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第1章
第12話 狩りのコツ
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「理由は二つありまして……。彼らが、角兎をどうやって仕留めているのかを聞こうと思ったのと……、
……仕留めた角兎を狙っている連中がいるようなので注意を促そうとしたんです。」
仕留めた角兎を狙っている連中って、僕が感じた「害意」を向けていた人達のことだよね。でも、角兎をどうやって仕留めたか、ってどういう意味?
「……あの……?どうやって仕留めたかって……。見てた、のでは……。」
疑問に思って思わず口を開いたけど、声がガサガサに掠れていて辿々しい喋り方になってしまった。
兄上は僕の喋り方には特に触れずに頷いて言った。
「そうですよ。見てたのならわかるんじゃないですか?」
兄上の口調がちょっと丁寧になった。レオノールさんは王宮騎士を名乗ったし、3人組も多分王宮騎士だと思ったからだと思う。
「いや、見てても良くわからなかったんだよ。そっちの兄ちゃんの方はぽんぽん岩の上を飛び回ってて身軽なんだろうなとは思ったけど、そっちのチビくんのおもちゃみたいな弓矢でも角兎を仕留めてただろう?」
あれ?何気に失礼なこと言われた?
「チビくん」って僕のことだよね?
弓矢だって、父上が僕の手のサイズに合わせて作ってくれた特別製なんだぞ。
「「……。」」
僕はなんて言い返そうか考えて黙ってしまったけど、兄上も同じ気持ちだったのか押し黙っていた。
レオノールさんが口を開いた。
「ちょっと言い方失礼よ。あなた達一匹も仕留めてないんじゃない。それで、この子達に教えを乞おうと思ったんなら、脅かしてどうするのよ。
……仕留めた獲物が狙われてるって言うのは、あの辺の連中も角兎を仕留められてないのね?」
レオノールさんはそういうと、岩場の奥の方に散らばっている冒険者達の居る方角にチラリと目を向けた。
「大体そうだと思いますよ。この子達だけがバンバン狩ってたから、あっちで話題になってたんで。」
灰色髪の人が言う。
他の人は角兎を上手く狩ることができなかったってこと?
角兎は冒険者ギルドでも依頼が出ているって聞くし、別に珍しい魔獣じゃないよね。
騎士の人達はもしかして、魔獣を狩るのは慣れていないのかな?でも、岩場にいる他の人達は?あの人達ももしかして騎士なの?
「ふっ。どうして出来ないの?って目で見られているわよ。」
レオノールさんが小さく吹き出して言った。そんなストレートに言わなくても!そんな見下したみたいな風に思ったわけじゃないし!
「そんな風には思ってませんよ。」
僕が否定する前に兄上が口を開いた。
「この岩場での狩りはコツがいるんだって、ベテラン冒険者の人に教わりました。」
「え?」
兄上の言葉にびっくりして聞き返したら、兄上がチラリと僕の方を見た。思わず口を挟んじゃった。兄上に任せておいた方が良いみたいだ。黙っていよう。
ベテラン冒険者っていうのは、ボブのことだと思う。兄上の方が先にボブに狩りを教わっていたからなぁ。僕が狩りを教わる前の頃に習ったのかな。
「コツッ……!そう!そのコツを聞きたいんだ!」
「教えませんよ。」
「え?」
コツがいると聞いて、3人組がパッと表情を明るくしたのに、兄上がピシャリと言う。3人組はびっくりした様子で目を大きく開けた。
フフ、とレオノールさんがまた笑う。
「そうね。狩りのコツなんて、ちょっと聞いて簡単に教えてもらえるようなものじゃないわ。」
「で、でも……。それでは……。」
「冒険者にとっては狩りで生計を立てているのだから、狩場のコツなんて重要な情報じゃない。聞かれたからってホイホイと他人に教えるわけないでしょ。
あなた達だって、通りすがりの人に剣術を教えてくれって言われたら、無条件で教えるのかしら?」
「た、確かに……、でも……角兎を狩ってこいと言われてまして……。どうしたものかと……。」
「誰に命令されたの?」
「……その、うちの小隊長に……。」
「どうせ、名物っていう角兎のジンジャーソテーが食べたいってだけでしょう。」
「お、お察しの通りです。」
「全く……。食べたいなら自分で狩れば良いじゃないの。というより、町の食堂で食べれるんじゃないの?」
「それが……角兎が品切れらしくて。……宿の方が優先されるそうで。」
「ああ……。」
レオノールさんは状況を察したように、ちょっと視線を上に動かした。どういう状況か僕は今ひとつわからない。宿屋で食べる分が優先されるってこと?
