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第1章
第36話 的の確認
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吹っ飛んだ的の所に駆けて行った兄上が、身を屈めて土台部分を凝視しながら言う。
「ああ、これは土台を作り直さないとダメだな。」
「土台玉持ってくる?」
「一通り確認してからにしよう。」
土台玉は土魔石に魔法陣を描いたものだ。的の土台を形成できるように調整した魔法陣が描きこまれている。
便利だけど、一から土台を作るのも、微妙に的がぐらつくのを治すのも同じように魔石を一個消費する。だから普段はグラグラする程度だと直さないんだ。
でも、今日は全部直すのかもしれない。
次の的にも矢を当てる。矢が当たると的がちょっと揺れたけどセーフ?
ひとまず次の的を狙う。
「風刃も当ててみる?」
「良いけど、縦で行けよ。」
「縦?」
首を傾げると、兄上が片手を上下に振った。ああ、風刃の向きか。
兄上に言われた通りに、的を下から上に切り裂くように風刃を飛ばした。スパンっと的方てに切り裂かれて的の半分が飛んだ。
「縦になったよ。」
「横だったら的が全部吹っ飛んでたかもな。」
「ああ、そういうことか……。」
棒に平たい板を打ちつけて、板の中心から円を何重にも描いている。的は手作りだ。
作り手は僕や兄上も作るしボブも作るけど。風刃を横に切り裂くように飛ばしたら、せっかく作った的が沢山ダメになるところだった。
「風刃使わない方が良かったね。的が一個ダメになった。」
「当たった時の状態を見たかったし、上達したかはちょっと見ておきたかったから一つくらいは良いんだ。」
「狩りでいつも見てるでしょう?」
「狙い通りに正確かどうかは、的の方がわかりやすいだろ。」
兄上は的が飛んだところまで駆けていって、僕が風刃で斬った的を手にして戻ってきた。的は中央部分をちゃんと通過して、少しだけ斜めに縦方向に切り裂かれていた。
「真ん中通ってる!」
「うん。合格だ。」
「試験なの?」
「客人に手本で見せられる。」
「ええ……。」
兄上がニヤリと笑う。弓と魔法での的当ての見本を僕が見せることに決めたらしい。
僕がちょっと嫌そうな顔をしたからか、兄上がクックと笑った。
「ここでの使い方をちょっとデモンストレーションする程度だよ。元々自分の家で訓練はしているんだろうし。
弓や魔法を教えたりする必要はないと思う。」
「凄い威力の魔法を使う人が僕の魔法を見てしょぼいとか思わないかな。」
「凄い威力で隣の的まで壊さないようにしてもらいたいから、見本を見せておきたいわけさ。」
的が沢山並んでいたら全部に当てちゃいたくなるかもしれないよね。
それなら、魔法を当てるときはこんな風にしてねって指し示すのは必要かもしれないね。
とりあえず、並べた的を一通り確認して、土台の修理が必要なところだけを土台玉で直した。土台玉を使いながら、浮かび上がった魔法陣をじっと眺める。土台玉は買ってきたものだけど魔法陣はよく見るとあまり複雑じゃないから僕でも描けそうな気がする。
もっと小さい土魔石に描いて、ちょっとぐらついた程度の時の修復用に用意しても良いかもしれないなぁ。
的の土台を修復して、的の在庫を確認。
「後は……、木剣?」
「ああ。すぐ折れそうなのは避けたいからチェックして。」
「はあい。」
訓練場の端に置いてある木剣を僕が一つ一つチェックしている間に、兄上は盾をチェックしている。
「弓も?」
「弓はクリスがさっき試した奴を出しておけば良いよ。後は槍も一応確認するか。」
僕が的を弓で射る時に、色々な弓を渡されたんだけど、弓のチェックを兼ねていたらしい。
「槍は一応なの?」
「剣を使うタイプな気がするんだよな。殿下もハロルド様も。」
「そうなんだね。」
そんな話をしていたら、訓練場の入り口の方からギイッとと音がした。扉が開け離れていて、入り口に立っている男性のシルエットが見えた。
「ああ、これは土台を作り直さないとダメだな。」
「土台玉持ってくる?」
「一通り確認してからにしよう。」
土台玉は土魔石に魔法陣を描いたものだ。的の土台を形成できるように調整した魔法陣が描きこまれている。
便利だけど、一から土台を作るのも、微妙に的がぐらつくのを治すのも同じように魔石を一個消費する。だから普段はグラグラする程度だと直さないんだ。
でも、今日は全部直すのかもしれない。
次の的にも矢を当てる。矢が当たると的がちょっと揺れたけどセーフ?
