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第1章
第196話 許可
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兄上の表情を伺うと眉間に皺を寄せて難しそうな顔をしていた。
「兄上……、檻に入れたままだとしても、魔獣を屋敷内に持ち込むのって、父上は許可出すの?」
「……父上に確認が必要だね」
兄上も、父上が屋敷の敷地内に魔獣を入れる許可を出すとは思ってないみたいだ。
そうだよね。もしも、檻から魔獣が逃げ出したりしたらメイリがびっくりしちゃうよ!
僕や兄上は魔獣を見慣れているけど、メイリは魔獣の討伐に行ったこともないんだし、怖がっちゃうかもしれない!
「生捕りにするという指示は出ているのだが……」
ジャンさんがちょっと困った顔をしている。
ベルンさんとパウロさんも頷いている。
「父に確認します。それまで魔獣を絶対に屋敷の敷地に持ち込まないでくださいね!門番にも伝えておきますから」
「ええ!?」
ニコッと口元に笑みを浮かべてキリッとして言う兄上。
戸惑った様子のジャンさん達。
「それは……」
「魔獣を擦り付けられたことと、その魔獣から身を守っただけなのに怒鳴られたことも父に伝えます」
「……」
ブワッと兄上の全身から魔力が漏れ出した。兄上が怒ってる。
ジャンさんは開きかけた口を言葉を飲み込むように閉じた。
兄上が父上に確認するって言ってくれたから、すぐに魔獣を屋敷に持ち込むってことはなさそうだ。……そもそも、団子兎を檻に入れて運べるのかも気になる。
「……さっき引き連れてた団子兎の残りって、捕まえられたんですか?」
キャスパーさんの方に顔を向けて訪ねてみた。キャスパーさんは不機嫌そうに腕組みをしたまま、チラリとこちらを見た。
「捕まえられてねぇよ。逃げられちまった」
「キャスパー、男爵子息にその態度は失礼だろう!」
「だってど辺境のど田舎貴族って……うぅ!」
キャスパーさんの態度をジャンさんが注意したら、キャスパーさんが反発したように何か言いかけたけど、
ベルンさんがキャスパーさんの首に腕をかけて、僕達から離れたところに連れて行ってしまった。
「申し訳ない!」
ジャンさんが頭を下げた。パウロさんも続いて僕達に向かって頭を下げる。
「キャスパーは、騎士見習いなのだが全く教育ができていなかった。無礼な発言や迷惑な行動をお詫びする」
「騎士見習い、なんですか」
「肩書きはそうだ」
「肩書き?」
「いや……、冒険者上がりの騎士見習いだ」
「冒険者上がり……」
ベルンさんとキャスパーさんの様子を見やると、草むらの中を進んでいく先に檻らしきものが見えた。
丈の高い草に隠れているのがチラリと見えた。
その檻に近づいて行っていると思ったら、キャスパーさんが大きな声を上げた。
「何だ?死にかけてるじゃないか!!」
キャスパーさんの声が大きかったからなのか、話している途中だった兄上とジャンさんもキャスパーさんの方に振り向いた。
檻の側でベルンさんがこちらに向かって手を振って言った。
「なんでもない!少し前に捕まえた団子兎が、ぐったりしてたってだけだ」
「ああ」と小さく声を漏らしたジャンさんは納得した様子で兄上の方に向き直った。
兄上は、キャスパーさん達の方にもう一度目を向けてから、ふぅっと息を吐いた。
「……団子兎を狭いところに閉じ込めても、跳ねて身体をぶつけまくって弱っていくと思いますけど」
「え?」
兄上の言葉を聞いて、ジャンさんが檻がある方角に顔を向けた。
「身体を檻にぶつけて弱っていく……のか……?」
ボソボソと呟いた。
「兄上……、檻に入れたままだとしても、魔獣を屋敷内に持ち込むのって、父上は許可出すの?」
「……父上に確認が必要だね」
兄上も、父上が屋敷の敷地内に魔獣を入れる許可を出すとは思ってないみたいだ。
そうだよね。もしも、檻から魔獣が逃げ出したりしたらメイリがびっくりしちゃうよ!
僕や兄上は魔獣を見慣れているけど、メイリは魔獣の討伐に行ったこともないんだし、怖がっちゃうかもしれない!
「生捕りにするという指示は出ているのだが……」
ジャンさんがちょっと困った顔をしている。
ベルンさんとパウロさんも頷いている。
「父に確認します。それまで魔獣を絶対に屋敷の敷地に持ち込まないでくださいね!門番にも伝えておきますから」
「ええ!?」
ニコッと口元に笑みを浮かべてキリッとして言う兄上。
戸惑った様子のジャンさん達。
「それは……」
「魔獣を擦り付けられたことと、その魔獣から身を守っただけなのに怒鳴られたことも父に伝えます」
「……」
ブワッと兄上の全身から魔力が漏れ出した。兄上が怒ってる。
ジャンさんは開きかけた口を言葉を飲み込むように閉じた。
兄上が父上に確認するって言ってくれたから、すぐに魔獣を屋敷に持ち込むってことはなさそうだ。……そもそも、団子兎を檻に入れて運べるのかも気になる。
「……さっき引き連れてた団子兎の残りって、捕まえられたんですか?」
キャスパーさんの方に顔を向けて訪ねてみた。キャスパーさんは不機嫌そうに腕組みをしたまま、チラリとこちらを見た。
「捕まえられてねぇよ。逃げられちまった」
「キャスパー、男爵子息にその態度は失礼だろう!」
「だってど辺境のど田舎貴族って……うぅ!」
キャスパーさんの態度をジャンさんが注意したら、キャスパーさんが反発したように何か言いかけたけど、
ベルンさんがキャスパーさんの首に腕をかけて、僕達から離れたところに連れて行ってしまった。
「申し訳ない!」
ジャンさんが頭を下げた。パウロさんも続いて僕達に向かって頭を下げる。
「キャスパーは、騎士見習いなのだが全く教育ができていなかった。無礼な発言や迷惑な行動をお詫びする」
「騎士見習い、なんですか」
「肩書きはそうだ」
「肩書き?」
「いや……、冒険者上がりの騎士見習いだ」
「冒険者上がり……」
ベルンさんとキャスパーさんの様子を見やると、草むらの中を進んでいく先に檻らしきものが見えた。
丈の高い草に隠れているのがチラリと見えた。
その檻に近づいて行っていると思ったら、キャスパーさんが大きな声を上げた。
「何だ?死にかけてるじゃないか!!」
キャスパーさんの声が大きかったからなのか、話している途中だった兄上とジャンさんもキャスパーさんの方に振り向いた。
檻の側でベルンさんがこちらに向かって手を振って言った。
「なんでもない!少し前に捕まえた団子兎が、ぐったりしてたってだけだ」
「ああ」と小さく声を漏らしたジャンさんは納得した様子で兄上の方に向き直った。
兄上は、キャスパーさん達の方にもう一度目を向けてから、ふぅっと息を吐いた。
「……団子兎を狭いところに閉じ込めても、跳ねて身体をぶつけまくって弱っていくと思いますけど」
「え?」
兄上の言葉を聞いて、ジャンさんが檻がある方角に顔を向けた。
「身体を檻にぶつけて弱っていく……のか……?」
ボソボソと呟いた。
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