何かあるの?
……仕留めた角兎を狙っている連中がいるようなので注意を促そうとしたんです。」
仕留めた角兎を狙っている連中って、僕が感じた「害意」を向けていた人達のことだよね。でも、角兎をどうやって仕留めたか、ってどういう意味?
「……あの……?どうやって仕留めたかって……。見てた、のでは……。」
疑問に思って思わず口を開いたけど、声がガサガサに掠れていて辿々しい喋り方になってしまった。
兄上は僕の喋り方には特に触れずに頷いて言った。
「そうですよ。見てたのならわかるんじゃないですか?」
兄上の口調がちょっと丁寧になった。レオノールさんは王宮騎士を名乗ったし、3人組も多分王宮騎士だと思ったからだと思う。
「いや、見てても良くわからなかったんだよ。そっちの兄ちゃんの方はぽんぽん岩の上を飛び回ってて身軽なんだろうなとは思ったけど、そっちのチビくんのおもちゃみたいな弓矢でも角兎を仕留めてただろう?」
あれ?何気に失礼なこと言われた?
「チビくん」って僕のことだよね?
弓矢だって、父上が僕の手のサイズに合わせて作ってくれた特別製なんだぞ。
「「……。」」
僕はなんて言い返そうか考えて黙ってしまったけど、兄上も同じ気持ちだったのか押し黙っていた。
レオノールさんが口を開いた。
「ちょっと言い方失礼よ。あなた達一匹も仕留めてないんじゃない。それで、この子達に教えを乞おうと思ったんなら、脅かしてどうするのよ。
……仕留めた獲物が狙われてるって言うのは、あの辺の連中も角兎を仕留められてないのね?」
レオノールさんはそういうと、岩場の奥の方に散らばっている冒険者達の居る方角にチラリと目を向けた。
「大体そうだと思いますよ。この子達だけがバンバン狩ってたから、あっちで話題になってたんで。」
灰色髪の人が言う。
他の人は角兎を上手く狩ることができなかったってこと?
角兎は冒険者ギルドでも依頼が出ているって聞くし、別に珍しい魔獣じゃないよね。
騎士の人達はもしかして、魔獣を狩るのは慣れていないのかな?でも、岩場にいる他の人達は?あの人達ももしかして騎士なの?
「ふっ。どうして出来ないの?って目で見られているわよ。」
レオノールさんが小さく吹き出して言った。そんなストレートに言わなくても!そんな見下したみたいな風に思ったわけじゃないし!
「そんな風には思ってませんよ。」
僕が否定する前に兄上が口を開いた。
「この岩場での狩りはコツがいるんだって、ベテラン冒険者の人に教わりました。」
「え?」
兄上の言葉にびっくりして聞き返したら、兄上がチラリと僕の方を見た。思わず口を挟んじゃった。兄上に任せておいた方が良いみたいだ。黙っていよう。
ベテラン冒険者っていうのは、ボブのことだと思う。兄上の方が先にボブに狩りを教わっていたからなぁ。僕が狩りを教わる前の頃に習ったのかな。
「コツッ……!そう!そのコツを聞きたいんだ!」
「教えませんよ。」
「え?」
コツがいると聞いて、3人組がパッと表情を明るくしたのに、兄上がピシャリと言う。3人組はびっくりした様子で目を大きく開けた。
フフ、とレオノールさんがまた笑う。
「そうね。狩りのコツなんて、ちょっと聞いて簡単に教えてもらえるようなものじゃないわ。」
「で、でも……。それでは……。」
「冒険者にとっては狩りで生計を立てているのだから、狩場のコツなんて重要な情報じゃない。聞かれたからってホイホイと他人に教えるわけないでしょ。
あなた達だって、通りすがりの人に剣術を教えてくれって言われたら、無条件で教えるのかしら?」
「た、確かに……、でも……角兎を狩ってこいと言われてまして……。どうしたものかと……。」
「誰に命令されたの?」
「……その、うちの小隊長に……。」
「どうせ、名物っていう角兎のジンジャーソテーが食べたいってだけでしょう。」
「お、お察しの通りです。」
「全く……。食べたいなら自分で狩れば良いじゃないの。というより、町の食堂で食べれるんじゃないの?」
「それが……角兎が品切れらしくて。……宿の方が優先されるそうで。」
「ああ……。」
レオノールさんは状況を察したように、ちょっと視線を上に動かした。どういう状況か僕は今ひとつわからない。宿屋で食べる分が優先されるってこと?
何かあるの?
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