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第1章
第123話 順調な狩り
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森に行くのも楽しみだけど、帰ってから絵を描こうと思うとちょっと慌ててしまう。昼食を食べ終わってから急いで部屋に戻って午後の狩りの支度を始めた。
支度と言っても魔魚釣りの時に持っていたものに足りない道具を追加するくらいだ。弓矢と頑丈なロープくらいかな。
「あ。出掛ける前に魔魚はちゃんと『収納』から出しておかないと……」
魔魚を「収納」したまま出掛けて、森で狩った獲物が入らないなんてことになったら残念だもんね。
その前に猫ちゃんに魔魚をあげるつもりだけど。
魔魚を本館の厨房まで届けに行く。
昼の忙しい時間が過ぎたようで、ジャックは鍋を拭いたりして落ち着いた様子だった。
「魔魚ですか?良いですね!今夜は魔魚のムニエルにしましょう」
「わーい!捌くの手伝うね。あと、猫さんに魔魚を蒸したのをあげたいんだけど」
「わかりました!」
最初から二枚おろしになっちゃってる魔魚を順番に出していった後、桶に氷を作っていたら兄上も厨房にやってきた。兄上の方が「収納」に魔魚が沢山入れてあったからね。二枚おろしの方を先に調理した方が良いってことで、夕食用は僕が釣った魔魚を優先して捌く事になった。
ジャックはテキパキとしていて、兄上も骨に沿って綺麗に包丁を動かしている。
僕はイマイチ上手にできないんだよね。だから、猫さんにあげる用の切り身はちょっとボロッとしている。ごめんね。猫さん。
ジャックと兄上はまだ魔魚を捌く作業を続けている間に、僕は蒸した魔魚の切り身をお皿に乗せて、離れの中庭に向かった。
中庭に入ると、灰色の猫さんの姿が見えた。僕に気がついたらしくて遠巻きに見ている。
「猫さーん。魔魚食べるー?」
「……」
返事をしてくれないけど、こっちを気にしてはいるみたいだ。
駆け寄ってきて食べてくれたら良いけど、無理そうなので祠の前あたりにお皿を置いた。
祠の前の供物台のようなところに、魚を置いたり、お水を入れたりするとサマになりそうだけど、猫ちゃんが丸まる場所なので
お水も別で置いておこう。別のお皿を出して毒耐性の魔石を漬けてあった黎明の泉の水を注ぐ。
祠の中のドラゴンの像をチラリと見て、コップにも黎明の水を注ぎ入れて、供物台の隣に置いた。
「どうぞ」
何となくで両掌をちょっと合わせる。灰色猫さんはまだ遠巻きにこちらを見ていたけど僕が祠の前から離れると、ピョンピョンと跳ねるように祠の方に駆けて行った。
走る姿が可愛い!
じっと見ていたいけど、見ていると魔魚を食べてくれないかもしれないので、踵を返して中庭を後にした。
兄上とボブと一緒に馬に乗って森に向かう。少し遠回りして、沼地近くを避けて森に入ると前日のような荒々しい雰囲気はなくて静かだった。
途中に出てきた小さい魔獣を適当に倒しながら特に何事もなく黎明の泉に到着できた。途中の魔獣は後で解体する事にして「収納」に放り込んでいる。「収納」便利!
「鹿魔獣いないかな。」
「俺は、派手派手しい鳥の魔獣の肉も好きだぞ。唐揚げ美味い。」
「ああ、ジューシーだったよねぇ。」
今日の森での狩りは、兄上も僕も「収納」を使うことをテーマにしていた。狩って血抜きして魔石を取ったらすぐに「収納」にしまっていく。毒で爛れたやつだけは別で魔石だけ取ったら、泉の水をかけてから穴に放り込んでいった。
もし、「収納」に限界が来そうな雰囲気を感じたら速攻で帰ることにしていた。
鹿魔獣には残念ながら遭遇できなかったけど、兄上が気に入っていた派手派手しい色の鳥魔獣を二体仕留めることができた。
それと、大きな蛇魔獣やら鳥のような頭をした熊系の魔獣やらの毒耐性魔石もゲットした。
小ぶりだけど、凶悪そうな顔をした鳥魔獣は、5体のうち2体が雷属性だった。他は風属性だ。
狩る度に「収納」に追加して行ったけど、特に魔力不足を感じるということはなかった。
普段、狩りをした時の量くらいになったところで終了した。
泉の水も多めに汲んだし、荷物は多めなはずなのに手ぶら感が嬉しい。
今日のオヤツはドライフルーツのマフィンだった。
一仕事を終えた後に、静かな森の中で甘いマフィンを齧るのは格別だ。
「収納」がテーマだけど、リュックも背負ってきていてマフィンとかちょっとした道具はリュックに入れてあった。手ぶらも不自然だし「収納」も使い慣れていないから、今後もリュックも持ち歩くつもりだ。
兄上は泉の水が入った瓶を一本リュックに入れていた。
「『収納』とリュックで持ち帰って状態が同じか比べてみる」
兄上がそう言ったので、僕も真似して泉の水を入れてみることにした。
支度と言っても魔魚釣りの時に持っていたものに足りない道具を追加するくらいだ。弓矢と頑丈なロープくらいかな。
「あ。出掛ける前に魔魚はちゃんと『収納』から出しておかないと……」
魔魚を「収納」したまま出掛けて、森で狩った獲物が入らないなんてことになったら残念だもんね。
その前に猫ちゃんに魔魚をあげるつもりだけど。
魔魚を本館の厨房まで届けに行く。
昼の忙しい時間が過ぎたようで、ジャックは鍋を拭いたりして落ち着いた様子だった。
「魔魚ですか?良いですね!今夜は魔魚のムニエルにしましょう」
「わーい!捌くの手伝うね。あと、猫さんに魔魚を蒸したのをあげたいんだけど」
「わかりました!」
最初から二枚おろしになっちゃってる魔魚を順番に出していった後、桶に氷を作っていたら兄上も厨房にやってきた。兄上の方が「収納」に魔魚が沢山入れてあったからね。二枚おろしの方を先に調理した方が良いってことで、夕食用は僕が釣った魔魚を優先して捌く事になった。
ジャックはテキパキとしていて、兄上も骨に沿って綺麗に包丁を動かしている。
僕はイマイチ上手にできないんだよね。だから、猫さんにあげる用の切り身はちょっとボロッとしている。ごめんね。猫さん。
ジャックと兄上はまだ魔魚を捌く作業を続けている間に、僕は蒸した魔魚の切り身をお皿に乗せて、離れの中庭に向かった。
中庭に入ると、灰色の猫さんの姿が見えた。僕に気がついたらしくて遠巻きに見ている。
「猫さーん。魔魚食べるー?」
「……」
返事をしてくれないけど、こっちを気にしてはいるみたいだ。
駆け寄ってきて食べてくれたら良いけど、無理そうなので祠の前あたりにお皿を置いた。
祠の前の供物台のようなところに、魚を置いたり、お水を入れたりするとサマになりそうだけど、猫ちゃんが丸まる場所なので
お水も別で置いておこう。別のお皿を出して毒耐性の魔石を漬けてあった黎明の泉の水を注ぐ。
祠の中のドラゴンの像をチラリと見て、コップにも黎明の水を注ぎ入れて、供物台の隣に置いた。
「どうぞ」
何となくで両掌をちょっと合わせる。灰色猫さんはまだ遠巻きにこちらを見ていたけど僕が祠の前から離れると、ピョンピョンと跳ねるように祠の方に駆けて行った。
走る姿が可愛い!
じっと見ていたいけど、見ていると魔魚を食べてくれないかもしれないので、踵を返して中庭を後にした。
兄上とボブと一緒に馬に乗って森に向かう。少し遠回りして、沼地近くを避けて森に入ると前日のような荒々しい雰囲気はなくて静かだった。
途中に出てきた小さい魔獣を適当に倒しながら特に何事もなく黎明の泉に到着できた。途中の魔獣は後で解体する事にして「収納」に放り込んでいる。「収納」便利!
「鹿魔獣いないかな。」
「俺は、派手派手しい鳥の魔獣の肉も好きだぞ。唐揚げ美味い。」
「ああ、ジューシーだったよねぇ。」
今日の森での狩りは、兄上も僕も「収納」を使うことをテーマにしていた。狩って血抜きして魔石を取ったらすぐに「収納」にしまっていく。毒で爛れたやつだけは別で魔石だけ取ったら、泉の水をかけてから穴に放り込んでいった。
もし、「収納」に限界が来そうな雰囲気を感じたら速攻で帰ることにしていた。
鹿魔獣には残念ながら遭遇できなかったけど、兄上が気に入っていた派手派手しい色の鳥魔獣を二体仕留めることができた。
それと、大きな蛇魔獣やら鳥のような頭をした熊系の魔獣やらの毒耐性魔石もゲットした。
小ぶりだけど、凶悪そうな顔をした鳥魔獣は、5体のうち2体が雷属性だった。他は風属性だ。
狩る度に「収納」に追加して行ったけど、特に魔力不足を感じるということはなかった。
普段、狩りをした時の量くらいになったところで終了した。
泉の水も多めに汲んだし、荷物は多めなはずなのに手ぶら感が嬉しい。
今日のオヤツはドライフルーツのマフィンだった。
一仕事を終えた後に、静かな森の中で甘いマフィンを齧るのは格別だ。
「収納」がテーマだけど、リュックも背負ってきていてマフィンとかちょっとした道具はリュックに入れてあった。手ぶらも不自然だし「収納」も使い慣れていないから、今後もリュックも持ち歩くつもりだ。
兄上は泉の水が入った瓶を一本リュックに入れていた。
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