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リュークザインの結婚式
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「何というか・・・リューク、お前という男は根っからの苦労性だよな」
少々やつれた顔の礼服姿の背中に、慰めるように手を置いた。
「・・・ベル。それは慰めか? それとも馬鹿にしているのか?」
「そんなことも聞かないと分からなくなっているとは。馬鹿にしているに決まっているだろう」
挙式四日前に現在関わっている重要任務の情報が更新され、緊急招集会議の結果、警備体制や諜報活動内容が刷新されたばかり。
当然、諜報機関を統括するリュークザイン・ライプニヒ長官の仕事量は激増した訳で。
・・・まあ、仕事量が致死的に増えたのはオレも同じだけどな。
新婚気分もまともに味わえなさそうなこいつとは、悲惨さが違うというもの。
仲間内で仕事を負担し合って、なんとか三日間の休みをリュークのために確保するのが精一杯だった。
それでも、こいつは感謝してくれたのだが。
漸く結婚式というハレの日を迎えた親友の姿に、ベルフェルトは安堵と労わりのこもった眼差しを向けた。
「幸せになれよ」
今日のこの日を、もしかしたらオレは、新郎であるこいつと同じくらい嬉しく思っているのかもしれない。
リュークとは、幼いときから気の合う友であり、同士だった。
歪んだ父を持つ者として、また家門の将来を憂う者として。
感情を分かち合う存在が、どれだけ救いになったことか。
だから心から願っている。
この男に最上の幸せが訪れますように、と。
オレの言葉を受けて、リュークがふ、と笑う。
「ラエラが妻になるんだ。幸せになれない筈がない」
「ふふ、そうか。・・・そうだな」
そう明るく答えられるくらい、こいつにとってあの家の闇は過去のものになったのだ。
「この幸せ者め。さっさと美しい花嫁を迎えに行くがいい」
「言われなくてもそうするさ」
疲れてはいても晴れやかな笑顔で、リュークザインは花嫁の待つ回廊へと歩いていく。
そこで二人は手を取り合って、友や家族が見守る中、誓いの場へと進んでいった。
良かったな、美しい花嫁じゃないか。
お前もやっと、幸せになれるのだな。
花婿の付添人という役を果たしたオレは、会場の隅に佇み、新郎新婦が誓いの言葉を述べる様子をじっと見つめる。
今も厳重な警備体制が敷かれてはいるが、参列者はその事に気付いていない。
気持ちを引き締めろ。
あちらが事を起こすとしたら、長官であるこいつの関心が私事で気が逸れていると思われているであろう時が、一番確率が高い。
であれば、第一弾の動きはここ一、二週間以内で起きる筈。
今日とて例外ではない。
緊張と共に、会場全体に視線を巡らせれば、会場のもう一方の端に佇む勇ましいご令嬢の姿が視界に入る。
そう言えば、新婦の付添人はルナフレイア嬢だったな。
リュークザインに釣り合う女性となるため、社交活動を一切せずに、全ての時間を己の能力を引き上げるためだけに使ってきたラエラ嬢は、花嫁付添人を頼めるような友人がいなくて。
そんな彼女は、オレが偶然出会ってデサイファミスに引き込んだルナフレイア嬢と意外と気が合って。
今日こうして、彼女の付添人として直前まで側にいたようだ。
で、オレと同じことを考えたって訳だな。
役目が終わったら、会場全体が見渡せる位置に陣取り、怪しい者がいないかを監視する、と。
相変わらず、可愛らしい容姿に似合わない、勇ましいご令嬢であることよ。
ここで、わあっと参列客から歓声が上がる。
新郎が新婦に誓いの口づけをしたのだ。
おいおい、リューク。
そんなにあからさまに頬を染めるんじゃない。
確かに今日のラエラ嬢は格別に美しいが、お前が相好を崩す姿はなかなかの見ものだぞ。
・・・うん?
しかも少し長すぎやしないか?
