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第1章
第83話 午後の狩りの相談
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パチパチと拍手をしてノンナさんが小さく跳ねた。
「惜しいですが飛距離はお見事です!リネリア様!」
ノンナさんの熱が入った応援にリネリア嬢はちょっと照れくさそうにしながらも嬉しそうだ。きゅっと口角を上げて次の矢を手にした。やる気が出たみたいだ。
数本弓を引いて少しずつ的に近づいてきたけれど、そろそろ朝食の時間だと他のメイドさんが呼びにきてお開きになった。
「魔法と弓を交互に練習することにするわ。」
朝食に向かうリネリア嬢の表情は明るい。
魔法だけ練習をしている時より表情が生き生きして見えた。弓が気に入ったようで良かった。
剣術エリアの方はノータッチで殿下達とほとんど交流がなかったから朝食は一緒でなくても良いかなと思ったんだけど、なぜか兄上と一緒に朝食の席に呼ばれてしまった。午後の狩場の案内の相談をしたいのだそうだ。
相談するなら朝の訓練の時に話をしてくれたら、朝食に呼ばれなくて済んだんじゃないかとか思ってしまう。
「スライムを思うように倒せなかったことは心残りではあるのだが、他の種類の魔獣の狩りもしたいんだ。午後は別の狩場に案内してほしい。」
「……わかりました。……角トカゲはいかがでしょう。比較的動きが遅いので攻撃を当てやすいです。」
「角トカゲか……。」
ネイサン殿下からの相談を受けて兄上は少し考えて角トカゲの狩場を提案した。
ネイサン殿下は角トカゲは期待と違チロリのか少し首をひねって思案していた。
「ええー?トカゲってちょっと気持ち悪くないかしら。」
魔石水を飲もうとした手を止めてシェリル嬢が眉を顰めた。
「シェリル、魔獣の見た目を気にしても仕方ないと思うよ。それにトカゲ類は結構マシな方だと思う。」
ハロルド君がシェリル嬢を諌めると、シェリル嬢はちょっと不満げに口をアヒルみたいに歪めた。
「マシじゃない魔獣ってどんな魔獣?」
「二足歩行の魔獣かな。馬車で移動中に討伐をしているところを見たけど、遠目だと人みたいに見えた。斬るのは勇気がいるんじゃないかと思う。」
「あー、確かに。斬ったら血が出るのよね。」
「血は出ると思うよ。」
「うわぁ。」
シェリル嬢は嫌そうに眉を顰めた。
シェリル嬢とハロルド君の会話を聞いていて、僕は二足歩行の魔獣を思い浮かべた。二足歩行というと、ゴブリンとかコボルトとかオークとかかな。
ゴブリンは絵でしか見たことがない。この辺には出没しないらしい。
オークやコボルトは森の奥の方にいるらしくて、「ハグレ」っていうらしい一匹でうろついているのに出くわしたことがある。
コボルトはまだ狼系魔獣っぽさがあるけど、オークは確かにちょっと人に近い感じがして抵抗があった。
向こうが向かってきたのを咄嗟に風刃で斬っただけだったけど、討伐までは何とかできた。ただ、その後の解体がちょっとね……。頭は明らかに人と違うんだけど、腰布とか付けていてちょっと人っぽさがあるとやっぱり解体をするのは躊躇しちゃう。
結局、頑張って魔石を取るだけにして、後は冒険者の人に持っていって貰っちゃったんだ。
だからハロルド君が言う「二足歩行の魔獣は斬るのが勇気がいる」と言う気持ちはわかる気がする。
ただ、ちょっと気になるのは血が出るのは二足歩行の魔獣だけじゃないんだけどなってところだ。角トカゲだって一応斬ったら血が出るし……。
角トカゲは小さいから、血が出てもインパクトは少ないかな。
僕は討伐の場所だとか獲物だとかを相談されているわけでもないので、勝手にあれこれ考えながらモグモグと朝食を取っていた。考えていただけで一言も発言しないまま、朝食の時間が終わってしまった。
あー、僕は何もしないで食べていただけになっちゃったよ。
