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襲撃
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リュークザインの婚姻の時期に合わせて向こう方が動くだろうというベルフェルトの読みは当たっていた。
そして勿論、デサイファミスとしての対策も万全だった。
王家の家紋入りの馬車がマスカルバーノ侯爵家に到着するや否や、いや、実際は馬車が完全に止まり切る前に、レオンハルトは飛び降りていた。
「カトリアナッ!」
まだエントランスで父母や執事たちに話をしていたカトリアナが、その声に驚いて振り向く。
レオンハルトは人目も憚らずにカトリアナを抱きしめた。
「良かった・・・怪我はないね・・・」
固く抱き竦めながら、レオンハルトは、ほ、と安堵の息を吐く。
「・・・ご心配をおかけして申し訳ありません」
レオンの胸元から小さな声で謝罪の言葉が紡がれ、レオンハルトは慌てて「君が謝る事じゃない」と答えた。
そこへロナダイアスが進み出て、レオンハルトに礼を取った。
「王太子殿下、娘をお気遣い下さり有り難うございます。我らマスカルバーノ侯爵家一同、感謝の言葉もありません。殿下がお付けくださった護衛のお陰で、こうして傷一つ負わずに戻って来る事が出来ました」
ここで漸くカトリアナを腕の中から解放したレオンハルトは、ロナダイアス・マスカルバーノ侯爵に視線を向けた。
「報告は聞いている。対応が間に合って本当に良かった。ベルフェルトが進言してくれて助かったよ」
その言葉に、カトリアナも大きく頷く。
「ルナフレイアさま、凄くお強かったんですのよ。剣捌きなんて、速すぎてわたくしには全然見えませんでしたわ」
そう言って、マスカルバーノ家の馬車近くに立っていた、今回の襲撃事件を防いだ功労者へと目を向けた。
ドレス姿でも、最近よく見る侍女の服装でもなく。
白いシャツに黒のベスト、そして黒のほっそりとしたズボンをはき、腰には長剣を下げているルナフレイアを。
それは王城からの帰り道。
マスカルバーノ家の家門が入った馬車が、下り坂に差し掛かった所だった。
道先に停まっている馬車があり、御者らしき男が後部車輪付近で膝をついている。
道の中央寄りに停車していたために追い越す事が出来ず、かといって引き返せるほどの道幅はない。
故障か何かで立ち往生しているのかと判断したマスカルバーノ家の御者は、とりあえず馬車を停め、車輪脇でしゃがみ込んでいる御者らしき男に声をかけた。
だが、それを合図とでも言うかのように、周囲の木陰から複数の男たちが飛び出して来たのだ。
マスカルバーノ公爵の御者は、自分が声をかけた御者らしき男に拘束され、押さえ込まれる。
現れた男たちは総勢五人、その全てが剣を携えていた。
通常であれば、カトリアナが王城を往復する際に連れて行く護衛は一名。
誰から見ても圧倒的に不利だった。
襲撃者たちもそう考えていたのだろう。
別段焦った様子もなく、ゆっくりと馬車の扉を開けた。
しかしカトリアナと通常の護衛一人に加えて、帯剣したルナフレイアがそこにいた。
扉を開けた襲撃者をまず護衛が一突きで倒す。
馬車から転げ落ちたその一人目に巻き込まれる形で、後続の二名が道に倒れ込んだ。
巻き込まれなかった残り二名の襲撃者が、状況を把握できずに戸惑っているところにルナフレイアが馬車から飛び降りた。
「この二名は私が処理します」
そう言って、すらりと剣を抜く。
「では私はこちらの二名を」
馬車の扉に手をかけたまま、護衛が答える。
そうして、勝負はあっという間に決着がついた。
「襲撃者たちは王城の牢に入れるように言ってある。じきに取り調べも始まるだろう」
レオンの言葉に、ロナダイアスが重々しく頷く。
「ベイベル国の者たちでしょうか、それとも国内で雇い入れた者たちでしょうか?」
「・・そんなに分かりやすい証拠は残さないだろうから、きっとそこらで雇った者たちだろうと思ってるんだけど」
レオンハルトは傍に立つカトリアナに目を向ける。
「これで終わってくれればいいんだけど・・・ね」
不安そうにそう呟いたレオンの手を、カトリアナはぎゅっと握りしめる。
「覚悟は出来ております。貴方の婚約者の立場は、どなたにもお渡しするつもりはありませんわ。・・・どんな手段で来られても、負けて差し上げたりなど致しません」
