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第2章
第320話 目印をつける
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デインの街に入って行った馬車は、街の門からまっすぐ続く道を進んで行った。
広い道の両脇に灰色の石造りの建物が建ち並ぶ。
ジロス村は農村って感じだったけど、デインみたいなのは都市っていうのかな。規模が大きくて人が多い。脳裏の光景で見た場所に近い雰囲気だ。
馬車は途中で道を曲がり、少し狭い道で泊まった。看板に「空きあり」の表記。宿屋のようだ。
男達とネロ君が馬車から荷物を持って降りてくる。
馬車は止まったし、全員馬車の外に出たので識別情報をつけるチャンスだ。
手元の表示ボードの表示を大写しにして、識別情報を付与する場所を探す。
「ちょ、何してんだ?」
「識別情報を転写するんだよ。馬車降りちゃったらどこに行くか分からなくなっちゃうでしょ」
僕が黒ローブの一人を大写しにしたら、兄上が焦ったように言った。黒ローブ達は今はローブを脱いでいて、その中の一人の男性は無精髭の生えた割れた顎がはっきり写っている。
「痛いから人にはやらないんじゃなかったのか?」
「持ち物に付与すれば良いでしょ。鞄とか革鎧とか……」
顎が二つに割れた元黒ローブは今は革鎧を身につけている。冒険者っぽくしているのかな。馬車の荷台から大きい鞄を取り出していた。鞄の素材は皮を使っているみたいに見える。鞄か革鎧に狙いを定めようかなと思っていたら、兄上が言う。
「ああ……、重い鞄は宿に置いて行って持ち歩かないかもしれないぞ。革鎧も黒ローブ姿になったら身につけてないかも」
「え、じゃあ。どうしよう……」
「靴は? 嵩張るから替えを持ち歩かないかもしれないし」
「靴だね」
兄上に言われて、黒ローブの靴を大写しにして狙いを定めた。
識別情報の転写をしようとした瞬間、黒ローブの靴が何かに遮られた。
「あ」
何かと思ったら、鞄だ。ちょうど足元に置くタイミングだったらしい。
「鞄に付与しちゃった……。まあ、良いか。靴にも……」
早くしないと宿屋に入っちゃうので、すぐにやり直して靴に識別情報を付与した。
付与する識別情報は多めに準備しているから問題ない。迷うより早く済ませてしまおうと思って、もう一人の黒ローブの男の靴やら剣帯やらに転写した。こっちはモミアゲが濃い。ネロ君の靴にも転写する。
ピクンッ
識別情報を転写した途端、ネロ君が足をピクッと動かした。気づかれた?
ネロ君は足元を見つめ、識別情報を付与した方の靴を履いた足を持ち上げて足首を撫でた。
『おい!ネロ!モタモタするな』
『あ、はい』
ネロ君は靴の履き心地を確認するように爪先を地面にトントンと軽く叩きつけた。
大写しにしていた表示では、靴底が剥がれかけて踵が少し顔を出しているのが見えた。
ボロボロの靴だから、雷魔法の転写の衝撃が足に伝わっちゃったのかもしれない。
もしかして、この街で靴を買い換えちゃったりするかな……?
一応念の為、他の持ち物にも識別情報をけておこう。革鎧の腰の辺りと、腰から下げている皮の水筒にも識別情報を転写しておいた。
広い道の両脇に灰色の石造りの建物が建ち並ぶ。
ジロス村は農村って感じだったけど、デインみたいなのは都市っていうのかな。規模が大きくて人が多い。脳裏の光景で見た場所に近い雰囲気だ。
馬車は途中で道を曲がり、少し狭い道で泊まった。看板に「空きあり」の表記。宿屋のようだ。
男達とネロ君が馬車から荷物を持って降りてくる。
馬車は止まったし、全員馬車の外に出たので識別情報をつけるチャンスだ。
手元の表示ボードの表示を大写しにして、識別情報を付与する場所を探す。
「ちょ、何してんだ?」
「識別情報を転写するんだよ。馬車降りちゃったらどこに行くか分からなくなっちゃうでしょ」
僕が黒ローブの一人を大写しにしたら、兄上が焦ったように言った。黒ローブ達は今はローブを脱いでいて、その中の一人の男性は無精髭の生えた割れた顎がはっきり写っている。
「痛いから人にはやらないんじゃなかったのか?」
「持ち物に付与すれば良いでしょ。鞄とか革鎧とか……」
顎が二つに割れた元黒ローブは今は革鎧を身につけている。冒険者っぽくしているのかな。馬車の荷台から大きい鞄を取り出していた。鞄の素材は皮を使っているみたいに見える。鞄か革鎧に狙いを定めようかなと思っていたら、兄上が言う。
「ああ……、重い鞄は宿に置いて行って持ち歩かないかもしれないぞ。革鎧も黒ローブ姿になったら身につけてないかも」
「え、じゃあ。どうしよう……」
「靴は? 嵩張るから替えを持ち歩かないかもしれないし」
「靴だね」
兄上に言われて、黒ローブの靴を大写しにして狙いを定めた。
識別情報の転写をしようとした瞬間、黒ローブの靴が何かに遮られた。
「あ」
何かと思ったら、鞄だ。ちょうど足元に置くタイミングだったらしい。
「鞄に付与しちゃった……。まあ、良いか。靴にも……」
早くしないと宿屋に入っちゃうので、すぐにやり直して靴に識別情報を付与した。
付与する識別情報は多めに準備しているから問題ない。迷うより早く済ませてしまおうと思って、もう一人の黒ローブの男の靴やら剣帯やらに転写した。こっちはモミアゲが濃い。ネロ君の靴にも転写する。
ピクンッ
識別情報を転写した途端、ネロ君が足をピクッと動かした。気づかれた?
ネロ君は足元を見つめ、識別情報を付与した方の靴を履いた足を持ち上げて足首を撫でた。
『おい!ネロ!モタモタするな』
『あ、はい』
ネロ君は靴の履き心地を確認するように爪先を地面にトントンと軽く叩きつけた。
大写しにしていた表示では、靴底が剥がれかけて踵が少し顔を出しているのが見えた。
ボロボロの靴だから、雷魔法の転写の衝撃が足に伝わっちゃったのかもしれない。
もしかして、この街で靴を買い換えちゃったりするかな……?
一応念の為、他の持ち物にも識別情報をけておこう。革鎧の腰の辺りと、腰から下げている皮の水筒にも識別情報を転写しておいた。
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