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心に留めておくべきこと
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「・・・情報に感謝する」
アナベラが話を終えた後、リュークザインは簡潔に感謝を述べた。
それに軽い会釈で返した後、アナベラは少し首を傾げて考える素振りを見せた。
「アナベラ嬢?」
「・・・お二人は、数日後には結婚式をお迎えになるのですね」
その目は柔らかく細められているが、宿す光は少しばかり悲しげで。
「ラエラさま。ただの自己満足の行為にございます。どうかお許しくださいませ」
「え?」
ラエラは思わず問い返すが、それには何も答えない。
代わりにアナベラは前に一歩、すっと進み出た。
そしてドレスの裾を取り、リュークザインに向かって美しく膝を折る。
「どうか、本当に手が届かなくなってしまう前に一言だけ、本心を伝えさせて下さいませ」
リュークザインは目を瞠った。
意図を汲んだラエラは一歩下がると、場を二人に譲る。
アナベラは膝を折ったまま、視線だけを上げてリュークを見る。
「リュークザインさま。わたくし、アナベラ・スカッチは、ずっと・・・ずっと、貴方さまをお慕い申し上げておりました」
「アナベラ嬢・・・」
「今なら、ラエラさまがどれだけ立派なお方か分かりますわ。・・・どうか、お二人で幸せなご家庭をお築きくださいませ」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
「・・・ありがとう」
リュークは、静かに一言、そう告げた。
それから、話し合いの場となった部屋を後にしようとしたアナベラだったが、彼女が扉に手をかけたところでリュークザインが呼び止めた。
「アナベラ嬢。貴女に一つ、心に留めていただきたい事がある」
アナベラは把手にかけた手を止め、リュークザインをじっと見た。
「・・・何でございましょう?」
そう静かに問い返すと、普段は滅多に笑みを見せないリュークザインが、柔らかく微笑んだ。
「陛下のご判断を信じていただきたい。・・・あの方は、忠と不忠とを一つに括るようなことはなさらない」
その言葉に、アナベラは目を瞠った。
「貴女の義と忠を尊ぶ心を、陛下がお忘れになることはないだろう」
「・・・ありがとうございます」
滅門の恐れさえある内容を告げていると、アナベラ自身も分かってここに来た。
リュークザインの言葉は気休めとしか受け取られないかもしれない。
実際、アナベラは気休めとして受け取ったのだが、それでもその言葉は彼女にとって嬉しいもので。
だがここで気を抜いて泣いてはいけない、そう彼女が思っていた時。
リュークは更に言葉を継いだ。
「そんな義のある女性である貴女に、心を寄せてもらった事を誇りに思う」
「・・・」
それは、せっかく我慢していた涙が、どうにかして抑えていた涙が、アナベラの瞳から零れ落ちた瞬間だった。
「・・・本当に困ったお方ですのね。妻となる女性の前で、他のご令嬢を泣かせてどうするんですか」
責めるような台詞だが、ラエラの口元は柔らかく微笑んで。
心なしか嬉しそうで。
それを見て、リュークザインは困ったように眉を下げた。
何と答えるべきか分からず、そっとラエラの手を握りしめ、互いの視線が交差した時。
・・・その時、そこに場違いに呑気な声が響いた。
「あー、そろそろ邪魔してもいいかな?」
声をかけてから、しかも既に開け放ってある扉をノックしたのは、隣室に控えていたベルフェルトだ。
彼の後ろから、ぞろぞろと周囲を固めていた諜報員たちが集まって来ていた。
「いい雰囲気のところを邪魔して申し訳ないが、取りあえず、急ぎ報告をまとめて陛下にご報告しないとまずいだろう? 賢者くずれの奪還だけでなく未来の王太子妃暗殺計画までも証言が取れたのだからな」
リュークザインは重ねた手を無言で外すと重々しく頷いた。
