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⑤夫への信頼
しおりを挟む「あ、奥様ですか。四葉です」
それから数日後の休日。夫は友人と前から約束していた釣りに行くと、朝早くに出かけていった。
それすらも怪しいと思う私は、探偵に夫のスケジュールを伝えていた。 もしかしたら、宍倉円香と会うかもしれないと考えたからだ。
私は子供を連れて両親の所へ行っていた。 両親に子供と遊んでもらっている内に、四葉さんとの電話を済ませることにした。
「あの、四葉さん……。何か分かりましたか?」
と深呼吸しながら問いかける私。
「ええ。……旦那様ですが、今日は確かにご友人様と釣りに行くと行っていたんですよね?」
「はい。間違いありません」
「出掛ける時、釣り竿は持っていましたか?」
そう効かれた私は、頭をフル回転させて、記憶を思い出す。
「……いえ、確かに持ってませんでした」
確かに釣りに行くなら普通、釣り竿持っていくわよね?
「そうですか。やはり持ってませんでしたか」
「あの、持ってなかったことは……」
もはや悪い予感しかしない。 何かイヤな予感、それしかしない。
「旦那様ですが。奥様の睨んだ通り、現在宍倉円香と一緒にいます」
「っ……そうですか」
やっぱり……。やっぱり夫は、宍倉円香と浮気しているのねーーー。
「二人は数分前、ラブホテルに二人で並んで入って行かれました。……旦那様の車で」
「そうですか。ホテルに……」
やはり二人は、そういう関係なんだ。 宍倉円香と夫は、身体を重ね合う関係ってことなんだ……。
「……やはり、奥様にとってはお辛いことですよね」
私の気持ちを察してか、四葉さんはそう言ってくれた。
「……何となく、そうなのかなって思っていたので。そんなに驚きはしないですね」
「そうですか。では僕たちはこの後も二人を尾行して、証拠写真集めておきますので。……それでは」
「ありがとうございました」
電話を切って子供たちのいる部屋へと戻ると、両親が私を心配そうに見つめていた。
「実乃梨、どうしたの?」
「う、ううん。何でもない」
両親にはあまり心配を掛けたくなくて、あえて明るく振る舞っている。
「友達から電話だったの。今度の休日にランチしないかっていう連絡」
「あら、たまにはいいんじゃない? 子供預けてのんびりしてきたらいいじゃない」
と、母親は言ってくれる。
「でもね……。夫一人で見るのは大変だと思うし」
「いいわよ。子供たちは私たちが見てあげるから、安心して!」
母親は優しいから、私の付いた嘘にまで付き合ってくれる。
「そう?……じゃあお願いしようかな」
「任せて! 動物園にでも連れてってあげましょうかね、あなた」
「お~そうだな。喜ぶなきっと」
両親は嬉しそうに言ってくれる。きっと孫といられるのが嬉しいのだろう。
「毎日子育てばかりだと、ストレス溜まるでしょ?やりたいことも出来ないしね」
「うーん、確かに。全然時間ない」
母親ばお母さんだって、たまには休息も必要よ゙と、言ってくれた。
「そうだよね。そうしようかな」
「子供たち、迎えに行こうか?」
「ううん、大丈夫。行く途中に預けてくから」
「そっか。分かった」
両親がいてくれたことに、私は本当に感謝している。
両親がいてくれなかったら、私はきっとボロボロだったに違いない。
一人で抱えて悩んで、泣いてしまって。……きっと大変だったと思う。
「ありがとう。お母さん、お父さん、助かったよ」
「いいのよ、気にしないで! また連れてらっしゃい」
「ありがとう~。ほら二人とも、お家に帰るよ~」
気が付けば夜まで長居してしまった。両親に夕飯までごちそうになってしまった。
……きっと夫も何か食べてくるのだろう、円香と一緒に。
「じぃじ、ばぁば、バイバーイ!」
「バイバーイ!」
「遅くまでありがとうね、二人とも」
「気を付けて帰るんだよ」
「ありがとう。じゃあね」
私と子供たちは、そのまま自宅へと帰宅するため電車に乗り込んだ。
車は夫が乗っていってるし、電車の方が帰りが早い気がする。
「二人とも、ばぁばのハンバーグ、美味しかった?」
「うん!」
「おいしかった!」
二人ともお母さんのハンバーグに大満足だったようで、美味しいと言いながらわんぱくに食べていた。
