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第2章
第319話 馬車が街に着く
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母様は、「お話」の魔道具を使って誰かと話していたらしく、口元に腕輪を寄せていた手を下ろしてからこちらを見た。
「馬車の行方はこちらでも見ているから、ローレンはクリスを手伝ってあげなさい。いい? 危険なことはしないように気をつけてね」
「あ、はい……」
「馬車がデインに向かっているようだとは、今連絡したわ」
母様が連絡した先は父上だったみたいだ。まあ、「お話」の魔道具を持っている人が限られているんだけど。
「誰かがデインに向かうってこと?」
「情報共有しただけよ。そもそも、デインが目的地かどうかも分からないでしょう」
黒ローブ達を捕まえる為に、父上が誰かをデインに向かわせるのかと思ったけど、そんな話でもないらしい。
確かにアジトに到着したとかでもないんだよね。
馬車がデインに到着するのか、それとも他のところに向かうのか分からないけど、馬車の行方は母様が見ていてくれることになって、僕と兄上はデインに近い場所の集落の地名を確認することになった。
メイリも地名確認に興味があるのか、こちらの近くに寄ってきた。
「もし、馬車がデインに寄らないとしたら……、こっちかな?」
表示ボードを拡大表示にして、デイン近くの集落の位置を確認する。
「大きめの集落の名前を確認しておけば、間の村とかでも『デインとどこそこの間』って伝えやすいんじゃないか?」
「ああ、そうかも」
馬車がアジトだかどこかの集落だかに留まっている時に、誰かに向かってもらうとしたらという前提で黒ローブ達の居場所を伝えやすい方法を考える。
僕は集落の大小に関わらず、近い場所から村や町の名前を確認しようと思ってたけど、兄上は大きめの街から確認すれば良いって言う。
デインの街とかは入り口の旗を見ただけで街の名前がわかったし、アンソラの大きめの街とかは門に地名が書かれた旗があるなら確認も早そうだ。
最終的には村の名前とかも把握しておきたいけど、住民の会話を聞いても地名を言わなかったら時間がかかっちゃいそうだ。
兄上が言うように大きい集落から地名を確認する方が効率が良さそうだ。
「流石兄上」
「いや……。ゲンティアナから、アンソラの村の住民の会話を聞いて地名を確認するとか、その発想の方が驚きなんだが……。そんなこと出来るとか、絶対誰にも言うなよ?」
「言わないけど? 改良した魔道具も他の人に見せないって言われたし」
「……わかってるのか?こんなこと出来るとか誰かに知られたら、大変なんだぞ」
「うん……。王都に連れて行かれちゃうんでしょ?」
「そうだぞ。それか、強欲な高位に誘拐されて、閉じ込めれられてずっと魔道具を作らされるとか」
「怖!」
辺境伯様が、やたらとブローチを欲しがったりしたけど、あんな風にちょっと欲しいなって思ったら「クレ」って言っちゃう高位貴族の人とかが他にもいるんだと思う。欲しければ作ったり買ったりすれば良いんだろうけどね。
治癒玉が売られているのに、治癒のブローチ欲しがったりとか、するからなぁ。
兄上と話をしながら何箇所かの地名を確認していたら、父上が部屋に戻ってきた。
壁に表示されている「動く写し絵」と「位置表示」を無表情に見回した後、目を細めた。
「もはや監視室じゃないか……」
「父上、地名を表示してみたんです!」
「うむ……」
僕が声をかけると、父上は位置表示」の魔道具が表示している壁に目を向けて、小さく頷いた。兄上も「位置表示」の魔道具の表示を見て慌てたように言う。
「あ!馬車がデインに着くところ?」
馬車の位置を示している点が「デイン」と表記された集落に接近していた。四分割している表示では、馬車は街の門の前に近づいていた。
門の前には他に街を訪れる馬車などはいなくて、すぐに門番が対応していた。
「あれ?ネロ君じゃない」
「ちょっと前に交代してたわ」
御者席から門番に何か証明書みたいなものを見せているのは、黒ローブの大人のうちの一人だ。
「ネロくんに何かあったの?」
「いいえ。あの子はずっと顔色は良くなかったけれど、倒れたりしたわけでもなかったわ。大人の方が手続きがスムーズだと思ったんじゃないかしら」
「そうなんだ……」
