転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第306話 家族で鑑賞会

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「なんで、ちょっと目を離した隙に……っ」

部屋に足を踏み入れるなり兄上が叫ぶように言った。目線は河原の様子を表示している壁だ。

「これ、ホームシア……」

ボソリと何か呟いて、僕の方にゆっくりと顔を向けた。僕は兄上にもっとちゃんと見てもらいたくて、壁を指差した。

「ねぇねぇ見て。黒ローブの仲間がいるんだよ」
「は……?」

兄上が再び壁に顔を向ける。目を見開いて壁に写し出されている黒ローブの姿を凝視した。

「ちょっと、これ……。どこだ?」
「え、地名? なんだろう。アンソラ男爵領の中だよ、多分……」
「多分って……。どうやってるんだよ。そもそも、これは一体いつの映像だ?」
「今……?」
「今って……。なんで疑問系なんだ? 自分で作ったんだろう?」
「本当の本当に今かと言うと、ちょっと違うかもしれない。数秒……、もしかしたら数分……?遅れてるかも……」

位置を指定した場所の情報を収集して送っているから、表示されるまでにちょっと時間がかかっちゃっているかもしれないんだよね。風魔石と乳白色の魔石を使っているから風魔法と光魔法で情報を運んでいるはずだ。風が音を運ぶのって一瞬ではない気がするんだけど、どうなんだろう。「お話」の魔道具とかは使ってみて時間差がある感じはしなかったけど、「動く写し絵」の方が情報量が多いと思うんだよね。

「いや、数分レベルでも充分リアルタイムじゃないか。……ちょっと、待て。気になることが色々あり過ぎる」
「黒ローブが悪いことをしているんだよ」
「……う、うん……。それは重大だよな。……じゃあ、こいつらの動向に集中するか……。……やっぱ、父上達も呼ぶよ」

兄上は壁の黒ローブ達の様子に目を向けたまま、「お話」の魔道具で父上に連絡をし始めた。

しばらくしたら僕の部屋に家族が集合していた。

父上と母上と兄上、僕、そしてメイリも。メイリは母上と一緒にいた時に兄上から母上に連絡が来たから一緒に来たのだそうだ。黒ローブのこととかメイリは怖がるんじゃないかって思ったから呼ぶつもりなかったんだけどな。
でもメイリは思ったよりずっと落ち着いていて、黒ローブ達が言っていたことを説明した時に少し不安そうな表情をしただけで怖がって泣いたりとかはしなかった。

黒ローブ達が言っていたことを話している間に、黒ローブ達が移動を始めた。
位置情報をこまめに移動させて追いかける。手動で位置を指定するのってやっぱり不便だな。

「……一体、いつの間にこんなものを作ったんだ?」
「他領を覗き見ている状況でしょ。問題ないかしら」
「しっ。奴らが何か喋ってる」

最初のうちは、「動く写し絵」を壁一面に表示している表示していること自体に興味が集中して、次に表示している場所がアンソラ男爵領らしいってことで心配されりした。
でも、説明している間にも「動く写し絵」の中の黒ローブが移動したり会話したりしているので、黒ローブ達の会話の方に注目し始めた。
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