「良かったねぇ」
「パパはもうかえってきたのかな~?」
「どうだろうね? もう帰ってきてるんじゃないかな?」
いや、帰ってきてることを祈るしかない。
出来ることなら、会いたくなんてない。他の女と会っていると知ったからこそ、会いたくない。
だけど子供たちにはそんなこと知られたくはない。だからこそ私は、いつも通りに接するしかない。
「パパ、おさかなつれたかな~?」
「どうだろうね?釣れてるといいねぇ」
「うん!」
何も知らない子供たちは、パパが釣りでお魚を釣ってきていると思ってる。
だから私は、子供たちを悲しませないようにしないといけない。
「パパにはやくあいたい~」
パパが大好きな流斗は、パパに会えるのを楽しみにしている。
「パパにじまんしちゃおう!ばぁばのハンバーグおいしかったって!」
「うん、自慢しちゃおうか」
「ぼくも~!」
「じゃあ、みんなで自慢しちゃおっか」
本当に可愛い、私たちの子供たち。可愛いからこそ、子供たちを悲しませたくない……。
「ほら二人とも、もうすぐ電車降りるからね」
「はぁーい」
目的の駅に着いて電車を降りると、三人で手を繋いで家まで歩く。
「ママ~アイスたべたーい」
「ぼくも~」
「仕方ないな。じゃあアイス買って帰ろうか」
二人がアイスを食べたいとねだるので、途中でコンビニに寄ってアイスをみんなの分買って帰ることした。
「わーい!」
「お家に帰ってから食べるんだよ?」
「はーい」
可愛い子供たち、この子たちは私たちの宝物。
「はい、お家着いたよ~」
「ただいま~」
「はい、おかえり~」
お家に入ると、リビングの灯りが付いていた。
そして夫が「おかえりなさい」と出迎えてくれた。
「パパ~!」
「パパ~ただいまぁ!」
「おかえり~!」
こうやって子供たちと遊んでいる姿を見ていると、想像通りの家族像だなと思える。
ーーー夫が浮気さえ、していなければ。
「ほら、アイス食べるんでしょ?パパの分も出してあげて、空斗」
「はぁーい! パパアイス~!」
「お、パパにもアイスあるのか?ありがとうな、空斗」
空斗と流斗は、パパの隣で美味しそうにバニラアイスを食べていた。
「パパおいしい?」
「ん、美味しいぞ」
「おいしいね、ぼくもおいしいっ!」
子供たちはパパのことが、本当に大好きなんだよね。
離婚したいと言ったら、二人はなんて言うのだろうか。なんて言ってくれるかな……。
離婚しないでほしいって、言ってくれるかな……。
「ママ~パパおさかな、つれなかったんだって!」
「……そうなの?」
「うん! ね、パパ!」
「ああ」
「そっか。残念だねぇ」
魚なんて釣れてるわけがない。 だって夫は、今日一日ずっと宍倉円香と浮気していたんだから。
宍倉円香とホテルに行っていたんだから、釣りになんて行ってないのだ。
「ママ、子供たちお風呂に入れて来ようか?」
「え、いいの?」
「ああ。子供たちも入りたがってるし」
「……じゃあ、お願いしようかな」
「了解!」
旗から見たら本当にいい夫、本当にいい父親。
……だけどそれは、夫の表の顔。裏の顔は、私以外の女と浮気をしている最低の男なんだ。
「っ……許せない……」
やっぱり許せない。……私はあなたことを許せないよ、あなた。
私のことだけを思って、私のことを愛してくれると思っていたのに。 もちろん、子供たちのことも愛してくれてるのは、分かっているけど。
でもやっぱり、現実を受け入れられないーーー。
「ママ~ごちそうさまでした!」
「はーい。じゃあゴミ捨てしようね」
「はぁーい!」
我が家の子供たちは本当に素直で良い子だ。そんな夫も、子供たちを本当に可愛がってくれる。
子供たちにとっては、本当にいいパパなんだよ。
ーーーだからこそ、こんな選択をするのが辛い。離婚しなければならないという、その辛い選択を。
子供たちはきっと悲しむ、きっと泣いてしまうだろう。
だけどもうね、後戻りは出来ないーーー。
私は母親だから、子供を守るのが役目だから。だから絶対に、子供たちだけは私が守ってみせる。
何があっても、それが例えどんな結果になろうともーーー。
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