転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第276話 家族の写し絵を飾りたい

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魔道具に魔力を通してから、時間を置いてから写すことができた魔法紙の結果を兄上が覗き込んだ。

「……もう出来たのか?」
「六秒くらいの時間差になったよ」
「音とかしないから、いつ発動したのかわからなかったけど、上手く行ったみたいだな」
「音?」
「いや……、今は改良とかしなくて良いから」

時間差で発動した場合に、いつのタイミングで起動するか分かりにくいから音とかで知らせたほうが良いってことみたいだ。
確かに、魔法陣が浮かび上がった時にはもう写ってしまっているし、起動するぞってタイミングがわかった方が良さそうだ。音でお知らせするのは良いね!

改良した方が良さそうだけど、兄上は今やらなくても良いって言うし、六秒なら身構えていられるってことで、何枚か家族全員揃った写し絵を作ってみた。
最初の写し絵は僕が口を開けた状態で写ってしまっていたので、
皆、口を閉じて無言でじっとしているというのは側から見たら妙な光景かもしれない。
何秒も我慢した結果、良い感じの写し絵が出来た。
家族全員が写っている絵を見るのってなんだか嬉しい。

「……額に入れて飾っておきたいけれど、今は他人に見せるわけにはいかないわね……」

家族が写っている写し絵を眺めながら母様が残念そうに言う。メイリが不満気に眉を下げた。

「ええー?いつでも眺められるところに飾っておけたら良いのに」
「この魔道具が公表できる状態にならないと、難しいわよ。見た方が『どうしたんだ?』って思うでしょう?」
「本館でなく離れなら大丈夫じゃない?」

メイリは納得できない様子で小さい口を歪めている。
兄上が顎に手を当て、壁にかけられているカレンダーに目を向けた。

「シャルおじさんが来たら、この魔道具も見せるんでしょ。その時相談したら?
 『販売予定だから試しに写した物だ』って話にできれば飾れるんじゃない?
 ……シャル叔父さんの到着は明後日くらい?」
「そうね。もう国内には戻ってきているそうよ。……メイリ、シャル叔父さんが来てから相談しましょ」

母様はそう言って微笑むとメイリの髪をそっと撫でた。メイリは仕方ないなという様子で頷いた。

「シャル叔父さんは外国に居たの?どこにいるか分かるの?」
「あちこち回っていたそうよ。ペオニア国内に入ってから商業ギルド経由で連絡をくれたの」
「魔鷹便!」
「そうよ」

シャル叔父さんに手紙を出したって話は聞いていたんだけど、その後どうなったのかをちゃんと聞いていなかった。
どうやら、移動して大きな街に入ったところで商業ギルドから手紙を送ってくれているらしい。

「こちらからも連絡できるの?」
「あらかじめ経由する街の商業ギルドに伝言を頼んでおくことは出来るわよ。
 辺境伯領に入ったようだから、もうこちらからは連絡しないけど」
「アンソラ男爵領の商業ギルドには伝言を頼まないってこと?」

ゲンティアナ男爵領とナスタチウム辺境伯領の間にはアンソラ男爵領がある。
隣国との国境からナスタチウム辺境伯領に入って最初の街に伝言を預けていたらしいのだけど、その後は伝言しないのか、ちょっと不思議に思って訊いてみた。

「特別な用事がなければ、通りやすい道を使って来てもらった方が早いわ」

商業ギルドに伝言を預けるなら、指定した街を通ってもらわないといけない。
遠回りになる場合だってあるから最小限の連絡しかしないんだって。

「お話」の魔道具とか「手紙」の魔道具があれば、連絡しやすそうだけど、国の外まで繋がるかはわからない。
「手紙」の魔道具をシャル叔父さんの商会で採用してもらえなくても、
国外に出てどこまで繋がるか試すのはお願い出来ないかな。
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