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第1章
第197話 帰路
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「団子兎はそういう性質ですよ。じゃあ、これで……」
「ちょ、ちょっと待って!」
兄上が冷めた口調で言い放ってヒラリと馬に乗ったら、ジャンさんが呼び止めた。
「め、迷惑を……、騎士団に所属するものが迷惑をかけたことは謝る。申し訳なかった。だが……、もしもまだ、殿下の訓練に協力をしてくれる気があるようだったら、
どんな魔獣なら生捕りにしても問題ないか知っていたら教えてくれないか?」
「嫌です。屋敷に運び込まれても困るので」
言葉を選びながら頼み込むように言うジャンさんに対して、兄上がキッパリとした口調で拒絶した。
ジャンさんが唖然とした様子で口をパクパクした。
「ちょちょちょ……、それは……!運び込むのは男爵殿の了承を得てからとすることを約束する!だから……」
「父に確認してきますね!それじゃ」
縋ろうとするジャンさんに、ニコリと笑みを見せて兄上は馬を進め始めた。あ!僕も行かなくちゃ!
置いてかれちゃう!
「ジャンさん、パウロさん。僕も帰ります!それじゃ!」
「ああっ!クリス君……」
「あ、これはどうぞ」
僕に向かって伸ばされたジャンさんの手に、魔石を抜いた団子兎を押し付けた。
「い、いいのかい?」
「はい。魔石も要りますか?」
兎魔獣の肉だったら、角兎の肉の方が美味しいんだよね。団子兎は小さいから解体は面倒……。あ、解体の練習にはなるけどね。でも、元々狩る予定じゃなかった魔獣だから差し出したら。ジャンさんは受け取ってくれた。
兎魔獣肉、食べたかったのかな。
「魔石は別に……、あ、いや、君達が狩った魔獣なのだから貰うわけには……」
「じゃあ、魔石だけ貰っちゃいますね!」
団子兎の魔石は緑色の風魔石だった。兄上はちょっと進んだところで僕を待つように立ち止まってこっちの様子を眺めている。
急がなきゃって思って、魔石だけをポケットに捩じ込んで、馬に飛び乗った。
ボブの兄上と馬を並べて僕を待っていてくれた。置いて行かれなくて良かった。
父上に魔獣を屋敷に持ち込む許可を出したのか確認する必要が出たからか
馬を進める速度が速い。
「ねえ、ジャンさん達、困ってたね」
兄上の乗っている馬と並走しながら話しかけると、兄上が片眉を吊り上げた。
「そりゃそうだろう。あんな、部下がいたら!」
「キャスパーさんって、ジャンさんの部下なの?」
「知らないよ!騎士見習いなら、騎士の部下だろ」
「キャスパーさん、冒険者上がりって言ってたね」
「クリス、のんびりすぎ!」
兄上が目を細めて眉間に皺を寄せた。
キッと鋭い視線を僕に向けた。
「いいか?王宮騎士団の騎士見習いが、僕達に魔獣を擦り付けたんだぞ。更に『生捕りに出来なかった』なんて文句まで言って来たんだ!ゲンティアナ家を舐めすぎだよ」
「それはジャンさんじゃなくて、キャスパーさんだよね。兄上はジャンさんにも怒ってる?」
「王宮騎士団がやらかしたんだから怒って当然だろ。
クリスだって、怒鳴られて怖がってたじゃないか」
「うん。びっくりしたね!穴掘り魔石を使っちゃったよ」
今度絡まれたりしたらと思って準備していた土の魔法陣魔石を使ってしまった。
一応、落とし穴は成功して、キャスパーさんが穴に落ちたけど、穴掘り魔法が発動したタイミングは、僕が思っていたよりも少しだけテンポが遅かったんだ。
勘の良い人だったら避けられちゃったかもしれない。魔石を投げる分を想定して魔法陣魔石から魔法が発動するタイミングを遅らせているんだけど、改良が必要だな。
発動が遅すぎて相手が通り過ぎた頃に穴掘り魔法が発動しちゃっても困るんだよね。
それなら、地面にぶつけたタイミングで発動する仕組みがあると良いのかな。
例えば魔石を薄い殻で覆ってそれが壊れたら発動するようにするとか……。でも、単純に殻が割れた時に発動しちゃうと、ぶつかったりだとか思っていないタイミングで発動しても困るんだよな。
魔力を通してから地面にぶつけて殻が壊れたタイミングだと良いかもしれないけど、殻の素材はどうしよう。ぶつかって割れた時に発動する仕組みも考えないとなぁ。
「ちょ、ちょっと待って!」
兄上が冷めた口調で言い放ってヒラリと馬に乗ったら、ジャンさんが呼び止めた。
「め、迷惑を……、騎士団に所属するものが迷惑をかけたことは謝る。申し訳なかった。だが……、もしもまだ、殿下の訓練に協力をしてくれる気があるようだったら、
どんな魔獣なら生捕りにしても問題ないか知っていたら教えてくれないか?」
「嫌です。屋敷に運び込まれても困るので」
言葉を選びながら頼み込むように言うジャンさんに対して、兄上がキッパリとした口調で拒絶した。
ジャンさんが唖然とした様子で口をパクパクした。
「ちょちょちょ……、それは……!運び込むのは男爵殿の了承を得てからとすることを約束する!だから……」
「父に確認してきますね!それじゃ」
縋ろうとするジャンさんに、ニコリと笑みを見せて兄上は馬を進め始めた。あ!僕も行かなくちゃ!
