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その夜の出来事 王国執務室にて
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「・・・良かろう。ハトに関する全権限を一時的にお前たちに渡す。しっかりと調査するが良い」
「ありがとうございます」
諜報任務に関する報告は、いつものように国王の執務室にて行われた。
シャールベルムの傍らに控えるのは、当然、ダイスヒル宰相とミハイルシュッツ王弟殿下の二人だ。
「国内外で大勢の人が行き来するこの時期なら、動きやすいと思ったのでしょうね」
「ああ、特に王国の人間でない者は、余程の重要人物でない限り、顔を知られていない。今回のケインバッハの婚姻に始まって来年のレオンハルトの結婚式に至るまで、更にこの浮かれた雰囲気は盛り上がっていくだろうしな」
「王太子殿下のご結婚となると、貴族は勿論、平民にとっても大きな祝い事になりますからねぇ。人に紛れて動きまわるには、まさに打ってつけってところなんでしょうな」
シュタインゼンたちの言葉に、シャールベルムも深く頷く。
「ベイベル国から、だったか。よくぞその者たちの動きに気づいたな。流石は我らの自慢の臣下たちだ」
「勿体ないお言葉にございます。ですが一つ、訂正がございます。その者たちの動きを怪しんだのは、確かにこちらにいるリュークザインですが、どこの国の者かが判明したのはラエラ嬢の働きでございます」
「ほう」
さらりとリュークザインの婚約者の価値を国王に売り込むベルフェルトに、その場にいる皆の視線が集まる。
王はリュークザインに視線を向け、微笑んだ。
「先日お前と婚約したばかりの、あの令嬢か」
「は」
「そういえば、国名までわかってるんだっけね。確か、ベイベルと言ってたな」
考えるように顎に手を当てて話を聞いていたシュタインゼンが、口を挟む。
「ベイベルは北方の小国で知名度も低い。しかも今回の式には、各国から客人が多く来ている。ふむ、確かに不思議だね。その男たちを見ただけで、どうしてベイベル出身だと分かったんだい? まさか衣装とか?」
「・・・言葉です」
「言葉?」
「はい」
リュークの答えに興味をひかれ、沈黙で先を促される。
「ベイベルの公用語はベイベランですが、その国には、小国ながら幾つかの地域言語が存在します。その一つがバリューガ語です」
「・・・まさか、その男たちがバリューガ語を話してた、とでも言うのか?」
「そのまさかでございます。王弟殿下」
「・・・」
国王を始め、報告を聞いていた三人の顔に驚愕の色が浮かんだ。
「・・・お前の婚約者は、バリューガ語が理解できるのかね?」
「彼女は七か国語を流ちょうに操りますが、残念ながらバリューガ語はその中には入っていません。ですが聞き取ることは出来るそうです」
「ほう?」
「要するに、流ちょうに話せるとまではいかないが、聞くだけなら問題ない、と、そういうことか」
「その通りです。まだ勉強中だそうで」
「七か国語か。・・・それにまだ勉強中の言語もある、と」
「流石は、ハーメルンの娘。たいした才能だ。それに努力も惜しまない性格のようだな」
「お褒めいただき恐縮です」
「ところでさ、リュークザイン。なぜさっきから顔が赤いんだい?」
シュタインゼンの問いに、リュークがぴしりと固まる。
「・・・赤い、ですか? 私が?」
「うん、とっても」
「・・・気のせいかと」
獲物を見つけた目をして楽しそうに揶揄い始めたシュタインゼンを、国王は視線だけで注意する。
シュタインゼンは軽く肩を竦め、話題を変えた。
「それで? ラエラ嬢が聞き取れた範囲で構わないから教えてくれるかい? ベイベルからの客はなんて言ってたのかな」
「少々距離があったことと、かなり声を潜めていたこともあり、得られた情報は多くないのですが。・・・シャガーン宮、そして南区サンテロという言葉が聞こえたそうです」
「シャガーン宮、そう言ったのか。成程、確かに怪しいねぇ。・・・で、その者たちが接触したのがシャウヘッセ伯爵だったと」
「はい。私たちが近くにいた時の会話はどれも当たり障りのないものでしたが、終始張り付いているわけにもいかず、どこかで情報のやり取りをしたのかもしれませんが、それは確認できませんでした」
「まあ、それは仕方ないね。・・・だが、探るのも難航しそうだな」
「至急、バリューガ語が分かる者を集めて対策を練る予定でおります。ハトは国外にも探索に向かうことがありますので、その言語が理解できる者も数人は確保できるかと」
「そうかい。頼んだよ」
それから、シュタインゼンたちは国王の方へ向き直った。
「恐らく向こうは、王太子殿下の結婚式までを期限として考えているでしょう。つまりはあと一年もない、ということになりますな」
「ああ。だが私たちは、ラファイエラスさまが守って下さったこの国の秩序を何としても守らねばならん。・・・お前たちの協力が必要だ。頼むぞ」
