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第1章
第25話 夢の中の夢
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納得したのかメイリは顔を上げて、僕の方を見てニコリとした。
「続きがあったら、ミラたんが反省したり、令嬢と仲直りするかもしれないですね!」
「……その『ミラたん』とかって呼び方は何なの?『シェルたん』もだけど。友達だってそんな風には呼ばないんじゃない?」
メイリの元気がちょっと戻ってきたところで、先ほどから疑問に思っていたことを聞いた。
メイリの夢の中での話だけど、あまりにも気安い感じがして。
「そうなの。不思議な夢なの。夢の中の人達は別に『ミラたん』とかって呼び合っている訳じゃなくて。夢の中で夢の中を見ている人達がいるの。
その人達が、そう呼んでたの。」
「いきなり訳わからなくなったぞ?夢の中で夢の中?」
「うん。夢の中でみんなで絵本を読んでいるみたいな感じだったの。王子様達は夢の中の絵本のお話でそれを見ている私達、私とお友達が、絵本の中の人達の事を呼んでいる呼び名がそうだったの。」
「僕とメイリが一緒に絵本を読んでいるのを夢で見ているみたいな感じ?」
「そう。だけどもっと沢山の人が見てたの。」
「メイリと一緒に見ていた沢山の人は絵に描かなくて良いの?」
「顔とか覚えてないんだもの。」
「そっか……。」
良くわからないけど、まあ、夢の中の話だからなぁ。
僕は洗った筆を布で拭いて、少し大きめの板を横目に見た。
「全員が揃った絵はどうする?描く?」
夢に見たことが素敵な物語だと思ってたのに、ちょっと違うかもって思ったんなら、夢の登場人物が揃う絵は別に見たくないかもしれない。
そう思って訊くとメイリはちょっと考え込んだ。
「今は……。良いかな……。ありがとう、クリス兄様。兄様の絵は本当に素敵!」
「それは良かった。」
フォローでも褒めてくれるのは嬉しい。希望していた5人が並んだ絵は、描かなくて良くなったので、思いついた絵を描く。
パレットに絵の具がまだ残っていたからね。
描くのは水色のふわふわ髪の少女とハロルド君をイメージしたインテリメガネ。
最初に思い浮かんだ場面では、水色の髪の女の子は病床に伏せっている感じで元気がなくて、インテリメガネも悲しそうな様子だったんだ。
物悲しい感じだったから、明るく笑っているような場面を描きたくなった。
ふんわり微笑む水色の髪の少女と、少女を見つめて優しく笑うインテリメガネ。いや、笑うとインテリっぽさは薄れるなぁ。笑うメガネ。いや、その呼び名は変かな。
「あ!思い出の妹ですね!」
「思い出?」
僕が描いた絵を覗き込んでメイリが言う。まるで知っていたかのように言う。
「ハル様には、幼くして亡くなった妹がいたんです!」
「そうなのか……。亡くなっちゃうのは悲しいなぁ。」
メイリは夢で見たと言うより、夢の中のイメージと結びつけて思いついたことを言っているんだと思うけど、
最初に思い浮かんだ時に病床に伏せっている姿だったから、亡くなってしまうと言うことがリアルに感じてしまって悲しくなる。
ーーーラミルは魔力欠乏症で、治療の為に治癒士を探し回った。頭を下げて何人もの治癒師に遠くから来てもらったリモした。……だけど、ダメだった。
急に思い浮かんだ台詞。それを言っているのはインテリメガネ。
メガネの奥の瞳が悲しげに諦めたような色を纏う。
なんでそんな場面を思い浮かべるんだろう。
魔力欠乏症って具体的な病名が浮かんできた。僕はメイリみたいに夜中に夢を見た覚えがなかったけど、夢を見た事を朝起きた時に忘れてたのを思い出したのかな。
ーーーあなたは、妹さんの分まで幸せにならないと!家の為にばかり頑張るのは少し休んで、たまには自由にしてみたらどうかしら。
ピンク髪の令嬢が両手を顔の前で組んで、上目遣いに言う。その令嬢を見つめるインテリメガネの緑色の瞳が揺れる。
ーーーさあ!町にでも行きましょう!串焼きって食べたことあるかしら。
ーーー串焼き?何だそれは。
ーーーお肉を串で刺して焼いたものよ。お皿を使わないでそのまま食べるのよ。
ーーーはあ?皿を使わないって、どうやって……。
ーーーうふふ、きっとびっくりするわ。
ピンク色の髪の令嬢とインテリメガネが手を取り合って町に向かっていく。なんだこのイメージと陳腐な会話。串焼きなんて当たり前に食べるぞ。
思い浮かんだその場面をここで描こうかと思ったけど、手を止めた。その場面は水色の髪の少女が亡くなった後の話だ。何となく描きたくない。夢、というか妄想の世界の話だけど。
