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第2章
第312話 識別情報の付与
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馬車を映し出しているのとは別で、改良実験用に「動く写し絵」の魔道具を用意する。
こっちは、壁一面に表示したりする必要はないので、手元のボードに表示するようにした。
魔道具の魔石と魔法陣を組み替える。識別情報を刻んだ魔石と魔法陣入りの雷魔石を追加した。
まずは、離れた場所から指定した対象に魔法陣を刻むことができるかの実験だ。
先程まで見ていたアンソラ男爵領の川の辺りに牙サーモンがゴロゴロと転がっていたことを思い出した。牙サーモンは魔魚だから皮に魔力を帯びているはず。
転がっている牙サーモンの皮に魔法陣を転写できるかな。
それと、転写した魔法陣が自動発動するか、だね。
川に沿って「動く写し絵」で表示する位置を変えて行くと、暫くして牙サーモンが河原に転がっている場所に辿り着いた。
牙サーモンが何体も転がっている光景を見て、魔法陣の転写の操作の前に、対象の牙サーモンをどうやって指定するかという問題があることに気がついた。細かく指定しないといけないよね。
ちょっと「動く写し絵」を表示する機能の方にも手を加えよう。指定した場所を中心に表示を拡大する機能と、表示した場所に触れるとその位置を取得する機能だ。
機能を追加してみて気がついたけど、識別情報を発するようにしなくても、表示機能から対象を選択したら位置が取得できるなら、その位置を利用して遠ざかっていく馬車を選択すれば追いかけることはできるね。
表示の中で選んだ対象の位置を中心に表示し直す機能も盛り込もう。でも、物陰になっちゃたりして見失っちゃうこともあるかもしれないから。やっぱり識別情報を発する機能は必要かな。
「お、ズームだ」
僕の手元の表示ボードを覗き込んで兄上が呟いた。
「ローレン兄様、わたしもそっちの様子を見たいです!交代してください!」
「おお。いいよ。でも……、うーん……。クリス、その作業、あっちでは出来ない?」
馬車の「動く写し絵」を表示している魔道具の前からメイリがこちらの方を見て兄上に訴えた。兄上は壁に表示されている馬車の状況と僕の手元の表示ボードを交互に見て少し考えた様子で口を開いた。
馬車を追いかけている操作をしている側で魔道具の改良実験をやってほしいというリクエストだ。
魔法陣を刻むみたいな集中してやる作業は大体終わったから、皆に囲まれた中で作業しても大丈夫かな。
表示ボードを抱えて、馬車を追跡中の魔道具の側に移動した。メイリが魔道具から顔を上げてにっこりと微笑んだ。嬉しそうな笑顔が可愛い。
チラリとメイリが目線を僕の手元に落とした。表示ボードには大写しになった牙サーモンが映っていた。
「魔魚……。大きく映ってるのね」
「牙サーモンだよ」
兄上とメイリが座る位置を交換した。メイリは立ち上がると僕のすぐ隣にピッタリくっついて座った。表示ボードを覗き込んでいる。
僕は大写しになった牙サーモンの尾っぽ近くを写している部分に魔力を帯びた指で触れた。対象の詳細な位置情報を取得してから識別情報発動の魔法陣の転写を実行する。転写する魔法品のサイズは目立たないように小さめにした。小指の爪位の大きさの魔法陣だ。転写したらすぐに魔法陣が自動起動する。牙サーモンの尾っぽの辺りからふわーっと宙に魔法陣が浮かび上がるのが見えた。
一度、わざと別の位置情報を指定して別の場面を映し出す。静かで誰もいない林の中の光景が表示された。
「ここは?どこが映っているの?」
「適当な場所だよ。適当に位置を指定してみたんだ」
「適当?」
メイリが「よくわからない」という様子で首をかしげた。可愛い。
牙サーモンが映ったままの状態だと、識別情報から対象の表示位置を取得して表示をしたかがわからないから、先に違う場所を映したというだけなんだよね。
