転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第24話 夢のイメージ

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「メイリ、ここまでイメージと違うとかはない?」
「バッチリイメージ通りです!びっくりです!流石クリス兄様!さすクリ!」
「さすクリはちょっと嫌だな……。えーと次は蜂蜜色の髪の令嬢を描こうか。」
「はい!お願いします!うふふ……。」

蜂蜜色の髪の令嬢のイメージは、ふわふわ綿菓子みたいな髪の大人しい令嬢だ。
おっとりしていてちょっと気弱な感じ。ドレスはシンプルだけど、胸元に赤のブローチがワンポイント。

「クリス兄様、よく分かってらっしゃいますね!」
「え?何が?」
「リリ嬢らしい薄幸な雰囲気!ちょっと赤が浮いた感じなのも良き!」
「リリ嬢?赤、浮いてる?」

一番細い筆で赤いブローチを仕上げていた手を止めると、メイリは「ああ。」と声を上げた。

「それでイメージ通りですから!ピンク髪の令嬢もお願いします!」
「ピンクか……。ちょっと色を作らないと……。ドレスの色はどうする?」

赤キノコの粉の色材を水で薄めてみたけれど、しっくりこなかったので白い石をちょっと削って擦り潰して混ぜ、ピンクの色を作る。
メイリは僕の手元をフムフムと頷きながら眺めた後、パレットに残っている絵の具をチョイチョイと指差した。

「あ、……青と緑の色のドレスにしてください。……それと赤もどこかに入れて欲しいです!」

僕は指定があったドレスの完成形を想像してちょっと首を捻る。

「その色合いってちょっとゴテゴテしてない?」

緑と赤だけでも、冬のイベントみたいな……、冬のイベント……、赤と緑の組み合わせが浮かんだ後、なぜか赤と白の色合いも
思い浮かんだ。何のイベントかよくわからないけど。

「そうかも!うーん、でも色はあったはずなんだけど……。……じゃあ、クリス兄様にお任せします!」
「ええ……。」

メイリは明確なドレスのイメージがある訳じゃなかったらしい。丸投げされてもなぁ。
リクエスト通り、赤と緑と青を入れてやる。白がメインで青と緑がグラデーションでちょっと入る感じ。
赤はほんの少しアクセントで入れておく。

「なんかカジュアルになっちゃったな。」
元々、ピンク令嬢は可愛い感じで描いたので、全体のバランスは悪くないけど
令嬢というより、元気いっぱいな明るい女子って感じだ。

「イメージ合ってます!ミラたんは明るくてちょっと浮いている感じ!」
「浮いてるんだ?」
「ミラたんは子供の頃、平民として育つの。後から貴族のお父上に引き取られるのよ。」
「……複雑なんだね。」
「はあぁ。昨日の夜に夢に見たイメージにピッタリです!」

「メイリの夢の中でどんな話になっていたんだ?」
「うふふ。このピンクの髪のミラたんがね、王子様や令息と仲良くなるのよ。
それで、婚約者の令嬢達がヤキモチを焼いて意地悪をするの。」
「え?婚約者って、将来父上や母様みたいに結婚するって約束することだよね?
約束しているのに、他の人と仲良くしちゃうの?それって良くないんじゃないの?」

「あっ……。それもそうですね……。」
僕が疑問に思ったことを口にすると、メイリはハッとした様子で少し考えるように首を傾けた。
そしてボソボソと呟くように言う。

「ミラたんは平民の中で育ったから、貴族のルールはわからないのだから、それで良いって思ったけど……。
それっていけないことかも……。あれ?でもそれだとお話が……。うーん……。」

今にも頭を抱え出しそうなメイリに僕は言う。

「まあ、そういう夢だったってことだよね。」
「そう…、なのだけど……、素敵なお話って思ったのに……。」
「夢に見ただけでしょ。何か困るの?」
「だって……、何だか、ミラたんが悪い子だったのかなって……。」

落ち込んだ様子で俯くメイリ。薄茶色の手触りが良さそうな髪を撫でてやりたいけど、手が絵の具で汚れてる。

「悪い子、かはわからないけどさ。まあ、夢でしょう?仕方ないじゃん。」
「そうですね……。」
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