国王の言葉に、その場にいた者たちすべてが頭を垂れた。
「ありがとうございます」
諜報任務に関する報告は、いつものように国王の執務室にて行われた。
シャールベルムの傍らに控えるのは、当然、ダイスヒル宰相とミハイルシュッツ王弟殿下の二人だ。
「国内外で大勢の人が行き来するこの時期なら、動きやすいと思ったのでしょうね」
「ああ、特に王国の人間でない者は、余程の重要人物でない限り、顔を知られていない。今回のケインバッハの婚姻に始まって来年のレオンハルトの結婚式に至るまで、更にこの浮かれた雰囲気は盛り上がっていくだろうしな」
「王太子殿下のご結婚となると、貴族は勿論、平民にとっても大きな祝い事になりますからねぇ。人に紛れて動きまわるには、まさに打ってつけってところなんでしょうな」
シュタインゼンたちの言葉に、シャールベルムも深く頷く。
「ベイベル国から、だったか。よくぞその者たちの動きに気づいたな。流石は我らの自慢の臣下たちだ」
「勿体ないお言葉にございます。ですが一つ、訂正がございます。その者たちの動きを怪しんだのは、確かにこちらにいるリュークザインですが、どこの国の者かが判明したのはラエラ嬢の働きでございます」
「ほう」
さらりとリュークザインの婚約者の価値を国王に売り込むベルフェルトに、その場にいる皆の視線が集まる。
王はリュークザインに視線を向け、微笑んだ。
「先日お前と婚約したばかりの、あの令嬢か」
「は」
「そういえば、国名までわかってるんだっけね。確か、ベイベルと言ってたな」
考えるように顎に手を当てて話を聞いていたシュタインゼンが、口を挟む。
「ベイベルは北方の小国で知名度も低い。しかも今回の式には、各国から客人が多く来ている。ふむ、確かに不思議だね。その男たちを見ただけで、どうしてベイベル出身だと分かったんだい? まさか衣装とか?」
「・・・言葉です」
「言葉?」
「はい」
リュークの答えに興味をひかれ、沈黙で先を促される。
「ベイベルの公用語はベイベランですが、その国には、小国ながら幾つかの地域言語が存在します。その一つがバリューガ語です」
「・・・まさか、その男たちがバリューガ語を話してた、とでも言うのか?」
「そのまさかでございます。王弟殿下」
「・・・」
国王を始め、報告を聞いていた三人の顔に驚愕の色が浮かんだ。
「・・・お前の婚約者は、バリューガ語が理解できるのかね?」
「彼女は七か国語を流ちょうに操りますが、残念ながらバリューガ語はその中には入っていません。ですが聞き取ることは出来るそうです」
「ほう?」
「要するに、流ちょうに話せるとまではいかないが、聞くだけなら問題ない、と、そういうことか」
「その通りです。まだ勉強中だそうで」
「七か国語か。・・・それにまだ勉強中の言語もある、と」
「流石は、ハーメルンの娘。たいした才能だ。それに努力も惜しまない性格のようだな」
「お褒めいただき恐縮です」
「ところでさ、リュークザイン。なぜさっきから顔が赤いんだい?」
シュタインゼンの問いに、リュークがぴしりと固まる。
「・・・赤い、ですか? 私が?」
「うん、とっても」
「・・・気のせいかと」
獲物を見つけた目をして楽しそうに揶揄い始めたシュタインゼンを、国王は視線だけで注意する。
シュタインゼンは軽く肩を竦め、話題を変えた。
「それで? ラエラ嬢が聞き取れた範囲で構わないから教えてくれるかい? ベイベルからの客はなんて言ってたのかな」
「少々距離があったことと、かなり声を潜めていたこともあり、得られた情報は多くないのですが。・・・シャガーン宮、そして南区サンテロという言葉が聞こえたそうです」
「シャガーン宮、そう言ったのか。成程、確かに怪しいねぇ。・・・で、その者たちが接触したのがシャウヘッセ伯爵だったと」
「はい。私たちが近くにいた時の会話はどれも当たり障りのないものでしたが、終始張り付いているわけにもいかず、どこかで情報のやり取りをしたのかもしれませんが、それは確認できませんでした」
「まあ、それは仕方ないね。・・・だが、探るのも難航しそうだな」
「至急、バリューガ語が分かる者を集めて対策を練る予定でおります。ハトは国外にも探索に向かうことがありますので、その言語が理解できる者も数人は確保できるかと」
「そうかい。頼んだよ」
それから、シュタインゼンたちは国王の方へ向き直った。
「恐らく向こうは、王太子殿下の結婚式までを期限として考えているでしょう。つまりはあと一年もない、ということになりますな」
「ああ。だが私たちは、ラファイエラスさまが守って下さったこの国の秩序を何としても守らねばならん。・・・お前たちの協力が必要だ。頼むぞ」
国王の言葉に、その場にいた者たちすべてが頭を垂れた。
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