ」
「ふふ、そうなんだ。報告では、この一年10か月で殆ど学び終えたって聞いてるよ? 何事にも真摯に取り組むのは君の長所だけど、少しは肩の力を抜かないとプレッシャーで押しつぶされちゃうから、僕、心配だなぁ」
そう言って、そっとカトリアナの手を両手で包む。
そして、じっと熱い眼差しで見つめたりするものだから、妄想には強いけど現実に弱いカトリアナは、まるで茹で上がったように瞬時に真っ赤に染まってしまう。
「し、し、心配頂かずとも・・・あの・・・そ、そうですわ! ええと、結婚式といえば、わたくしたちよりも、ケインバッハさまとエレアーナさまの方が先でしたよね! あと半年、そう、あと半年ですもの。準備は滞りなく進んでらっしゃるのかしら?」
慌てて別の話題を提示してレオンからの熱い視線から目を逸らすと、レオン自身は不満そうにしていたけれど、そこは空気を読まないケインバッハがさらりとその話題に乗って返答した。
「準備は万端だ。実を言えば、一週間後と言われても対応できるくらいには全て整っている」
「うわっ、なにそれ。流石、宰相の懐刀。そういう采配には強いよねぇ。いっそ予定を早めちゃえばいいのに・・・って、そう簡単にいかないから面倒なんだよね、貴族社会って」
「同感だ。俺としては、陛下がお言葉を下さって日程が変更される事を祈っているのだが」
「あはは、その手が通じるんだったら、とっくに僕もやってるさ」
そこで、レオンの背後に立っていたライナスバージが、殿下、と声をかける。
「来ました」
「ん? ああ、そうか、そうだったね。こちらに通してくれ」
皆が不思議そうに見守る中、ライナスバージが振り向いて合図すると、微かな足音と共に紺色の髪の騎士が現れた。
シュリエラが一瞬、目を瞠る。
「レオンハルト王太子殿下。アッテンボロー・ガルマルク、参りました」
「ああ、ご苦労」
頭を下げるアッテンボローに声をかけると、レオンはその場にいた全員に視線を投げかけた。
「丁度、皆が集まってるからね、紹介しておこうと思って」
それから、レオンはカトリアナに顔を向けた。
「君の専属護衛を務めるアッテンボローだ。本当は君が王城で暮らすようになってから、という予定だったけど、まだ煩く騒ぐ令嬢たちもいるようだし、今日から君に付いて貰うことにしたからね」
「まぁ、そうなんですの」
「精一杯勤めますので、どうぞよろしくお願いいたします」
カトリアナに深々と礼をするアッテンボローを、シュリエラはじっと眺めていた。
夜会で一度、私にダンスを申し込んだ人。
そして、その後再び申し込んでくることはなかった人。
気がつけば、互いに遠くから視線が合うことは何度も、それこそ何度もあったけれど。
ただ、それだけの人。
「騎士になったのなら、この先いくらでも会う機会はあるんじゃないかな。もしかしたら、そのうち腕を上げて騎士団長になったりしてね」
今日は、王城にある中庭で、アリエラやエレアーナ、シュリエラも招ばれて、カトリアナとお茶を楽しんでいる。
勿論、レオンハルトやケインバッハだけでなく、アイスケルヒも後から合流して。
悪阻も収まり、お腹の膨らみも少し目立ち始めたアリエラは、ようやく回復した食欲のお陰で、一時期げっそりと痩せた頬も元に戻り、だいぶ健康的になっていた。
アイスケルヒが、甲斐甲斐しく焼き菓子などをアリエラの手元に持ってくるのを温かい目で皆が見守っていた。
「はあ・・・。あと半年もしないうちに、お姉さまとお義兄さまの赤ちゃんがお生まれになるのですね」
「ええ、わたくしも待ちきれませんのよ。お兄さま、是非、わたくしにも抱っこさせて下さいね?」
「勿論だとも」
この話題になると、アイスケルヒの頬は緩みっぱなしだ。
このテーブルに着いている者たちは誰も、アイスケルヒが『氷の貴公子』などと呼ばれていたことを思い出しもしないだろう。
「カトリアナさまは、一年半後には結婚式ですわね」
「そうですわね。でもまだまだ学ばなければいけない事が沢山あって、間に合わないのではないかと心配なんですのよ」
困ったように微笑む姿は、王太子妃の座が約束された今となっても相変わらず謙虚なままだ。
「カトリアナはよくやってるよ。とても優秀だと教師たちも褒めていたもの」
「結婚式までにちゃんと終わらせようと必死で勉強しているだけですわ」
「ふふ、そうなんだ。報告では、この一年10か月で殆ど学び終えたって聞いてるよ? 何事にも真摯に取り組むのは君の長所だけど、少しは肩の力を抜かないとプレッシャーで押しつぶされちゃうから、僕、心配だなぁ」
そう言って、そっとカトリアナの手を両手で包む。
そして、じっと熱い眼差しで見つめたりするものだから、妄想には強いけど現実に弱いカトリアナは、まるで茹で上がったように瞬時に真っ赤に染まってしまう。
「し、し、心配頂かずとも・・・あの・・・そ、そうですわ! ええと、結婚式といえば、わたくしたちよりも、ケインバッハさまとエレアーナさまの方が先でしたよね! あと半年、そう、あと半年ですもの。準備は滞りなく進んでらっしゃるのかしら?」
