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第1章
第70話 ズレ
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もう一つ気になったのは、殿下がレオノールさんを思い出している時の台詞だ。
ーーーあの頃、僕はマッドキャタピラ一匹倒すのも苦戦していて……。
ーーーえええ?ネイサン様にそんな頃があったんですか?
ーーーああ、後ろから跳ねてきたジャンピングラットにも気が付かなくて、レオンに助けられた。
登場した魔獣の名前は、マッドキャタピラーとかジャンピングラットだった。
今日、殿下が討伐に苦戦していたのはスライムであってマッドキャタピラーではなかった。
でも、魔獣討伐に苦戦していたと言う事と後ろから飛んできた魔獣からレオノールさんが助けたという出来事が、殿下の台詞と重なるんだよね。
……だけど、どうしてマッドキャタピラー?なんでスライムじゃないんだろう。
あの場面のネイサン殿下はレオノールさんが亡くなったと言う話をしていた。未来の話のようでいて、今日出来事とちょっと違う。
マッドキャタピラーを討伐する件は別で起きるとしても、過去を思い出して語る時にマッドキャタピラーのことは話題に出してスライム討伐の件は一言もないのは妙な気がする。
「マッドキャタピラーもスライムも」って話題に出すならわかるんだけど。スライムに苦戦した話は言いたくなかった?でも、マッドキャタピラーも、動きが鈍い魔獣だし討伐難易度はスライムと大差ない気がするんだ。
完全に僕の妄想の話だったら、殿下の回想シーンで語るのはスライム討伐の話になるでしょう?
何だかその微妙な「ズレ」がちょっとモヤモヤする。
……僕は……イメージした光景が悲しい出来事なら、実際に起きなければ良いと思う。それならいくら「ズレ」が発生したって良いんだよね!
だから、レオノールさんに「呪いの毒」の解毒剤を渡したい。
リネリア嬢のお母上が亡くなってその後に意地悪な継母や欲しがり妹がやってくるというのなら、リネリア嬢のお母上の事故自体が起きないでほしいと思う。
僕が見た光景が未来だっとして、起きてほしくないことを回避したら、未来が変わって、僕が見た光景は未来じゃなくなるんじゃないかな。
未来のことではあるだけど、悲しい出来事を回避することはできる、と思いたいのかもしれない。
どこかの地点で見た未来であるというだけ。
現時点から何か未来を回避するような行動を起こしたら、変わりうる未来だと……。
マッドキャタピラーの話は、もしかして「ある時点での起こりうる未来」だったのかもしれない。
それが「スライム」に変わったのは何故だろう。
兄上が「スライム河原」に案内したから?兄上が未来を変えた?
だけど、マッドキャタピラー狩りの場所なんて思いつかない。
マッドキャタピラーがゲンティアナ男爵領に全く生息していないわけじゃない。
でも兄上に「マッドキャタピラー狩り」か「スライム狩り」かの選択肢があって、「スライム狩り」を選んだというわけじゃない。
そもそも意図して行動を変えるようなことはしてなかったと思う
兄上が案内を頼まれた時点で、もう「ある時点からの未来」とは違う方向に進んでいたんじゃないだろうか。
ただの妄想だったのに、こじつけて考えすぎているのか?
「……色々考えすぎて眠れない……。」
グデグデとベッドの上で身をよじってから、ぐわーっと両腕を伸ばして伸びをする。深くため息をついて起き上がった。
眠れないなら、脳裏に浮かんだことを描いておこう。魔道具に魔力を通す。ぽわっと白っぽい光が文机の上を照らす。
ランプもあるともっと明るくなるだろうけど、火は起こせないんだよね。
兄上みたいに手軽に火を起こせれば良いんだけど。僕は、火魔法は得意じゃない。頑張ったら火花が出たことはあるから、全く火属性を持っていないわけじゃないとは思うけどなぁ。
うまく制御できていないから、夜に一人で部屋の中で火を起こすなんて危ないことはできない。ちょっとでも床を焦がしたりしたら母様に絶対怒られる!
小さい火だけでも失敗なく起こせるように今度練習しよう。
「誰かランプを使っていたら、火を貰ってこれるかなぁ。」
文机のところまで行って、文机の上に並べられた絵に目を落とす。
ネイサン殿下が蛙でハロルド君とシェリル嬢を揶揄っている場面だ。
改めて見ると、やっぱり昼間みた出来事は脳裏に浮かんだ光景に似ていた。
ーーーあの頃、僕はマッドキャタピラ一匹倒すのも苦戦していて……。
ーーーえええ?ネイサン様にそんな頃があったんですか?