「ああ、分かっている。もはや推測の域は超えた。これから益々忙しくなるぞ」
そう言いながらも、数日後に控えた結婚式を思うと少々気が遠くなりかけたリュークザインだった。
アナベラが話を終えた後、リュークザインは簡潔に感謝を述べた。
それに軽い会釈で返した後、アナベラは少し首を傾げて考える素振りを見せた。
「アナベラ嬢?」
「・・・お二人は、数日後には結婚式をお迎えになるのですね」
その目は柔らかく細められているが、宿す光は少しばかり悲しげで。
「ラエラさま。ただの自己満足の行為にございます。どうかお許しくださいませ」
「え?」
ラエラは思わず問い返すが、それには何も答えない。
代わりにアナベラは前に一歩、すっと進み出た。
そしてドレスの裾を取り、リュークザインに向かって美しく膝を折る。
「どうか、本当に手が届かなくなってしまう前に一言だけ、本心を伝えさせて下さいませ」
リュークザインは目を瞠った。
意図を汲んだラエラは一歩下がると、場を二人に譲る。
アナベラは膝を折ったまま、視線だけを上げてリュークを見る。
「リュークザインさま。わたくし、アナベラ・スカッチは、ずっと・・・ずっと、貴方さまをお慕い申し上げておりました」
「アナベラ嬢・・・」
「今なら、ラエラさまがどれだけ立派なお方か分かりますわ。・・・どうか、お二人で幸せなご家庭をお築きくださいませ」
そう言って、にっこりと微笑んだ。
「・・・ありがとう」
リュークは、静かに一言、そう告げた。
それから、話し合いの場となった部屋を後にしようとしたアナベラだったが、彼女が扉に手をかけたところでリュークザインが呼び止めた。
「アナベラ嬢。貴女に一つ、心に留めていただきたい事がある」
アナベラは把手にかけた手を止め、リュークザインをじっと見た。
「・・・何でございましょう?」
そう静かに問い返すと、普段は滅多に笑みを見せないリュークザインが、柔らかく微笑んだ。
「陛下のご判断を信じていただきたい。・・・あの方は、忠と不忠とを一つに括るようなことはなさらない」
その言葉に、アナベラは目を瞠った。
「貴女の義と忠を尊ぶ心を、陛下がお忘れになることはないだろう」
「・・・ありがとうございます」
滅門の恐れさえある内容を告げていると、アナベラ自身も分かってここに来た。
リュークザインの言葉は気休めとしか受け取られないかもしれない。
実際、アナベラは気休めとして受け取ったのだが、それでもその言葉は彼女にとって嬉しいもので。
だがここで気を抜いて泣いてはいけない、そう彼女が思っていた時。
リュークは更に言葉を継いだ。
「そんな義のある女性である貴女に、心を寄せてもらった事を誇りに思う」
「・・・」
それは、せっかく我慢していた涙が、どうにかして抑えていた涙が、アナベラの瞳から零れ落ちた瞬間だった。
「・・・本当に困ったお方ですのね。妻となる女性の前で、他のご令嬢を泣かせてどうするんですか」
責めるような台詞だが、ラエラの口元は柔らかく微笑んで。
心なしか嬉しそうで。
それを見て、リュークザインは困ったように眉を下げた。
何と答えるべきか分からず、そっとラエラの手を握りしめ、互いの視線が交差した時。
・・・その時、そこに場違いに呑気な声が響いた。
「あー、そろそろ邪魔してもいいかな?」
声をかけてから、しかも既に開け放ってある扉をノックしたのは、隣室に控えていたベルフェルトだ。
彼の後ろから、ぞろぞろと周囲を固めていた諜報員たちが集まって来ていた。
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リュークザインは重ねた手を無言で外すと重々しく頷いた。
「ああ、分かっている。もはや推測の域は超えた。これから益々忙しくなるぞ」
そう言いながらも、数日後に控えた結婚式を思うと少々気が遠くなりかけたリュークザインだった。
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