転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第115話 渡す時の説明

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また脳裏に光景が浮かんできた。違う場面だ。薄暗い部屋の中にレオノールさんの姿が見える。レオノールさんはベッドの傍に立っていて、ベッドの上には女性が横たわっている。
俯いて立ち尽くしていたレオノールさんが声を絞り出すように呟いた。

ーーー母上……。どうしてこんな事に……
ーーーレオン兄上……!俺がいながらこんなことになってしまって何て言ったらいいか分からない。
解毒剤を探し回ったがどうしても見つけることができなかったんだ

クリクリ銀髪の……すごく大柄でマッチョな男性が部屋に飛び込むようにして入ってきた。え?兄上って……。

レオノールさんは今のレオノールさんと同じくらいに見えるんだけど、クリクリ銀髪のマッチョってもしかしてテッド君?

ーーーテッド。母上に一体何があったんだ?
ーーー「呪いの毒」……らしい
ーーー「呪いの毒」?
ーーーああ。少し前に、母上宛の届け物が届いて、その届け物で指先を少し怪我したらしいんだ。その後急に母上が倒れたんだそうだ。
ーーーその届け物に「呪いの毒」とやらが?
ーーーああ。届け物が怪しいと思って調べてみたら針が仕込まれていたんだ。おそらく針に毒が塗られていたんだろうと思う。
毒だろうとすぐに医者に診断されたんだが、処方された解毒剤がどれも効かなかったんだ。「呪いの毒」といわれている毒の可能性が高いと言われたんだが、その「呪いの毒」の解毒剤が見つからなかった。
探し回ったんだが……
ーーー……何ということだ……。

テッドさんがマッチョに育ってびっくりしていたら、凄く深刻な話になっていた。
「呪いの毒」でレオノールさんとテッドさんののお母上が亡くなったようだ。
……それは、過去のこと?それとも、まだ、起きていないこと?
どっちだろう。まだ間に合うのかな?

まだ間に合うなら何とかしたいんだけど。

目まぐるしく脳裏の絵が切り替わって、ちょっとクラクラしてきた。
ぎゅっと目を瞑り、開くを何度か繰り返して、大きく息を吐いた。

過去のことかどうかはレオノールさんにお母上について聞いてみたらわかるかな。
一番気になるのはレオノールさんのお母上が亡くなる原因が「呪いの毒」ってことだ。
まだ起きていないことなら至急、解毒治癒玉を追加製作しないと!

脳裏に浮かんだ光景だけで詳細は分からないし、本当に起きることかも確証はないけど、もしも間に合うならレオノールさんのお母上もなんとか助けたい。
大急ぎで解毒治癒玉のペンダントと光水の追加制作をした。


「……それで、朝食に遅れたの?」
「ごめんね。呼び出しベル鳴ってたの、気が付かなかった」
「……クリス兄様はすぐ突っ走っちゃうし、やりすぎなんだから。いっつもそう!」

朝食の支度ができたベルが鳴らされたのに、「レオノールさんに渡すセット」の製作に集中しすぎて呼び出しベルの音に気がつかなった。
マーサが部屋の前まで来て扉をノックしてくれたのも聞こえてなかったようで
結局、メイリと兄上が部屋まで呼びにきてしまったんだ。

僕は絵とか魔道具作りに集中しすぎちゃう面があるみたいで、結果、メイリと兄上のことを待たせてしまったし部屋に呼びにきてもらっちゃった。あー……失敗!

メイリも兄上も本気では怒っていないのかな。「怒り」の気配は感じない。メイリはほっぺを少し膨らませて、怒った振りをしている感じ。
兄上は、僕が作った「レオノールさんに渡すセット」を見て何だか呆れていた。

「……クリスは確かに時々やりすぎなんだよな。この治癒魔石?のペンダントを三つもあげるつもりなのか?」
「レオノールさんの分とレオノールさんのお母上の分。あと、念の為に弟さんの分も用意したんだ」
「レオノールさんだけじゃなくて、レオノールさんの家族の分もってことか。それも夢に見たのか?」
「うん」

僕は脳裏に浮かんだ光景について兄上とメイリに話すと兄上が厳しそうに目を細めた。

「……やりたいことはわかったけど、慎重になった方が良いよ。一つ渡して、お守り代わりに持っていてもらうというのは何とかなるだろうと思うけど、いきなり家族分の解毒剤なんてすんなり受け取ってもらえないんじゃないか?」
「そうだね……。説明しにくいし……」

夢で見た言ったとしても理解してもらえるか分からないんだよね。

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