ーーーああ、後ろから跳ねてきたジャンピングラットにも気が付かなくて、レオンに助けられた。
登場した魔獣の名前は、マッドキャタピラーとかジャンピングラットだった。
今日、殿下が討伐に苦戦していたのはスライムであってマッドキャタピラーではなかった。
でも、魔獣討伐に苦戦していたと言う事と後ろから飛んできた魔獣からレオノールさんが助けたという出来事が、殿下の台詞と重なるんだよね。
……だけど、どうしてマッドキャタピラー?なんでスライムじゃないんだろう。
あの場面のネイサン殿下はレオノールさんが亡くなったと言う話をしていた。未来の話のようでいて、今日出来事とちょっと違う。
マッドキャタピラーを討伐する件は別で起きるとしても、過去を思い出して語る時にマッドキャタピラーのことは話題に出してスライム討伐の件は一言もないのは妙な気がする。
「マッドキャタピラーもスライムも」って話題に出すならわかるんだけど。スライムに苦戦した話は言いたくなかった?でも、マッドキャタピラーも、動きが鈍い魔獣だし討伐難易度はスライムと大差ない気がするんだ。
完全に僕の妄想の話だったら、殿下の回想シーンで語るのはスライム討伐の話になるでしょう?
何だかその微妙な「ズレ」がちょっとモヤモヤする。
……僕は……イメージした光景が悲しい出来事なら、実際に起きなければ良いと思う。それならいくら「ズレ」が発生したって良いんだよね!
だから、レオノールさんに「呪いの毒」の解毒剤を渡したい。
リネリア嬢のお母上が亡くなってその後に意地悪な継母や欲しがり妹がやってくるというのなら、リネリア嬢のお母上の事故自体が起きないでほしいと思う。
僕が見た光景が未来だっとして、起きてほしくないことを回避したら、未来が変わって、僕が見た光景は未来じゃなくなるんじゃないかな。
未来のことではあるだけど、悲しい出来事を回避することはできる、と思いたいのかもしれない。
どこかの地点で見た未来であるというだけ。
現時点から何か未来を回避するような行動を起こしたら、変わりうる未来だと……。
マッドキャタピラーの話は、もしかして「ある時点での起こりうる未来」だったのかもしれない。
それが「スライム」に変わったのは何故だろう。
兄上が「スライム河原」に案内したから?兄上が未来を変えた?
だけど、マッドキャタピラー狩りの場所なんて思いつかない。
マッドキャタピラーがゲンティアナ男爵領に全く生息していないわけじゃない。
でも兄上に「マッドキャタピラー狩り」か「スライム狩り」かの選択肢があって、「スライム狩り」を選んだというわけじゃない。
そもそも意図して行動を変えるようなことはしてなかったと思う
兄上が案内を頼まれた時点で、もう「ある時点からの未来」とは違う方向に進んでいたんじゃないだろうか。
ただの妄想だったのに、こじつけて考えすぎているのか?
「……色々考えすぎて眠れない……。」
グデグデとベッドの上で身をよじってから、ぐわーっと両腕を伸ばして伸びをする。深くため息をついて起き上がった。
眠れないなら、脳裏に浮かんだことを描いておこう。魔道具に魔力を通す。ぽわっと白っぽい光が文机の上を照らす。
ランプもあるともっと明るくなるだろうけど、火は起こせないんだよね。
兄上みたいに手軽に火を起こせれば良いんだけど。僕は、火魔法は得意じゃない。頑張ったら火花が出たことはあるから、全く火属性を持っていないわけじゃないとは思うけどなぁ。
うまく制御できていないから、夜に一人で部屋の中で火を起こすなんて危ないことはできない。ちょっとでも床を焦がしたりしたら母様に絶対怒られる!
小さい火だけでも失敗なく起こせるように今度練習しよう。
「誰かランプを使っていたら、火を貰ってこれるかなぁ。」
文机のところまで行って、文机の上に並べられた絵に目を落とす。
ネイサン殿下が蛙でハロルド君とシェリル嬢を揶揄っている場面だ。
改めて見ると、やっぱり昼間みた出来事は脳裏に浮かんだ光景に似ていた。
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