【完結】私、実はサレ妻でした。

水沼早紀

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⑥苦しい愛情

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「パパ~ママ~。おやすみなさぁーい」

「おやすみなさぁーい」

「はーい。おやすみ」

「おやすみ」

 夜八時半時になり、子供たちは兄弟仲良く寝室へと向かって行った。

「本当にいい兄弟になったな、あの二人」

 そんな子供たちの後ろ姿を眺めながら、夫はそんなことを口にした。

「……うん、そうだね」
  
 子供たちの成長を感じるのはとても嬉しいことだし、親としてはとても感慨深い。

「なあ、実乃梨」

 そして突然、夫に問いかけられる。

「……何?」
  
 夫は私に何を言いたいのだろう。

「今度二人だけで、旅行でも行かないか?」

「……は?」

 え、いきなり何……? 何で突然、旅行……?

「いや、子供出来てから子育てに忙しくて、二人だけで旅行なんて行けなかっただろ?……それにさ、俺たち新婚旅行も行けなかっただろ?」

 確かに新婚旅行には、行けなかった。子供が出来て結婚しても、子供が産まれてからは子育てに集中してしまっていたから。  
 なかなかそんな予定も立てることは、出来なかった。

「でも今更、新婚旅行なんて……。それ子供たちを預けないといけないし」
 
 それに浮気している夫と二人で旅行なんて、行きたくない。……行きたい訳がない。
 そもそも私たち、結婚式もしていないのに。

「子供たちは、うちの両親に預かってもらえばいいよ」

「……そこまでしてまで、旅行なんて行きたくない」

 夫にそう告げると、夫は不思議そうに「……実乃梨?どうした?」と顔を覗き込んでくる。

「ねえ、あなた」

「ん?……どうした?」

 私は夫の発言に腹が立った。ムカついてしまった。

「私ね、あなたのことは愛してるの」

「……実乃梨?」

「でもね……。愛してるからこそ、許せないこともあるんだよ」

 私が言った言葉を、夫は理解したのかなんて分からない。
 でも私は、今の気持ちをぶつけるしかなかった。

「実乃梨……。俺、君に何かしたか?」

「自分で分からないの?……胸に手を当てて、よく考えてみたら?」

 私の怒りはしばらく治まりそうになかった。
 嘘を付いてまで他の女と浮気して、家に帰れば堂々と家族と接している。
 そんな夫のことを、私は許せる訳がない。

「実乃梨……」
  
 そんな夫は、私に触れようとしてくる。

「やめてっ……!」

 私はそれを拒んだ。

「実……乃梨……?」

「私に触らないで……。あなたに触れてほしくない」

 夫のことを愛しているなら、触れてほしいと普通は思うだろう。……でも今の私には、そんなことも許したくない。
 例え愛しているとしても、許せないこともあるんだということを自覚してほしい。

「実乃梨……どうした?」

「……ごめん。私も今日は疲れたから、もう寝るね」

「実乃梨……!」

 私は夫を避けるように寝室の扉を閉めた。

「っ……ごめん……」
  
 私やっぱり、もう耐えられない……。あなたと家族として一緒にいたいと思ってる。
 全ては子供たちのためのためだと、そう思ってるの。

「実乃梨……ごめんな。子供のこと、実乃梨に任せっきりにしてた俺にも責任があるよな」

 ……違う。私が欲しいのは、そんな言葉じゃない。

「でも実乃梨、聞いてくれ。俺は実乃梨のことも、子供たちのこともすごく愛しているんだ。……俺は実乃梨と結婚して良かったと思ってるし、今本当に幸せだと思ってる」
 
 だから……。私が欲しいのは、そんな言葉じゃないんだってば……!
 私が欲しいのは、そんな甘い言葉じゃないのよ……!

「……実乃梨のこと、俺は今でも愛してる。その言葉に嘘はないよ」

 だから、やめてって言ってるのに……。

「だから実乃梨、頼む。俺を拒絶するのはやめてくれ……。俺すごく寂しい」

「……もう放っといて。おやすみ」
  
 私はそのまま、ベッドに潜り込んだ。

「っ……何でっ……」
 
 私のことを愛しているなら、何で浮気なんてするのよ……。愛しているなら、普通は浮気なんてしないものでしょ?
 そうだとしたら、私たちのことだけ愛してくれるものなんじゃないの……?

「分からない……。分からない……」

 愛してるのは、私も同じ。……でももう、分からない。 
 私は本当に、夫とこの先も一緒に生きていけるのかどうか、そんなの分からない。

 そんなことを考えているうちに、私はいつの間にか眠ってしまったようだった。
 起きたら朝七時を過ぎていた。

「やばっ……!」 
 
 もうこんな時間!? 早く起きないと……!

「おはよう!」
 
「ママ~おはよう!」

「おはよう、ママ~」

 起きてリビングに行くと、夫と子供たちはすでに朝ご飯を食べていた。

「……え?」

「おはよう、ママ。朝ご飯、出来てるよ?」

「あ……ありがとう……パパ」

 夫はトーストを焼きながら、笑顔を向けていた。
 
「ママはマーガリンにする?それともジャム?」

「じゃあ……マーガリンにしようかな」

 昨日の一件から夫と気まずくなるのは、分かっていた。
 でも子供たちの前でそんな雰囲気を出せないからこそ、いつも通りにする。
 
「ママ、おねぼうさんだったの~?」

「そう。寝過ぎちゃったみたい」

「ママおねぼうさぁーん」

「ごめんねぇ」

 子供たちにお寝坊さんだと言われてしまったが、こうなったのも自分のせい。
 仕方ないと言いたい所だけど、そういう訳にもいかない……。

「空斗、流斗。パパは今日お家でお仕事だから、帰ったらパパと遊ぼうか」

「やったぁ!あそぶ!」

「ぼくもっ!」

 えっ……。家で仕事? そんなの私、聞いてないんだけど……。
 
「よし、早く食べて保育園行く準備しような」

「はぁーい!」

「はぁーい!」

「よし、いい返事だ!」

 朝からこんな親子のやり取りを見ていると、我が家は平和だなと感じてしまう。
 子供たちには優しい父親で、大好きな父親だ。

「ママ、いってきまーす!」

「いってきまーす!」

「行ってらっしゃい。 パパ、子供たちのことよろしくね」

「任せろ」
 
 夫と子供たちを見送った後、私は朝ご飯の後片付けを始める。
 夫はいつも通りに私に接してきた。何事もなかったかのように。
 ーーー一体、夫はどういうつもりなのだろう。

「……はぁ」

 夫が何を考えているのか、分からない。 私の言ったことを理解したのだろうか……。

「ただいま」

「……おかえり」

 数分後、夫は戻ってきた。

「……在宅なんて、聞いてないよ」

「ごめん、言ってなかったな」
  
 は……? 何なのそれ……。

「……実乃梨、昨日はごめん」

 夫は私を後ろからそっと抱きしめてくる。

「何……。触らないでって言ったでしょ……」

「実乃梨、愛してるから。実乃梨のこと、ずっと愛してる」

 そうやって耳元で囁かれた後、夫は私の首元にそっとキスをした。 

「ん、ちょっとっ……。やめてってば……」

 夫のことを避けようとしたけど、力強く抱きしめられてしまい、うまく逃げられなくなった。 

「実乃梨、実乃梨……」

 夫は私のソファに押し倒して、熱くキスをしてくる。

「んっ、待っ……てっ……」

 今は夫に触れてほしくない。触れてなんて、ほしくないのに……。

「実乃梨……愛してる」

「やめ……。ダメ……だってばっ」

 何度も名前を呼ばれてしまい、夫のことを押し返せなくなってしまった。

「あぁっ……」

 夫の手は私の服の中に入れて、胸元とそしてスカートの中へと侵入してくる。

「んっ、あなたっ……」

 夫には触れてほしくないと思っているのに、その手を拒むことが出来ないーーー。

「実乃梨……っ」

「はぁっ……んっ」

 敏感なところに触れられて拒むことの出来ない私は、やっぱり臆病なのだろうか……。
 夫に服を脱がされ、夫も服をせかせかと脱いでいく。

「ごめん、実乃梨……挿れたい」
 
「んっ……んぁっ……!」

 そのまま、夫は私の足をぐっと持ち上げて中に力強く侵入してくる。

「実乃梨っ……愛してるから」

「あっあっ……んっ」

 夫が奥深く私の中を突いてくるけど、私は甘くて厭らしい声を漏らすことしか出来ない。
 
「あっ……あなたっ……いやっ」

 夫とこうして身体を重ねてしまう今、私は夫のことを拒むことを許されないのかもしれないーーー。

「実乃梨っ、もっと乱れてみせて……」

「あぁっ……! んっ、はぁっ……っ」

 正常位の状態で何度も奥を責め立てられ、敏感なところに触れられてしまう。

「ねっ、奏雨……」

「久しぶりに名前、呼んでくれたな」

 夫の名前を最後に呼んだのは、いつだっけ……。それすらも覚えていない。

「……あんっ、あぁっ……っ、気持ちいい」

 いつしかその快感は、快楽へと変わっていく。夫の身体を抱かれている時は、やっぱり幸せなんだと思ってしまう。
 例えそれが゙錯覚゙だとしても……。

「実乃梨……愛してる。 もっとほしい、実乃梨が」

「はぁっ……っ、んっ」

 夫は私の両手を絡めるように、ギュッと力強く握りしめる。

「かな、めっ……もう、イッちゃうっ」

 触れてほしくないのに、こんなに気持ちいいエッチをされたら、快感に負けて気持ちよさだけが勝ってしまう。
 夫は「ごめん、今日はもっと激しくしたい」とそのまま腰の動きを更に早めていく。 

「あっあっ……やぁっ……あんっ」

 夫の動きが早くなるたびに、ソファがギチギチといやらしく音を立てる。 
 そして夫は、私の身体をギュッと抱きしめ、そのまま私の中で理性を解き放ったのだった。

「……実乃梨、辛い思いさせてごめんな」 

  ソファの上で裸の状態のまま、私を抱きしめる夫。
 今の私には、その体温ですら心地よく感じてしまうのだった。
 夫が浮気していると知っても、私はやっぱり夫のことを、愛しているんだと感じてしまったーーー。
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