転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第2章

第313話 門外不出らしい

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牙サーモンに付けた識別情報を探して、位置情報を取得する。その位置を映し出すように処理を実行する。

先程は牙サーモンが大写しになっていたけれど、今度はもっと離れた位置からの表示になった。河原にゴロゴロと何体も牙サーモンが転がっているけれど、識別情報を付与した牙サーモンが真ん中に表示されているようだ。
ここからまた大写しにしてみたり、他の牙サーモンを選択してみたりした。
うん、良い感じ。

「魔魚……。牙サーモンが気になるの?さっきからずっと牙サーモンを映しているけど……」

僕の手元の表示ボードを覗き込んでメイリが訊ねた。
何をしているか知らないで様子を見ていたら、僕は牙サーモンをメチャメチャ熱心に見ている人みたいになっていたかも。

「牙サーモンに識別情報を付与しておいて、識別情報を元に牙サーモンの位置を探して表示できるかを確認していたんだよ」
「「識別情報?」」

メイリとほぼ同時に兄上も反応した。
兄上は立ち上がって、僕の手元の表示ボードを見に来た。

「……大写しにしたりする改良とかじゃなかったのかよ。識別情報を付与ってどういうことだ?」

「他の個体と区別出来る情報を作って、それを発出する魔法陣を対象に転写して……」
「待て待て、ちょっと待て」

識別情報を「動く写し絵」で検出できるようにする仕組みを説明しようとしたら、兄上から「ちょっと待て」が入った。

「それGP……、……まさか、人間にも魔法陣を埋め込もうとかしていないよな?」
「しないよ。え、そんな事思い付かなかったけど……。雷魔法で転写するからきっと痛いよ?」
「やらないよな?」
「やらないよ」

人に魔法陣を転写するなんて考えたことなかったよ。雷魔石はバチンってなるから、その時点で相手に気づかれちゃう気がする。

「ローレン、クリスに怖い事を教えちゃだめよ」
「はい……」

母様に兄上が注意されたようだ。
母様は僕が怖がるって思ったのかな。

兄上はこちらの様子を気にしながら、黒ローブ達が乗った馬車を追っている魔道具の方に戻って行った。でも、チラチラとこちらにも目を向けていた。

「クリスも。危ない事はしないのよ」
「はあい」

僕も母様から注意された。僕は別に危ない事はしていないんだけどな。でも、母様は何だか難しい顔をしている。

「……この魔道具も、今クリスが何か改良をしようとしている魔道具も、他所の人には見せてはいけないわ。もしも悪い人に使われたら大変よ」
「この魔道具はダメだった?」
「ダメではないのよ……。今みたいに怪しい人を探るには、凄く役に立つと思うわ。でも逆に後をつけられる側になったりしたら、怖い道具だと思うの」
「うん……」

確かに。泉の場所とか内緒にしているのに跡をつけてこられたりしたら嫌だな。
元々、作った魔道具とか勝手に他の人に見せたりはしていないけど。

会話で実験が中断していたけど、まだ実験したいことがあった。
馬車を追いかけている魔道具に入力した位置情報を教えてもらって、手元の魔道具でも同じ位置情報を設定した。表示ボードに、馬車が映し出された。表示ボードに指を触れて馬車を大写しにした。

馬車の主な素材は木と金属だ。できれば魔獣の皮が良いけど、木材の部分に転写してみようかな。

木材の部分に狙いを定めようかと思ったけど、馬を繋いでいるハーネスの部分が皮っぽいことに気がついた。ハーネスを大写しにして、識別情報を転写した。揺れていて狙いが外れるかと思ったけど、うまく行ったようだ。識別情報を発出する魔法陣が浮かび上がった。



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