ちなみに朝食はボア肉の香草入りソーセージと野菜スープ、それとチーズパンだ。チーズパンは焼きたてが最高に美味しい。
「惜しいですが飛距離はお見事です!リネリア様!」
ノンナさんの熱が入った応援にリネリア嬢はちょっと照れくさそうにしながらも嬉しそうだ。きゅっと口角を上げて次の矢を手にした。やる気が出たみたいだ。
数本弓を引いて少しずつ的に近づいてきたけれど、そろそろ朝食の時間だと他のメイドさんが呼びにきてお開きになった。
「魔法と弓を交互に練習することにするわ。」
朝食に向かうリネリア嬢の表情は明るい。
魔法だけ練習をしている時より表情が生き生きして見えた。弓が気に入ったようで良かった。
剣術エリアの方はノータッチで殿下達とほとんど交流がなかったから朝食は一緒でなくても良いかなと思ったんだけど、なぜか兄上と一緒に朝食の席に呼ばれてしまった。午後の狩場の案内の相談をしたいのだそうだ。
相談するなら朝の訓練の時に話をしてくれたら、朝食に呼ばれなくて済んだんじゃないかとか思ってしまう。
「スライムを思うように倒せなかったことは心残りではあるのだが、他の種類の魔獣の狩りもしたいんだ。午後は別の狩場に案内してほしい。」
「……わかりました。……角トカゲはいかがでしょう。比較的動きが遅いので攻撃を当てやすいです。」
「角トカゲか……。」
ネイサン殿下からの相談を受けて兄上は少し考えて角トカゲの狩場を提案した。
ネイサン殿下は角トカゲは期待と違チロリのか少し首をひねって思案していた。
「ええー?トカゲってちょっと気持ち悪くないかしら。」
魔石水を飲もうとした手を止めてシェリル嬢が眉を顰めた。
「シェリル、魔獣の見た目を気にしても仕方ないと思うよ。それにトカゲ類は結構マシな方だと思う。」
ハロルド君がシェリル嬢を諌めると、シェリル嬢はちょっと不満げに口をアヒルみたいに歪めた。
「マシじゃない魔獣ってどんな魔獣?」
「二足歩行の魔獣かな。馬車で移動中に討伐をしているところを見たけど、遠目だと人みたいに見えた。斬るのは勇気がいるんじゃないかと思う。」
「あー、確かに。斬ったら血が出るのよね。」
「血は出ると思うよ。」
「うわぁ。」
シェリル嬢は嫌そうに眉を顰めた。
シェリル嬢とハロルド君の会話を聞いていて、僕は二足歩行の魔獣を思い浮かべた。二足歩行というと、ゴブリンとかコボルトとかオークとかかな。
ゴブリンは絵でしか見たことがない。この辺には出没しないらしい。
オークやコボルトは森の奥の方にいるらしくて、「ハグレ」っていうらしい一匹でうろついているのに出くわしたことがある。
コボルトはまだ狼系魔獣っぽさがあるけど、オークは確かにちょっと人に近い感じがして抵抗があった。
向こうが向かってきたのを咄嗟に風刃で斬っただけだったけど、討伐までは何とかできた。ただ、その後の解体がちょっとね……。頭は明らかに人と違うんだけど、腰布とか付けていてちょっと人っぽさがあるとやっぱり解体をするのは躊躇しちゃう。
結局、頑張って魔石を取るだけにして、後は冒険者の人に持っていって貰っちゃったんだ。
だからハロルド君が言う「二足歩行の魔獣は斬るのが勇気がいる」と言う気持ちはわかる気がする。
ただ、ちょっと気になるのは血が出るのは二足歩行の魔獣だけじゃないんだけどなってところだ。角トカゲだって一応斬ったら血が出るし……。
角トカゲは小さいから、血が出てもインパクトは少ないかな。
僕は討伐の場所だとか獲物だとかを相談されているわけでもないので、勝手にあれこれ考えながらモグモグと朝食を取っていた。考えていただけで一言も発言しないまま、朝食の時間が終わってしまった。
あー、僕は何もしないで食べていただけになっちゃったよ。
ちなみに朝食はボア肉の香草入りソーセージと野菜スープ、それとチーズパンだ。チーズパンは焼きたてが最高に美味しい。
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