大人が手続きをした方がスムーズと言うのは本当だったのかもしれない。
馬車は手続きにあまり時間をかけることなく街の門の中に入っていった。
「馬車の行方はこちらでも見ているから、ローレンはクリスを手伝ってあげなさい。いい? 危険なことはしないように気をつけてね」
「あ、はい……」
「馬車がデインに向かっているようだとは、今連絡したわ」
母様が連絡した先は父上だったみたいだ。まあ、「お話」の魔道具を持っている人が限られているんだけど。
「誰かがデインに向かうってこと?」
「情報共有しただけよ。そもそも、デインが目的地かどうかも分からないでしょう」
黒ローブ達を捕まえる為に、父上が誰かをデインに向かわせるのかと思ったけど、そんな話でもないらしい。
確かにアジトに到着したとかでもないんだよね。
馬車がデインに到着するのか、それとも他のところに向かうのか分からないけど、馬車の行方は母様が見ていてくれることになって、僕と兄上はデインに近い場所の集落の地名を確認することになった。
メイリも地名確認に興味があるのか、こちらの近くに寄ってきた。
「もし、馬車がデインに寄らないとしたら……、こっちかな?」
表示ボードを拡大表示にして、デイン近くの集落の位置を確認する。
「大きめの集落の名前を確認しておけば、間の村とかでも『デインとどこそこの間』って伝えやすいんじゃないか?」
「ああ、そうかも」
馬車がアジトだかどこかの集落だかに留まっている時に、誰かに向かってもらうとしたらという前提で黒ローブ達の居場所を伝えやすい方法を考える。
僕は集落の大小に関わらず、近い場所から村や町の名前を確認しようと思ってたけど、兄上は大きめの街から確認すれば良いって言う。
デインの街とかは入り口の旗を見ただけで街の名前がわかったし、アンソラの大きめの街とかは門に地名が書かれた旗があるなら確認も早そうだ。
最終的には村の名前とかも把握しておきたいけど、住民の会話を聞いても地名を言わなかったら時間がかかっちゃいそうだ。
兄上が言うように大きい集落から地名を確認する方が効率が良さそうだ。
「流石兄上」
「いや……。ゲンティアナから、アンソラの村の住民の会話を聞いて地名を確認するとか、その発想の方が驚きなんだが……。そんなこと出来るとか、絶対誰にも言うなよ?」
「言わないけど? 改良した魔道具も他の人に見せないって言われたし」
「……わかってるのか?こんなこと出来るとか誰かに知られたら、大変なんだぞ」
「うん……。王都に連れて行かれちゃうんでしょ?」
「そうだぞ。それか、強欲な高位に誘拐されて、閉じ込めれられてずっと魔道具を作らされるとか」
「怖!」
辺境伯様が、やたらとブローチを欲しがったりしたけど、あんな風にちょっと欲しいなって思ったら「クレ」って言っちゃう高位貴族の人とかが他にもいるんだと思う。欲しければ作ったり買ったりすれば良いんだろうけどね。
治癒玉が売られているのに、治癒のブローチ欲しがったりとか、するからなぁ。
兄上と話をしながら何箇所かの地名を確認していたら、父上が部屋に戻ってきた。
壁に表示されている「動く写し絵」と「位置表示」を無表情に見回した後、目を細めた。
「もはや監視室じゃないか……」
「父上、地名を表示してみたんです!」
「うむ……」
僕が声をかけると、父上は位置表示」の魔道具が表示している壁に目を向けて、小さく頷いた。兄上も「位置表示」の魔道具の表示を見て慌てたように言う。
「あ!馬車がデインに着くところ?」
馬車の位置を示している点が「デイン」と表記された集落に接近していた。四分割している表示では、馬車は街の門の前に近づいていた。
門の前には他に街を訪れる馬車などはいなくて、すぐに門番が対応していた。
「あれ?ネロ君じゃない」
「ちょっと前に交代してたわ」
御者席から門番に何か証明書みたいなものを見せているのは、黒ローブの大人のうちの一人だ。
「ネロくんに何かあったの?」
「いいえ。あの子はずっと顔色は良くなかったけれど、倒れたりしたわけでもなかったわ。大人の方が手続きがスムーズだと思ったんじゃないかしら」
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馬車は手続きにあまり時間をかけることなく街の門の中に入っていった。
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