ひとまず次の的を狙う。
「風刃も当ててみる?」
「良いけど、縦で行けよ。」
「縦?」
首を傾げると、兄上が片手を上下に振った。ああ、風刃の向きか。
兄上に言われた通りに、的を下から上に切り裂くように風刃を飛ばした。スパンっと的方てに切り裂かれて的の半分が飛んだ。
「縦になったよ。」
「横だったら的が全部吹っ飛んでたかもな。」
「ああ、そういうことか……。」
棒に平たい板を打ちつけて、板の中心から円を何重にも描いている。的は手作りだ。
作り手は僕や兄上も作るしボブも作るけど。風刃を横に切り裂くように飛ばしたら、せっかく作った的が沢山ダメになるところだった。
「風刃使わない方が良かったね。的が一個ダメになった。」
「当たった時の状態を見たかったし、上達したかはちょっと見ておきたかったから一つくらいは良いんだ。」
「狩りでいつも見てるでしょう?」
「狙い通りに正確かどうかは、的の方がわかりやすいだろ。」
兄上は的が飛んだところまで駆けていって、僕が風刃で斬った的を手にして戻ってきた。的は中央部分をちゃんと通過して、少しだけ斜めに縦方向に切り裂かれていた。
「真ん中通ってる!」
「うん。合格だ。」
「試験なの?」
「客人に手本で見せられる。」
「ええ……。」
兄上がニヤリと笑う。弓と魔法での的当ての見本を僕が見せることに決めたらしい。
僕がちょっと嫌そうな顔をしたからか、兄上がクックと笑った。
「ここでの使い方をちょっとデモンストレーションする程度だよ。元々自分の家で訓練はしているんだろうし。
弓や魔法を教えたりする必要はないと思う。」
「凄い威力の魔法を使う人が僕の魔法を見てしょぼいとか思わないかな。」
「凄い威力で隣の的まで壊さないようにしてもらいたいから、見本を見せておきたいわけさ。」
的が沢山並んでいたら全部に当てちゃいたくなるかもしれないよね。
それなら、魔法を当てるときはこんな風にしてねって指し示すのは必要かもしれないね。
とりあえず、並べた的を一通り確認して、土台の修理が必要なところだけを土台玉で直した。土台玉を使いながら、浮かび上がった魔法陣をじっと眺める。土台玉は買ってきたものだけど魔法陣はよく見るとあまり複雑じゃないから僕でも描けそうな気がする。
もっと小さい土魔石に描いて、ちょっとぐらついた程度の時の修復用に用意しても良いかもしれないなぁ。
的の土台を修復して、的の在庫を確認。
「後は……、木剣?」
「ああ。すぐ折れそうなのは避けたいからチェックして。」
「はあい。」
訓練場の端に置いてある木剣を僕が一つ一つチェックしている間に、兄上は盾をチェックしている。
「弓も?」
「弓はクリスがさっき試した奴を出しておけば良いよ。後は槍も一応確認するか。」
僕が的を弓で射る時に、色々な弓を渡されたんだけど、弓のチェックを兼ねていたらしい。
「槍は一応なの?」
「剣を使うタイプな気がするんだよな。殿下もハロルド様も。」
「そうなんだね。」
そんな話をしていたら、訓練場の入り口の方からギイッとと音がした。扉が開け離れていて、入り口に立っている男性のシルエットが見えた。
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