置いてかれちゃう!
「ジャンさん、パウロさん。僕も帰ります!それじゃ!」
「ああっ!クリス君……」
「あ、これはどうぞ」
僕に向かって伸ばされたジャンさんの手に、魔石を抜いた団子兎を押し付けた。
「い、いいのかい?」
「はい。魔石も要りますか?」
兎魔獣の肉だったら、角兎の肉の方が美味しいんだよね。団子兎は小さいから解体は面倒……。あ、解体の練習にはなるけどね。でも、元々狩る予定じゃなかった魔獣だから差し出したら。ジャンさんは受け取ってくれた。
兎魔獣肉、食べたかったのかな。
「魔石は別に……、あ、いや、君達が狩った魔獣なのだから貰うわけには……」
「じゃあ、魔石だけ貰っちゃいますね!」
団子兎の魔石は緑色の風魔石だった。兄上はちょっと進んだところで僕を待つように立ち止まってこっちの様子を眺めている。
急がなきゃって思って、魔石だけをポケットに捩じ込んで、馬に飛び乗った。
ボブの兄上と馬を並べて僕を待っていてくれた。置いて行かれなくて良かった。
父上に魔獣を屋敷に持ち込む許可を出したのか確認する必要が出たからか
馬を進める速度が速い。
「ねえ、ジャンさん達、困ってたね」
兄上の乗っている馬と並走しながら話しかけると、兄上が片眉を吊り上げた。
「そりゃそうだろう。あんな、部下がいたら!」
「キャスパーさんって、ジャンさんの部下なの?」
「知らないよ!騎士見習いなら、騎士の部下だろ」
「キャスパーさん、冒険者上がりって言ってたね」
「クリス、のんびりすぎ!」
兄上が目を細めて眉間に皺を寄せた。
キッと鋭い視線を僕に向けた。
「いいか?王宮騎士団の騎士見習いが、僕達に魔獣を擦り付けたんだぞ。更に『生捕りに出来なかった』なんて文句まで言って来たんだ!ゲンティアナ家を舐めすぎだよ」
「それはジャンさんじゃなくて、キャスパーさんだよね。兄上はジャンさんにも怒ってる?」
「王宮騎士団がやらかしたんだから怒って当然だろ。
クリスだって、怒鳴られて怖がってたじゃないか」
「うん。びっくりしたね!穴掘り魔石を使っちゃったよ」
今度絡まれたりしたらと思って準備していた土の魔法陣魔石を使ってしまった。
一応、落とし穴は成功して、キャスパーさんが穴に落ちたけど、穴掘り魔法が発動したタイミングは、僕が思っていたよりも少しだけテンポが遅かったんだ。
勘の良い人だったら避けられちゃったかもしれない。魔石を投げる分を想定して魔法陣魔石から魔法が発動するタイミングを遅らせているんだけど、改良が必要だな。
発動が遅すぎて相手が通り過ぎた頃に穴掘り魔法が発動しちゃっても困るんだよね。
それなら、地面にぶつけたタイミングで発動する仕組みがあると良いのかな。
例えば魔石を薄い殻で覆ってそれが壊れたら発動するようにするとか……。でも、単純に殻が割れた時に発動しちゃうと、ぶつかったりだとか思っていないタイミングで発動しても困るんだよな。
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