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第2章
第331話 黒ローブの身柄
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『捕まえたぞ!こっちだ!』
黒ローブ達が拘束された後、大声が飛び交ってバタバタと騒がしくなった。
少しして、姿を現したのは青いマントを身につけた騎士達だった。
『……情報通りの者達がおったのか……』
『アンジャン小隊長殿。ご協力感謝する。お伝えしていた通り、この者達は、ゲンティアナに連行したい』
『その件だが……、まだ、領主様からの承諾が取れておらぬゆえ……』
『許可できぬと?』
騎士同士で何か剣呑な様子になってきた。よく見ると、青い騎士服の人と深緑色の騎士服の人達がいる。服緑色の騎士服は見たことがあるから、ゲンティアナの騎士だと思う。
青い騎士服がアンソラ男爵領の騎士のようだ。
黒ローブ達の身柄を巡って揉めているのかな。黙って様子を眺めていた父上が、長椅子から立ち上がって、部屋の外に出ていった。
「監視室」となった部屋の扉が閉まったを見ていた兄上がボソリと言う。
「……何か指示を出しに行ったんだと思うけど……、魔鷹便だよなぁ……。魔道具、早く普及させたいよな」
「現地の騎士達が『お話』の魔道具を持ってないから?」
「うん。魔鷹も結構速いんだろうけど、連絡したい当人のところに飛ぶわけでもないから、伝言になるんだろうし。やっぱり連絡を取るのに、それなりに時間はかかっちゃうだろう。今、まさに揉めてるって時なのにさ」
「今、連絡、取れたほうが良い?」
何か方法を考えようとしたら、兄上が制止するように僕の前に手を突き出してきた。
「いや、魔道具の存在を知られる方がリスクが高いからね!考えなくて良いから!」
「……リスクかぁ……」
「追跡魔道具四号君」で現地の音を収集して来れるなら、こちらの声も届けられないかなと考えてたら
兄上は僕の考えが読めていたかのように止めた。
確かに、魔道具が他の人に知られるのは気をつけないといけないって言われているし、突然、どこからか声が聞こえてきたら、皆びっくりして転んじゃったりするかもしれない。
「心配しなくても大丈夫よ。悪い人を捕まえる、という目的は果たしたんだし、今は無理に身柄を確保しなくても良いと思うわ」
母様は、穏やかな口調で言って、お茶のカップを手にした。
兄上は、ちょっと納得がいかないような様子で首を傾げた。
「……でも身柄がアンソラ男爵領だと尋問とかできないんじゃない?」
「領都にまで毒の被害にあったのは、アンソラ男爵領なのだから、真相を知りたい気持ちは彼方だって強いはずよ。
強引に身柄の要求をしたりしていると、こちらが何か隠したいことがあるのかと疑われてしまうかもしれないわ」
「え!!」
兄上はギョッと目を見開いた後、顎を指先で撫でて目を細めた。
「それって……、ゲンティアナが黒幕みたいに思われるってこと?」
「え!?」
兄上の言葉に僕はビックリしてしまった。ゲンティアナが黒幕!?何で?
僕の戸惑いを察したかのように、兄上は少し眉を上げて僕の方に目線を向けた。
「……ゲンティアナは、今のところ、そんなに被害にあったわけでもないだろ。それなのに黒ローブの居場所とか妙に良く知ってたりとかしたら、怪しいって思われるかもしれないだろ。その上、犯人を連れて行こうとしたら余計に……」
「でも、ゲンティアナだって、黒ローブに毒を流されたよ」
「……まあ、そうだね。黒ローブを一人捕まえているし、そこから情報を得たって話にはなるんだろうけどさ……。
でも、こうして、遠隔で情報を得ているなんて説明できないし、強引な態度に出て、疑われたくはないだろう?」
兄上は難しそうな顔をした。
黒ローブ達が拘束された後、大声が飛び交ってバタバタと騒がしくなった。
少しして、姿を現したのは青いマントを身につけた騎士達だった。
『……情報通りの者達がおったのか……』
『アンジャン小隊長殿。ご協力感謝する。お伝えしていた通り、この者達は、ゲンティアナに連行したい』
『その件だが……、まだ、領主様からの承諾が取れておらぬゆえ……』
『許可できぬと?』
騎士同士で何か剣呑な様子になってきた。よく見ると、青い騎士服の人と深緑色の騎士服の人達がいる。服緑色の騎士服は見たことがあるから、ゲンティアナの騎士だと思う。
青い騎士服がアンソラ男爵領の騎士のようだ。
黒ローブ達の身柄を巡って揉めているのかな。黙って様子を眺めていた父上が、長椅子から立ち上がって、部屋の外に出ていった。
「監視室」となった部屋の扉が閉まったを見ていた兄上がボソリと言う。
「……何か指示を出しに行ったんだと思うけど……、魔鷹便だよなぁ……。魔道具、早く普及させたいよな」
「現地の騎士達が『お話』の魔道具を持ってないから?」
「うん。魔鷹も結構速いんだろうけど、連絡したい当人のところに飛ぶわけでもないから、伝言になるんだろうし。やっぱり連絡を取るのに、それなりに時間はかかっちゃうだろう。今、まさに揉めてるって時なのにさ」
「今、連絡、取れたほうが良い?」
何か方法を考えようとしたら、兄上が制止するように僕の前に手を突き出してきた。
「いや、魔道具の存在を知られる方がリスクが高いからね!考えなくて良いから!」
「……リスクかぁ……」
「追跡魔道具四号君」で現地の音を収集して来れるなら、こちらの声も届けられないかなと考えてたら
兄上は僕の考えが読めていたかのように止めた。
確かに、魔道具が他の人に知られるのは気をつけないといけないって言われているし、突然、どこからか声が聞こえてきたら、皆びっくりして転んじゃったりするかもしれない。
「心配しなくても大丈夫よ。悪い人を捕まえる、という目的は果たしたんだし、今は無理に身柄を確保しなくても良いと思うわ」
母様は、穏やかな口調で言って、お茶のカップを手にした。
兄上は、ちょっと納得がいかないような様子で首を傾げた。
「……でも身柄がアンソラ男爵領だと尋問とかできないんじゃない?」
「領都にまで毒の被害にあったのは、アンソラ男爵領なのだから、真相を知りたい気持ちは彼方だって強いはずよ。
強引に身柄の要求をしたりしていると、こちらが何か隠したいことがあるのかと疑われてしまうかもしれないわ」
「え!!」
兄上はギョッと目を見開いた後、顎を指先で撫でて目を細めた。
「それって……、ゲンティアナが黒幕みたいに思われるってこと?」
「え!?」
兄上の言葉に僕はビックリしてしまった。ゲンティアナが黒幕!?何で?
僕の戸惑いを察したかのように、兄上は少し眉を上げて僕の方に目線を向けた。
「……ゲンティアナは、今のところ、そんなに被害にあったわけでもないだろ。それなのに黒ローブの居場所とか妙に良く知ってたりとかしたら、怪しいって思われるかもしれないだろ。その上、犯人を連れて行こうとしたら余計に……」
「でも、ゲンティアナだって、黒ローブに毒を流されたよ」
「……まあ、そうだね。黒ローブを一人捕まえているし、そこから情報を得たって話にはなるんだろうけどさ……。
でも、こうして、遠隔で情報を得ているなんて説明できないし、強引な態度に出て、疑われたくはないだろう?」
兄上は難しそうな顔をした。
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