転生モブ一家は乙女ゲームの開幕フラグを叩き折る

月野槐樹

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第1章

第148話 事情聴取の代わり

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もしも毒事件に共犯者がいたとしたら……。
考えただけでゾッとする。

「共犯って……。まだ捕まってない人がいるかもってこと?怖い……」
「お客様達がお帰りになるまでは、メイリはなるべく離れから出ない方が良いかもな」
「そうする~」

メイリは軽く肩をすくめた。ちょっと不安げに見えるけどそんなに怖がっている感じじゃない。
僕より落ち着いているんじゃないかな。
広間での毒事件の現場を見たわけじゃないからだろうか。

「あら、まだここにいたのね」

食堂に母様が入ってきた。僕達の方を見てホッとしたような微笑みを浮かべた。
ちょっと疲れているのかな。
席を立って、椅子を引いて母様に勧めた。

「お帰りなさい。色々……、大丈夫だった?」
「大丈夫よ。でも、少ししたらまた戻らないと」
「え?」
「ローレンとクリスに話を聞きにきたの」
「あぁ」

兄上が母様のお茶の準備をしながら振り返り、少しだけ眉を顰めた。
僕もドキドキ。何を聞かれるのかな。

「母上、僕とクリスが気がついた事は書き留めておきました」
「まあ!ありがとう!」

テーブルに母様の分のカップを置いてから兄上は、メモ書きした板を手にとって
母様に差し出した。母様が微笑んだ。嬉しそうだ。

「何かの役に立つかと思って、クリスと二人で書き出してみたけど、
あの場に居たら、誰でもわかったような事しか思い出せなかったよ」
「十分よ。訊こうと思っていた用事が済んだわ」

メモ書きをもう一度じっと見てから、母様はお茶を一口飲んだ。
少し深めに息を吐く。

「……貴方達から話が聞きたいと王宮騎士様から言われたの。でも、遅い時間になっても嫌だから今日は私が話を聞いてくると
言ってきたのよ。
ここにはあまり入って貰いたくないし」
「え?ここって、離れのこと?」
「ええ、ここまで来るって言うので断ったわ」
「うわぁ」

母様が言っている感じだと、騎士の人が離れに聞きにきたらなかなか帰ってくれなかったりするのかもしれない。
河原で絡んできた騎士の人の尋問みたいだったら怖いな。

「母上、お食事はされましたか?」
「ええ、少しいただいたわ」
「デザートは?ジャックが多めに運んできてくれましたよ」
「まあ、嬉しい。いただくわ」

お祝いの宴が毒事件で中断しちゃって、マーサが他の部屋に食事を運んだって
ジャックが言っていたけど、騒ぎになってたから父上と母様は対応に追われていたんじゃないかな。
食事は少し食べたって言ってたけど、デザートを見てニッコリしたってことは
少なくともデザートまでは食べていなさそうだ。

「母様、デザートだけで足りる?ジャックに軽食とか作ってもらおうか」
「ありがとう。私は大丈夫だけど……。そうね、夜遅くなりそうだから
お客様にもお夜食をご用意しようかしら」

母様に食事を食べてもらいたいんだけどなぁ。
お客様用にって言っているけど、ジャックはきっと父上や母様の分も作ってくれるよね。
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