慌てて別の話題を提示してレオンからの熱い視線から目を逸らすと、レオン自身は不満そうにしていたけれど、そこは空気を読まないケインバッハがさらりとその話題に乗って返答した。
「準備は万端だ。実を言えば、一週間後と言われても対応できるくらいには全て整っている」
「うわっ、なにそれ。流石、宰相の懐刀。そういう采配には強いよねぇ。いっそ予定を早めちゃえばいいのに・・・って、そう簡単にいかないから面倒なんだよね、貴族社会って」
「同感だ。俺としては、陛下がお言葉を下さって日程が変更される事を祈っているのだが」
「あはは、その手が通じるんだったら、とっくに僕もやってるさ」
そこで、レオンの背後に立っていたライナスバージが、殿下、と声をかける。
「来ました」
「ん? ああ、そうか、そうだったね。こちらに通してくれ」
皆が不思議そうに見守る中、ライナスバージが振り向いて合図すると、微かな足音と共に紺色の髪の騎士が現れた。
シュリエラが一瞬、目を瞠る。
「レオンハルト王太子殿下。アッテンボロー・ガルマルク、参りました」
「ああ、ご苦労」
頭を下げるアッテンボローに声をかけると、レオンはその場にいた全員に視線を投げかけた。
「丁度、皆が集まってるからね、紹介しておこうと思って」
それから、レオンはカトリアナに顔を向けた。
「君の専属護衛を務めるアッテンボローだ。本当は君が王城で暮らすようになってから、という予定だったけど、まだ煩く騒ぐ令嬢たちもいるようだし、今日から君に付いて貰うことにしたからね」
「まぁ、そうなんですの」
「精一杯勤めますので、どうぞよろしくお願いいたします」
カトリアナに深々と礼をするアッテンボローを、シュリエラはじっと眺めていた。
夜会で一度、私にダンスを申し込んだ人。
そして、その後再び申し込んでくることはなかった人。
気がつけば、互いに遠くから視線が合うことは何度も、それこそ何度もあったけれど。
ただ、それだけの人。
22
あなたにおすすめの小説
君への気持ちが冷めたと夫から言われたので家出をしたら、知らぬ間に懸賞金が掛けられていました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
【え? これってまさか私のこと?】
ソフィア・ヴァイロンは貧しい子爵家の令嬢だった。町の小さな雑貨店で働き、常連の男性客に密かに恋心を抱いていたある日のこと。父親から借金返済の為に結婚話を持ち掛けられる。断ることが出来ず、諦めて見合いをしようとした矢先、別の相手から結婚を申し込まれた。その相手こそ彼女が密かに思いを寄せていた青年だった。そこでソフィアは喜んで受け入れたのだが、望んでいたような結婚生活では無かった。そんなある日、「君への気持ちが冷めたと」と夫から告げられる。ショックを受けたソフィアは家出をして行方をくらませたのだが、夫から懸賞金を掛けられていたことを知る――
※他サイトでも投稿中
報われなかった姫君に、弔いの白い薔薇の花束を
さくたろう
恋愛
その国の王妃を決める舞踏会に招かれたロザリー・ベルトレードは、自分が当時の王子、そうして現王アルフォンスの婚約者であり、不遇の死を遂げた姫オフィーリアであったという前世を思い出す。
少しずつ蘇るオフィーリアの記憶に翻弄されながらも、17年前から今世まで続く因縁に、ロザリーは絡め取られていく。一方でアルフォンスもロザリーの存在から目が離せなくなり、やがて二人は再び惹かれ合うようになるが――。
20話です。小説家になろう様でも公開中です。
寵愛のいる旦那様との結婚生活が終わる。もし、次があるのなら緩やかに、優しい人と恋がしたい。
にのまえ
恋愛
リルガルド国。公爵令嬢リイーヤ・ロイアルは令嬢ながら、剣に明け暮れていた。
父に頼まれて参加をした王女のデビュタントの舞踏会で、伯爵家コール・デトロイトと知り合い恋に落ちる。
恋に浮かれて、剣を捨た。
コールと結婚をして初夜を迎えた。
リイーヤはナイトドレスを身に付け、鼓動を高鳴らせて旦那様を待っていた。しかし寝室に訪れた旦那から出た言葉は「私は君を抱くことはない」「私には心から愛する人がいる」だった。
ショックを受けて、旦那には愛してもられないと知る。しかし離縁したくてもリルガルド国では離縁は許されない。しかしリイーヤは二年待ち子供がいなければ離縁できると知る。
結婚二周年の食事の席で、旦那は義理両親にリイーヤに子供ができたと言い出した。それに反論して自分は生娘だと医師の診断書を見せる。
混乱した食堂を後にして、リイーヤは馬に乗り伯爵家から出て行き国境を越え違う国へと向かう。
もし、次があるのなら優しい人と恋がしたいと……
お読みいただき、ありがとうございます。
エブリスタで四月に『完結』した話に差し替えいたいと思っております。内容はさほど、変わっておりません。
それにあたり、栞を挟んでいただいている方、すみません。
【完結】妖精姫と忘れられた恋~好きな人が結婚するみたいなので解放してあげようと思います~
塩羽間つづり
恋愛
お気に入り登録やエールいつもありがとうございます!