でも、忘れてしまうにはインパクトが強い。後で気持ちが向いた時に描こうかな。
「続きがあったら、ミラたんが反省したり、令嬢と仲直りするかもしれないですね!」
「……その『ミラたん』とかって呼び方は何なの?『シェルたん』もだけど。友達だってそんな風には呼ばないんじゃない?」
メイリの元気がちょっと戻ってきたところで、先ほどから疑問に思っていたことを聞いた。
メイリの夢の中での話だけど、あまりにも気安い感じがして。
「そうなの。不思議な夢なの。夢の中の人達は別に『ミラたん』とかって呼び合っている訳じゃなくて。夢の中で夢の中を見ている人達がいるの。
その人達が、そう呼んでたの。」
「いきなり訳わからなくなったぞ?夢の中で夢の中?」
「うん。夢の中でみんなで絵本を読んでいるみたいな感じだったの。王子様達は夢の中の絵本のお話でそれを見ている私達、私とお友達が、絵本の中の人達の事を呼んでいる呼び名がそうだったの。」
「僕とメイリが一緒に絵本を読んでいるのを夢で見ているみたいな感じ?」
「そう。だけどもっと沢山の人が見てたの。」
「メイリと一緒に見ていた沢山の人は絵に描かなくて良いの?」
「顔とか覚えてないんだもの。」
「そっか……。」
良くわからないけど、まあ、夢の中の話だからなぁ。
僕は洗った筆を布で拭いて、少し大きめの板を横目に見た。
「全員が揃った絵はどうする?描く?」
夢に見たことが素敵な物語だと思ってたのに、ちょっと違うかもって思ったんなら、夢の登場人物が揃う絵は別に見たくないかもしれない。
そう思って訊くとメイリはちょっと考え込んだ。
「今は……。良いかな……。ありがとう、クリス兄様。兄様の絵は本当に素敵!」
「それは良かった。」
フォローでも褒めてくれるのは嬉しい。希望していた5人が並んだ絵は、描かなくて良くなったので、思いついた絵を描く。
パレットに絵の具がまだ残っていたからね。
描くのは水色のふわふわ髪の少女とハロルド君をイメージしたインテリメガネ。
最初に思い浮かんだ場面では、水色の髪の女の子は病床に伏せっている感じで元気がなくて、インテリメガネも悲しそうな様子だったんだ。
物悲しい感じだったから、明るく笑っているような場面を描きたくなった。
ふんわり微笑む水色の髪の少女と、少女を見つめて優しく笑うインテリメガネ。いや、笑うとインテリっぽさは薄れるなぁ。笑うメガネ。いや、その呼び名は変かな。
「あ!思い出の妹ですね!」
「思い出?」
僕が描いた絵を覗き込んでメイリが言う。まるで知っていたかのように言う。
「ハル様には、幼くして亡くなった妹がいたんです!」
「そうなのか……。亡くなっちゃうのは悲しいなぁ。」
メイリは夢で見たと言うより、夢の中のイメージと結びつけて思いついたことを言っているんだと思うけど、
最初に思い浮かんだ時に病床に伏せっている姿だったから、亡くなってしまうと言うことがリアルに感じてしまって悲しくなる。
ーーーラミルは魔力欠乏症で、治療の為に治癒士を探し回った。頭を下げて何人もの治癒師に遠くから来てもらったリモした。……だけど、ダメだった。
急に思い浮かんだ台詞。それを言っているのはインテリメガネ。
メガネの奥の瞳が悲しげに諦めたような色を纏う。
なんでそんな場面を思い浮かべるんだろう。
魔力欠乏症って具体的な病名が浮かんできた。僕はメイリみたいに夜中に夢を見た覚えがなかったけど、夢を見た事を朝起きた時に忘れてたのを思い出したのかな。
ーーーあなたは、妹さんの分まで幸せにならないと!家の為にばかり頑張るのは少し休んで、たまには自由にしてみたらどうかしら。
ピンク髪の令嬢が両手を顔の前で組んで、上目遣いに言う。その令嬢を見つめるインテリメガネの緑色の瞳が揺れる。
ーーーさあ!町にでも行きましょう!串焼きって食べたことあるかしら。
ーーー串焼き?何だそれは。
ーーーお肉を串で刺して焼いたものよ。お皿を使わないでそのまま食べるのよ。
ーーーはあ?皿を使わないって、どうやって……。
ーーーうふふ、きっとびっくりするわ。
ピンク色の髪の令嬢とインテリメガネが手を取り合って町に向かっていく。なんだこのイメージと陳腐な会話。串焼きなんて当たり前に食べるぞ。
思い浮かんだその場面をここで描こうかと思ったけど、手を止めた。その場面は水色の髪の少女が亡くなった後の話だ。何となく描きたくない。夢、というか妄想の世界の話だけど。
でも、忘れてしまうにはインパクトが強い。後で気持ちが向いた時に描こうかな。
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