そう言って照れくさそうにふふ、と笑う姿を、「王太子妃としての自覚が出て来たなぁ」なんて感動して見ていたのが、意外と呑気なロナダイアス卿だったりする。
そして勿論、デサイファミスとしての対策も万全だった。
王家の家紋入りの馬車がマスカルバーノ侯爵家に到着するや否や、いや、実際は馬車が完全に止まり切る前に、レオンハルトは飛び降りていた。
「カトリアナッ!」
まだエントランスで父母や執事たちに話をしていたカトリアナが、その声に驚いて振り向く。
レオンハルトは人目も憚らずにカトリアナを抱きしめた。
「良かった・・・怪我はないね・・・」
固く抱き竦めながら、レオンハルトは、ほ、と安堵の息を吐く。
「・・・ご心配をおかけして申し訳ありません」
レオンの胸元から小さな声で謝罪の言葉が紡がれ、レオンハルトは慌てて「君が謝る事じゃない」と答えた。
そこへロナダイアスが進み出て、レオンハルトに礼を取った。
「王太子殿下、娘をお気遣い下さり有り難うございます。我らマスカルバーノ侯爵家一同、感謝の言葉もありません。殿下がお付けくださった護衛のお陰で、こうして傷一つ負わずに戻って来る事が出来ました」
ここで漸くカトリアナを腕の中から解放したレオンハルトは、ロナダイアス・マスカルバーノ侯爵に視線を向けた。
「報告は聞いている。対応が間に合って本当に良かった。ベルフェルトが進言してくれて助かったよ」
その言葉に、カトリアナも大きく頷く。
「ルナフレイアさま、凄くお強かったんですのよ。剣捌きなんて、速すぎてわたくしには全然見えませんでしたわ」
そう言って、マスカルバーノ家の馬車近くに立っていた、今回の襲撃事件を防いだ功労者へと目を向けた。
ドレス姿でも、最近よく見る侍女の服装でもなく。
白いシャツに黒のベスト、そして黒のほっそりとしたズボンをはき、腰には長剣を下げているルナフレイアを。
それは王城からの帰り道。
マスカルバーノ家の家門が入った馬車が、下り坂に差し掛かった所だった。
道先に停まっている馬車があり、御者らしき男が後部車輪付近で膝をついている。
道の中央寄りに停車していたために追い越す事が出来ず、かといって引き返せるほどの道幅はない。
故障か何かで立ち往生しているのかと判断したマスカルバーノ家の御者は、とりあえず馬車を停め、車輪脇でしゃがみ込んでいる御者らしき男に声をかけた。
だが、それを合図とでも言うかのように、周囲の木陰から複数の男たちが飛び出して来たのだ。
マスカルバーノ公爵の御者は、自分が声をかけた御者らしき男に拘束され、押さえ込まれる。
現れた男たちは総勢五人、その全てが剣を携えていた。
通常であれば、カトリアナが王城を往復する際に連れて行く護衛は一名。
誰から見ても圧倒的に不利だった。
襲撃者たちもそう考えていたのだろう。
別段焦った様子もなく、ゆっくりと馬車の扉を開けた。
しかしカトリアナと通常の護衛一人に加えて、帯剣したルナフレイアがそこにいた。
扉を開けた襲撃者をまず護衛が一突きで倒す。
馬車から転げ落ちたその一人目に巻き込まれる形で、後続の二名が道に倒れ込んだ。
巻き込まれなかった残り二名の襲撃者が、状況を把握できずに戸惑っているところにルナフレイアが馬車から飛び降りた。
「この二名は私が処理します」
そう言って、すらりと剣を抜く。
「では私はこちらの二名を」
馬車の扉に手をかけたまま、護衛が答える。
そうして、勝負はあっという間に決着がついた。
「襲撃者たちは王城の牢に入れるように言ってある。じきに取り調べも始まるだろう」
レオンの言葉に、ロナダイアスが重々しく頷く。
「ベイベル国の者たちでしょうか、それとも国内で雇い入れた者たちでしょうか?」
「・・そんなに分かりやすい証拠は残さないだろうから、きっとそこらで雇った者たちだろうと思ってるんだけど」
レオンハルトは傍に立つカトリアナに目を向ける。
「これで終わってくれればいいんだけど・・・ね」
不安そうにそう呟いたレオンの手を、カトリアナはぎゅっと握りしめる。
「覚悟は出来ております。貴方の婚約者の立場は、どなたにもお渡しするつもりはありませんわ。・・・どんな手段で来られても、負けて差し上げたりなど致しません」
そう言って照れくさそうにふふ、と笑う姿を、「王太子妃としての自覚が出て来たなぁ」なんて感動して見ていたのが、意外と呑気なロナダイアス卿だったりする。
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