2.23完結しました!
ファルメリア王国の姫、メルティア・P・ファルメリアは、幼いころから恋をしていた。
相手は幼馴染ジーク・フォン・ランスト。
ローズの称号を賜る名門一族の次男だった。
幼いころの約束を信じ、いつかジークと結ばれると思っていたメルティアだが、ジークが結婚すると知り、メルティアの生活は一変する。
好きになってもらえるように慣れないお化粧をしたり、着飾ったりしてみたけれど反応はいまいち。
そしてだんだんと、メルティアは恋の邪魔をしているのは自分なのではないかと思いあたる。
それに気づいてから、メルティアはジークの幸せのためにジーク離れをはじめるのだが、思っていたようにはいかなくて……?
妖精が見えるお姫様と近衛騎士のすれ違う恋のお話
切なめ恋愛ファンタジー
【完結】地味な私と公爵様
ベル
恋愛
ラエル公爵。この学園でこの名を知らない人はいないでしょう。
端正な顔立ちに甘く低い声、時折見せる少年のような笑顔。誰もがその美しさに魅了され、女性なら誰もがラエル様との結婚を夢見てしまう。
そんな方が、平凡...いや、かなり地味で目立たない伯爵令嬢である私の婚約者だなんて一体誰が信じるでしょうか。
...正直私も信じていません。
ラエル様が、私を溺愛しているなんて。
きっと、きっと、夢に違いありません。
お読みいただきありがとうございます。短編のつもりで書き始めましたが、意外と話が増えて長編に変更し、無事完結しました(*´-`)
片想い婚〜今日、姉の婚約者と結婚します〜
橘しづき
恋愛
姉には幼い頃から婚約者がいた。両家が決めた相手だった。お互いの家の繁栄のための結婚だという。
私はその彼に、幼い頃からずっと恋心を抱いていた。叶わぬ恋に辟易し、秘めた想いは誰に言わず、二人の結婚式にのぞんだ。
だが当日、姉は結婚式に来なかった。 パニックに陥る両親たち、悲しげな愛しい人。そこで自分の口から声が出た。
「私が……蒼一さんと結婚します」
姉の身代わりに結婚した咲良。好きな人と夫婦になれるも、心も体も通じ合えない片想い。
結婚する事に決めたから
KONAN
恋愛
私は既婚者です。
新たな職場で出会った彼女と結婚する為に、私がその時どう考え、どう行動したのかを書き記していきます。
まずは、離婚してから行動を起こします。
主な登場人物
東條なお
似ている芸能人
○原隼人さん
32歳既婚。
中学、高校はテニス部
電気工事の資格と実務経験あり。
車、バイク、船の免許を持っている。
現在、新聞販売店所長代理。
趣味はイカ釣り。
竹田みさき
似ている芸能人
○野芽衣さん
32歳未婚、シングルマザー
医療事務
息子1人
親分(大島)
似ている芸能人
○田新太さん
70代
施設の送迎運転手
板金屋(大倉)
似ている芸能人
○藤大樹さん
23歳
介護助手
理学療法士になる為、勉強中
よっしー課長(吉本)
似ている芸能人
○倉涼子さん
施設医療事務課長
登山が趣味
o谷事務長
○重豊さん
施設医療事務事務長
腰痛持ち
池さん
似ている芸能人
○田あき子さん
居宅部門管理者
看護師
下山さん(ともさん)
似ている芸能人
○地真央さん
医療事務
息子と娘はテニス選手
t助
似ている芸能人
○ツオくん(アニメ)
施設医療事務事務長
o谷事務長異動後の事務長
雄一郎 ゆういちろう
似ている芸能人
○鹿央士さん
弟の同級生
中学テニス部
高校陸上部
大学帰宅部
髪の赤い看護師(川木えみ)
似ている芸能人
○田來未さん
准看護師
ヤンキー
怖い
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる