転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第144話 事件を振り返る

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落ち着かないまま、離れでメイリと一緒に夕食を囲む。

「大変だったのね」
「うん。突然のことでビックリしちゃったよ」

本館で事件が発生しているのに、離れでのんびり夕食をとっていて良いのか戸惑う。
夕食はジャックの宣言通り、魔魚のムニエルだ。ハーブのソースがかかっていてレモンが添えてある。
美味しそう!
ムニエルを前に食欲がそそられるけど、まだソワソワしながら兄上の表情を伺った。

「ねえ。僕達だけ夕食を食べちゃってて良いのかな」
「母上は離れに戻ってろって言っただろう」
「言ってたけど……。のんびり夕食まで食べちゃってて大丈夫?お祝いの宴はどうなっただろう」
「宴は……中止じゃないかな。とりあえず食べられるうちに食べておいた方が良いよ。もしかしたら後で何時間も事情を聞かれるかもしれない」
「取り調べ!?」

小さい机しかない薄暗くて狭い室内。向かい合わせに座っている厳つい顔をした中年の刑事がデスクライトを掴んで向けてくる。
脳裏に浮かんできた光景に首を傾げる。

刑事?刑事って騎士?

凄くよく光る魔道具だったけど……。
良く光る魔道具について考えそうになっちゃうけど、意識して会話に戻る。

「あの取り押さえられていた騎士が、ゴブレットに毒を付けたってこととかを聞かれるの?」
「ゴブレットに毒がつけられてたのか?見たのか?」
「銅のゴブレットの縁に毒が付いてたのは見たよ」
「ゴブレットに注がれた飲み物を飲んだら毒に当たるようにしてたのか……」

兄上は難しそうに眉を顰め、親指で顎を撫でた。

「どうして光ったんだ?あの光水を使った飲み物は、毒に反応して光るのか?」
「わからないけど……そうかなのかも。……実験したいけど、毒がないね。沼地の灰色キノコ、採取しておけばよかったな」
「やめとけ。毒なんか持ってて疑われたら困るだろ」
「ええ……」

毒の事件が起きたばかりだから、疑われちゃうこともあるかもしれないのか。怖いな。

メイリは目の前の果実炭酸光水を眺めてから一口飲んだ。

「美味しい!光水よりさっぱりしているのね」
「そうだよ。ゴクゴク飲めちゃうよね」

メイリが果実炭酸光水を気に入ってくれたようでよかった。

「殿下や辺境伯様達はご無事だったの?」
「うん。侍女の人が殿下にドリンクを持って行く前にゴブレットが光ったからね。……あれ?」

壁際のドリンクコーナーの光景を思い浮かべて、何となく引っかかった。

「どうしたの?」
「うん……、思い出してみると、ちょっと変な感じがするような……」

壁際のドリンクコーナーに侍女の人が立っていて……、あ、ノンナさんは?

妙な気配を感じて広間の中を一通り見回した時、給仕をしているのはマーサとあの侍女の人だけだった。
リネリア嬢についているはずのお団子頭のノンナさんの姿はなかった。

広間に最初に着いたときは姿を見た気がする。
侍女の人だけしかいなかったのっておかしくない?
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