さあ、次はいよいよ識別情報を発している場所を映し出す機能の実行だ。うまく行くかな。
こっちは、壁一面に表示したりする必要はないので、手元のボードに表示するようにした。
魔道具の魔石と魔法陣を組み替える。識別情報を刻んだ魔石と魔法陣入りの雷魔石を追加した。
まずは、離れた場所から指定した対象に魔法陣を刻むことができるかの実験だ。
先程まで見ていたアンソラ男爵領の川の辺りに牙サーモンがゴロゴロと転がっていたことを思い出した。牙サーモンは魔魚だから皮に魔力を帯びているはず。
転がっている牙サーモンの皮に魔法陣を転写できるかな。
それと、転写した魔法陣が自動発動するか、だね。
川に沿って「動く写し絵」で表示する位置を変えて行くと、暫くして牙サーモンが河原に転がっている場所に辿り着いた。
牙サーモンが何体も転がっている光景を見て、魔法陣の転写の操作の前に、対象の牙サーモンをどうやって指定するかという問題があることに気がついた。細かく指定しないといけないよね。
ちょっと「動く写し絵」を表示する機能の方にも手を加えよう。指定した場所を中心に表示を拡大する機能と、表示した場所に触れるとその位置を取得する機能だ。
機能を追加してみて気がついたけど、識別情報を発するようにしなくても、表示機能から対象を選択したら位置が取得できるなら、その位置を利用して遠ざかっていく馬車を選択すれば追いかけることはできるね。
表示の中で選んだ対象の位置を中心に表示し直す機能も盛り込もう。でも、物陰になっちゃたりして見失っちゃうこともあるかもしれないから。やっぱり識別情報を発する機能は必要かな。
「お、ズームだ」
僕の手元の表示ボードを覗き込んで兄上が呟いた。
「ローレン兄様、わたしもそっちの様子を見たいです!交代してください!」
「おお。いいよ。でも……、うーん……。クリス、その作業、あっちでは出来ない?」
馬車の「動く写し絵」を表示している魔道具の前からメイリがこちらの方を見て兄上に訴えた。兄上は壁に表示されている馬車の状況と僕の手元の表示ボードを交互に見て少し考えた様子で口を開いた。
馬車を追いかけている操作をしている側で魔道具の改良実験をやってほしいというリクエストだ。
魔法陣を刻むみたいな集中してやる作業は大体終わったから、皆に囲まれた中で作業しても大丈夫かな。
表示ボードを抱えて、馬車を追跡中の魔道具の側に移動した。メイリが魔道具から顔を上げてにっこりと微笑んだ。嬉しそうな笑顔が可愛い。
チラリとメイリが目線を僕の手元に落とした。表示ボードには大写しになった牙サーモンが映っていた。
「魔魚……。大きく映ってるのね」
「牙サーモンだよ」
兄上とメイリが座る位置を交換した。メイリは立ち上がると僕のすぐ隣にピッタリくっついて座った。表示ボードを覗き込んでいる。
僕は大写しになった牙サーモンの尾っぽ近くを写している部分に魔力を帯びた指で触れた。対象の詳細な位置情報を取得してから識別情報発動の魔法陣の転写を実行する。転写する魔法品のサイズは目立たないように小さめにした。小指の爪位の大きさの魔法陣だ。転写したらすぐに魔法陣が自動起動する。牙サーモンの尾っぽの辺りからふわーっと宙に魔法陣が浮かび上がるのが見えた。
一度、わざと別の位置情報を指定して別の場面を映し出す。静かで誰もいない林の中の光景が表示された。
「ここは?どこが映っているの?」
「適当な場所だよ。適当に位置を指定してみたんだ」
「適当?」
メイリが「よくわからない」という様子で首をかしげた。可愛い。
牙サーモンが映ったままの状態だと、識別情報から対象の表示位置を取得して表示をしたかがわからないから、先に違う場所を映したというだけなんだよね。
さあ、次はいよいよ識別情報を発している場所を映し出す機能の実行だ。うまく行くかな。
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