【完結】王太子と宰相の一人息子は、とある令嬢に恋をする

冬馬亮

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気休め

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・・・本当に、気を遣ってばっかり。

そう思って、つい苦笑した。
それをベルフェルトは、ルナが自分の発言に困っていると解釈したらしい。

眉を下げて、視線を外した。

「まぁ、無理に相談しろとなどと言うつもりはないのだが、気に障ったのならば・・・」

少し表情が曇ったように思えて、ルナフレイアは慌てて否定しようと口を開いた。

「気に障るなんてとんでもない。ただ、ええと・・・この先のこと、将来? そう、将来のことを少し考えていて」

うん、これなら話の核心をずらせそう。

そう思ったルナフレイアは、先ほど頭の中でぐるぐると考えていた事を自分の恋心の部分を除いて、かいつまんで説明した。

まぁ、殿下の結婚式までの滞在だって前にも話した事あったし、いずれこの仕事のお手伝いも辞めなきゃいけない訳だし、こうして話せるのは却って丁度良かったかも。

なんて気軽な気持ちで。

「・・・そうか。そう言えば確かに出会った時にそう言っていたな」
「そうですね。まあ、今の状況が落ち着いてからの話ですから、別に今相談に乗っていただかなくても大丈夫ですよ。そろそろ仕事に戻らなきゃいけませんし」
「・・・まあ、それはそうなんだが」

やはり時間のことは気にしてるのだろう。
とにかく今はやらなきゃいけない事が多すぎて、手が回らない状態だ。

半年近く後の私の事なんか、気にしててもしょうがないもの。

「君はデサイファミスにとって貴重な人材だ。これは私事の括りに入れていいものでもないだろう」
「あはは、そう言ってもらえるのは嬉しいですけど、領地に帰るのは決定事項ですしね。まあ時期の調整とかは多少できるとは思いますけど」
「・・・」
「ベルフェルトさま?」

何故か黙り込んだベルフェルトに、ルナフレイアは再度声をかけた。

「あの、ベルフェルトさま。もう行かないと」

ルナフレイアに袖を引っ張られ、漸くベルフェルトの足が一歩進む。

「・・・とにかく、また後で時間を取って話をするとしよう」
「? はい、分かりました」

その後、無口になったベルフェルトと角で別れ、ルナフレイアは任務に戻った。

それからも、ルナフレイアは日中を護衛兼侍女としてカトリアナに付き、行き帰りの馬車にも同乗する日が続く。
襲撃が一度失敗している事から、二度同じ手は使わないだろうというのが共通した意見だったが、そこは念を入れての事だった。

そして今日、カトリアナの自衛の一端として、ある物を手渡すことになっており、今、ルナフレイアはそれを手にしてカトリアナのいる部屋へと足を運んでいた。

「カトリアナさま、お待たせいたしました」

扉を開けると、そこには最近ようやく見慣れた顔があった。

「ああ、ルナフレイア嬢か」
「王太子殿下、こちらにいらしたんですか」
「少し時間が取れてね」

膝を折って挨拶するルナフレイアに微笑みかけてから、その手元にある包みに気付く。

「それは・・・例の?」
「あ、はい。先ほど届きまして」
「そうか。貸してもらってもいいかい?」
「あ、はい。どうぞ」

レオンハルトはルナフレイアから包みを受け取ると、今度はそれを、不思議そうな顔で様子を見守っていたカトリアナにそっと手渡した。

「カトリアナ。これから先、外出時は、いや、出来れば普段からいつもこれを装着していて欲しい。・・・使う日が来ない事を願っているけれど」
「装着、ですか?」

首を傾げ、不思議そうに聞き返す。

「ああ、開けてごらん。・・・万が一の為の護身用具だ」

その言葉の意味を測りかね、戸惑った表情のまま、包みを開ける。

中には、特殊な細工の施されたガーターリングと、そこに装着する用途の小刀が三振り入っていた。

「これは・・・」
「君の安全は常に確保するつもりだ。気休めだとでも思ってくれていい。・・・着けてくれるかい?」

カトリアナは、神妙な面持ちで護身用のアイテムを見つめる。

「・・・これは、どうやって付けるものなのでしょうか?」

レオンハルトから視線を送られて、ルナフレイアが代わりに答える。

「通常、太ももにそのガーターリングを装着し、留め具のある部分にそれぞれ小刀を忍ばせておきます」
「・・・成程、分かりました。早速、着けてみますね」
「ルナフレイア嬢に手伝って貰わなくて大丈夫かい?」
「まずは一人でやってみますわ。自分でもやり方を覚えたいですし。・・・それで、その・・・」
「うん? どうしたんだい、カトリアナ?」

頰を染めてもじもじするカトリアナに、レオンハルトが優しく声をかける。

「あの・・・殿方三人は、少しの間、部屋の外に出て頂いてもよろしいですか?」
「「「え?」」」

ガーターリングを手にそう告げられて、アッテンボローとライナスとレオンハルトは、はっとそれを装着する箇所が太ももであることに気付く。

「し、失礼しましたっ!」
「ぜ、全然気づかなくてっ!」
「え、ええと、じゃあ、着け終わったら声をかけてねっ!」

慌てて扉に向かう三人の顔は真っ赤に染まっていて、対してそれを見送る女性たち三人の表情は何とも生温かいものだったりした。
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