見守っている観衆の方が赤面し始めているぞ。
ああ、ほら、ラエラ嬢もさりげなく腕を叩いて、どうしたのかと訴えている。
おっと、それでも止めないときたか。
ふふ、あの堅物のお前が。
衆目の中、口づけたまま新婦を離そうとしないとはな。
ベルフェルトの口元も自然と綻んだ。
今は少しばかり気を緩めてもよさそうだ。
あの口づけの場面に釘付けになっていない者は、この場には一人もいない。
あちらが行動を起こすのは、どうやらもう少し後のようだ。
ベルフェルトは、目を輝かせて新郎新婦を祝福している未来の王太子妃に視線を移す。
・・・全力でお守りしますよ、カトリアナ・マスカルバーノ侯爵令嬢。
いえ、我らがレオンハルト王太子殿下の最愛の婚約者であり、次期王妃となられるお方、カトリアナさま。
「もうそろそろ・・・」と進行役に止められ、漸くリュークザインが唇を離すまでには、更に二分ほどかかったのだった。
余談ではあるが、リュークザインとラエラの結婚式でのこの時の様子は、貴族平民を問わず、後々までの語り草となる。
そして。
果たして、王城から帰るカトリアナ嬢を乗せた馬車が襲撃されたのは、この結婚式から三日後の事だった。
少々やつれた顔の礼服姿の背中に、慰めるように手を置いた。
「・・・ベル。それは慰めか? それとも馬鹿にしているのか?」
「そんなことも聞かないと分からなくなっているとは。馬鹿にしているに決まっているだろう」
挙式四日前に現在関わっている重要任務の情報が更新され、緊急招集会議の結果、警備体制や諜報活動内容が刷新されたばかり。
当然、諜報機関を統括するリュークザイン・ライプニヒ長官の仕事量は激増した訳で。
・・・まあ、仕事量が致死的に増えたのはオレも同じだけどな。
新婚気分もまともに味わえなさそうなこいつとは、悲惨さが違うというもの。
仲間内で仕事を負担し合って、なんとか三日間の休みをリュークのために確保するのが精一杯だった。
それでも、こいつは感謝してくれたのだが。
漸く結婚式というハレの日を迎えた親友の姿に、ベルフェルトは安堵と労わりのこもった眼差しを向けた。
「幸せになれよ」
今日のこの日を、もしかしたらオレは、新郎であるこいつと同じくらい嬉しく思っているのかもしれない。
リュークとは、幼いときから気の合う友であり、同士だった。
歪んだ父を持つ者として、また家門の将来を憂う者として。
感情を分かち合う存在が、どれだけ救いになったことか。
だから心から願っている。
この男に最上の幸せが訪れますように、と。
オレの言葉を受けて、リュークがふ、と笑う。
「ラエラが妻になるんだ。幸せになれない筈がない」
「ふふ、そうか。・・・そうだな」
そう明るく答えられるくらい、こいつにとってあの家の闇は過去のものになったのだ。
「この幸せ者め。さっさと美しい花嫁を迎えに行くがいい」
「言われなくてもそうするさ」
疲れてはいても晴れやかな笑顔で、リュークザインは花嫁の待つ回廊へと歩いていく。
そこで二人は手を取り合って、友や家族が見守る中、誓いの場へと進んでいった。
良かったな、美しい花嫁じゃないか。
お前もやっと、幸せになれるのだな。
花婿の付添人という役を果たしたオレは、会場の隅に佇み、新郎新婦が誓いの言葉を述べる様子をじっと見つめる。
今も厳重な警備体制が敷かれてはいるが、参列者はその事に気付いていない。
気持ちを引き締めろ。
あちらが事を起こすとしたら、長官であるこいつの関心が私事で気が逸れていると思われているであろう時が、一番確率が高い。
であれば、第一弾の動きはここ一、二週間以内で起きる筈。
今日とて例外ではない。
緊張と共に、会場全体に視線を巡らせれば、会場のもう一方の端に佇む勇ましいご令嬢の姿が視界に入る。
そう言えば、新婦の付添人はルナフレイア嬢だったな。
リュークザインに釣り合う女性となるため、社交活動を一切せずに、全ての時間を己の能力を引き上げるためだけに使ってきたラエラ嬢は、花嫁付添人を頼めるような友人がいなくて。
そんな彼女は、オレが偶然出会ってデサイファミスに引き込んだルナフレイア嬢と意外と気が合って。
今日こうして、彼女の付添人として直前まで側にいたようだ。
で、オレと同じことを考えたって訳だな。
役目が終わったら、会場全体が見渡せる位置に陣取り、怪しい者がいないかを監視する、と。
相変わらず、可愛らしい容姿に似合わない、勇ましいご令嬢であることよ。
ここで、わあっと参列客から歓声が上がる。
新郎が新婦に誓いの口づけをしたのだ。
おいおい、リューク。
そんなにあからさまに頬を染めるんじゃない。
確かに今日のラエラ嬢は格別に美しいが、お前が相好を崩す姿はなかなかの見ものだぞ。
・・・うん?
しかも少し長すぎやしないか?
見守っている観衆の方が赤面し始めているぞ。
ああ、ほら、ラエラ嬢もさりげなく腕を叩いて、どうしたのかと訴えている。
おっと、それでも止めないときたか。
ふふ、あの堅物のお前が。
衆目の中、口づけたまま新婦を離そうとしないとはな。
ベルフェルトの口元も自然と綻んだ。
今は少しばかり気を緩めてもよさそうだ。
あの口づけの場面に釘付けになっていない者は、この場には一人もいない。
あちらが行動を起こすのは、どうやらもう少し後のようだ。
ベルフェルトは、目を輝かせて新郎新婦を祝福している未来の王太子妃に視線を移す。
・・・全力でお守りしますよ、カトリアナ・マスカルバーノ侯爵令嬢。
いえ、我らがレオンハルト王太子殿下の最愛の婚約者であり、次期王妃となられるお方、カトリアナさま。
「もうそろそろ・・・」と進行役に止められ、漸くリュークザインが唇を離すまでには、更に二分ほどかかったのだった。
余談ではあるが、リュークザインとラエラの結婚式でのこの時の様子は、貴族平民を問わず、後々までの語り草となる。
そして。
果たして、王城から帰るカトリアナ嬢を乗せた馬車が襲撃されたのは、この結婚式から三日後の事だった。
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