転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第305話 黒ローブ達の企み

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もう一人の人影もよく見たら黒ローブ姿みたいだ。フード部分を外していてか目の下から黒い布を巻いているから、ちょっと印象が違うけど。

『失敗か……。ジランやアンスは回復傾向にあるって話だし、この方法じゃうまくいかないってことか……』
『でも、ここでは川の魔獣には効果があったってことだろ。それなりに毒は広がっているんじゃないか』
『呪いの毒に変化するかと思ったんだがな」

黒ローブ達の言葉を聞いて、息を呑んだ。あちらには僕の姿は見えないはずだけど
気配を消したくなる。気づかれないよね?

黒ローブ達は、はっきりとは言っていないけど、この川に毒を撒いて、その結果を確認しているようだ。
「呪いの毒」に変化することを期待していたみたいだけど、それは今のところ達せられていないらしい。

『そろそろ本国から催促がくるぞ。別件も上手く言っていないし』
『第二王子の件は、こっちは毒を提供はしたんだから、失敗したとしても実行した連中のせいだろ』
『そうだが、目標を達してないと次の要求が来るんじゃないか』

黒ローブ達は話をしながら、河原に転がっている牙サーモンの遺骸を一つずつ木の枝でひっくり返して行った。
黒く爛れたところがないか確認しているのかな。

第二王子って、ネイサン殿下のことかな。

「初討伐の宴」の時に仕込まれていた毒とかを黒ローブ達が提供していたってことか。
怖いなぁ……。

『……黒く爛れたものはなし、と……』
『見た目は普通だから、麓の街に持って行ったら売れるんじゃないか?』
『やめとけ。毒だってばれた時、作戦に支障が生じかねない』
『でもよ。こいつを人が食べたら、呪いの毒に変化する可能性だってあるんじゃないか』
『……そうなっても、俺らがその毒を手にできないだろ』

何か凄く怖い作戦を考えているらしい。「呪いの毒(微毒)」にやられた牙サーモンを人に食べさせるなんて……。

光水を振りかけたって、食べたくないなって思っちゃうのに。

どうしよう。もし、「呪いの毒」が出来上がっちゃったら、この人達何をする気だろう。
今、阻止するとか何かできることはないのかな。

この「動く写し絵」は魔石に記録されるはずだけど、その魔石を父上に見せて相談しようか……。
記録用の魔石はちゃんとセットされていたよね、と確認しようとして魔道具を覗き込んだ時、首からぶら下げていた「お話」の魔道具の指輪がぶらんと揺れた。

そうか、今、呼べばよいか。

僕の腕にはブカブカの「お話」の魔道具の腕輪に指を触れ、くるんと動かした。
魔石のある場所まで回転させてから魔力を通した。

『はい。もしもし』
「兄上、ちょっと見てもらいたいものがあるんだけど……」
『今度はなんだ?』

兄上の口調が急に何か警戒したように鋭くなった。少しして、バタバタと廊下をかけてくる足音が聞こえてきた。
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