転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

文字の大きさ
121 / 334
第1章

第121話 昼のひととき

しおりを挟む
「落とし穴を飛び越える練習?なんでそんなこと考えたんだ?」
「逃げるときにつかえるかなって」
「当面、ボブと一緒に行けって言われただろう。ボブは膝を痛めているから馬でしか出かけないぞ」
「あ、そうか。でも馬を降りた時に遭遇したらどうするの?」

変な人に絡まれた時とかに逃げる為の「落とし穴作戦」を兄上に説明したんだけど、いまいち賛同を得られなかった。
即席で作った落とし穴を飛び越えて走って逃げる作戦は、膝を痛めているボブには難しいことがわかった。

「そもそも、ボブが一緒なら絡まれにくくなるだろう」

ボブはモジャモジャした髭面で厳つい。確かに僕と兄上だけで出歩くよりも舐められないかもしれない。
でも今日絡んできた人達とかだったら人数で勝ってるって思われちゃうかもしれないなぁ。

まあ、心配しすぎても仕方ないか。
さっきの人達が、ゲンティアナの騎士さん達に捕まって注意とかされたらもう同じようなことはしないかもしれないし。
沼地を荒らしたのもあの人達なのかな。

騎士達が川岸に向かったその後が気になるけど、お昼を食べてしまいなさいと母様に言われて、魔魚のことを思い出した。

「猫さんに魔魚を……」
「今は厨房は忙しいと思うぞ」
「あー……」

兄上に言われて、ジャックが慌ただしく厨房で食事の準備をしている姿を思い浮かべた。
自分で捌けば……、とも思ったけど結局厨房の一角を使わせてもらうことになっちゃうし後片付けも必要になる。昼食時の忙しい時期が終わってからにすることにした。

お昼は魔鳥の肉とキャベツの煮込みだった。魔鳥の肉がホロホロ崩れるくらいに煮込んであって、キャベツもトロトロで美味しい。
パンにスープを浸して二度美味しい。パンはスープに浸さなくてもふんわり柔らかいんだけど、ちぎってスープに浸すとパンの香ばしい風味とスープの旨味の組み合わせが美味しく感じるんだよね。

「美味~い!」

魔鳥のキャベツ煮を堪能していると、同じようにニコニコして食べていたメイリがふと僕の方を見て言った。

「……ねえ。午後はまたお客様の狩りについて行くの?」
「どうだろう。今日の予定は特に聞いてないけど……」

メイリに訊かれて、伺うように兄上に目を向けると兄上がスプーンを持つ手を止めた。

「今日は騎士が行ってみて狩場の場所と様子がわかっているところに行くから同行しなくても大丈夫だって言われたよ」
「そうなんだ。じゃあ森の泉のところに行けるかな」

また鹿魔獣を狩りに行きたいって考えていたらメイリが心配そうな顔をした。

「森で沼地を燃やした人がいるんでしょう?大丈夫?」
「うーん、大丈夫じゃないかなぁ……」

メイリは、森の沼地が荒らされた件があったから、僕や兄上が森に行くことを心配してくれていたらしい。
川岸で酔っ払っていた騎士が沼地を荒らした犯人かはまだハッキリとはしていないけど、森にはボブも一緒に行くし、心配ないんじゃないかな。

兄上にどうだろうと訊いてみたら少しだけ渋い顔をされたけど頷いてくれた。

「あの連中が沼地を荒らした張本人かどうかもまだわからないけどな。沼地に近づかなきゃいいんじゃないか」
「やった!」

一応。母様に確認してからって事になったけど、兄上も森に行く気になってくれて嬉しい。でもメイリはまだ心配そうだった。ちょっとムスッとした感じで上目遣いに僕と兄上を見る。

「大丈夫そうなら良いけど……。危なかったらすぐ帰ってきてね」
「わかった。ありがとう」

心配そうに僕と兄上を見つめるメイリ。可愛い。頭撫でたいけど、テーブルの向かい側で手が届かないんだよなぁ。
しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

俺に王太子の側近なんて無理です!

クレハ
ファンタジー
5歳の時公爵家の家の庭にある木から落ちて前世の記憶を思い出した俺。 そう、ここは剣と魔法の世界! 友達の呪いを解くために悪魔召喚をしたりその友達の側近になったりして大忙し。 ハイスペックなちゃらんぽらんな人間を演じる俺の奮闘記、ここに開幕。

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

異世界に落ちたら若返りました。

アマネ
ファンタジー
榊原 チヨ、87歳。 夫との2人暮らし。 何の変化もないけど、ゆっくりとした心安らぐ時間。 そんな普通の幸せが側にあるような生活を送ってきたのにーーー 気がついたら知らない場所!? しかもなんかやたらと若返ってない!? なんで!? そんなおばあちゃんのお話です。 更新は出来れば毎日したいのですが、物語の時間は割とゆっくり進むかもしれません。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

転生ちびっ子の魔物研究所〜ほのぼの家族に溢れんばかりの愛情を受けスローライフを送っていたら規格外の子どもに育っていました〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
高校生の涼太は交通事故で死んでしまったところを優しい神様達に助けられて、異世界に転生させて貰える事になった。 辺境伯家の末っ子のアクシアに転生した彼は色々な人に愛されながら、そこに住む色々な魔物や植物に興味を抱き、研究する気ままな生活を送る事になる。

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

ちくわ
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

才がないと伯爵家を追放された僕は、神様からのお詫びチートで、異世界のんびりスローライフ!!

にのまえ
ファンタジー
剣や魔法に才能がないカストール伯爵家の次男、ノエール・カストールは家族から追放され、辺境の別荘へ送られることになる。しかしノエールは追放を喜ぶ、それは彼に異世界の神様から、お詫びにとして貰ったチートスキルがあるから。 そう、ノエールは転生者だったのだ。 そのスキルを駆使して、彼の異世界のんびりスローライフが始まる。

処理中です...