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第二十二章 前を向く為にも
迂闊だった
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『旦那が死んだ……。死んでしまった。それも我が子を守ってーー……』
私の頭の中に声が届く。何かを諦めたような声が。
背景は葬式から家族で暮らしている家に変わる。
泣き疲れている幼い女の子を見下すように見ているのは母だ。
そして、幼い女の子は、前世の私。
お仏壇の前にある座布団に丸まって寝ている。
『それなのに、それなのに……私の最愛の人が命をかけたというのに、事故の瞬間だけ記憶を無くしたなんて。許せない。誰のおかげで今を生きてると思ってるの?』
母は拳を握る。唇を力強く噛んでいるせいで、血が出ている。
また背景が変わる。今度は寝室だ。
母は家族写真をじっと見た後、糸が切れたように思いっきり叩きつけた。
パリーンっと硝子が無惨に割れる。
『……私の大切な人を奪っておいて、許せない。許せない許せない許せない!!!! まだ幼いから罪はない? あるじゃない!!! 人を殺しておいて許されるはずないじゃない。あんな子なんて……死んでいまえばいいのに。彼の代わりにあの子が死ねば良かったんだ! こんな事になるなら、産むんじゃなかった。一家の恥さらしだわ』
母は壊れたように泣きながら笑う。硝子の破片を持つと手が傷付いたのか、血が滲み、床に赤いシミを作る。
『お母……さん??』
『ああ、驚かせたわね。手が滑っちゃったのよ。気にしないで』
『……お母さんの子供は私だけだよ。あの子は知らない。赤の他人、そうだよね』
寝室に入ってきたのは私の姉だった。姉は母の様子を見た後、近付き、私を他人として接するように促していた。
そういえば、姉に言われた事がある。
〔あんたが産まれてこなければ両親の愛情は私だけのものだった。全てあんたが悪い。消えてしまえ、疫病神〕
と、傷付く言葉を投げかけられたのよね。
姉は、私が嫌いなんだ。そしてそれは……父が亡くなってから隠すことなく私に言葉をナイフにして投げるられる。
記憶を自ら封印してしまったのもあり、当時はなんで敵視されてるのかが理解出来なかった。
どうして母は私を産んだの?
産んだ事を後悔するならば産まないでほしかった。
私は、望まれて産まれてきてなんていなかった。
私に母が優しく笑いかけられた記憶が無い。姉には何かと責められて、私自身、心から笑った記憶が無かった。
唯一笑顔になったのは、乙女ゲームをプレイしている時。その時だけは辛さも孤独感も忘れられたから。
母や姉の心無い言葉を一つ一つ思い出し、恐怖して息を荒くなった。
苦しくてその場に座り込み、胸を抑え、下を向く。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が上手く出来なくなって、苦しい。気持ちが激しく動揺して、呼吸を整えることが出来ない。
「苦しいか?」
子狐は私の肩からぴょんと飛び降りた。
ゆっくりと顔を上げる。
「誰も傷付けることが無い世界に連れて行くことが出来るぞ。何もかも忘れてその世界で生きよう」
その悪魔の囁きは私には魅力的だった。もう苦しまなくていい。辛いのは嫌だ。
辛いならいっその事……全て忘れてしまいたい。
手を子狐の方に差し出そうとしたが、途端に手から優しい光が現れ、私の全身を光で包み込む。
動揺していると、さっきまで苦しかったのが嘘のように気持ちが落ち着いた。
光はとても温かくて優しくて……、ゆっくりと冷静さを取り戻した。
「……迂闊だった。信じるところだった。悪魔、葬式や過去の出来事も全て私の記憶から読み取ったのを実体化しましたよね。……悪魔は記憶を頼りに姿を化ける。その応用、でしょ?」
「なんだバレたか」
子狐は残念そうに舌打ちすると、呪文を唱える。すると、さっきまでの背景や人物が消える。
葬式に戻る。でも、この葬式も……私が死んだ後じゃないだろう。だって、時空を超えて葬式の風景を見るなんて有り得ないもの。
だから、この葬式も偽物だ。私の……(こうだったら良いのに)という思いから生み出したものだと思う。
だったら、私のすべき事は……。
私の頭の中に声が届く。何かを諦めたような声が。
背景は葬式から家族で暮らしている家に変わる。
泣き疲れている幼い女の子を見下すように見ているのは母だ。
そして、幼い女の子は、前世の私。
お仏壇の前にある座布団に丸まって寝ている。
『それなのに、それなのに……私の最愛の人が命をかけたというのに、事故の瞬間だけ記憶を無くしたなんて。許せない。誰のおかげで今を生きてると思ってるの?』
母は拳を握る。唇を力強く噛んでいるせいで、血が出ている。
また背景が変わる。今度は寝室だ。
母は家族写真をじっと見た後、糸が切れたように思いっきり叩きつけた。
パリーンっと硝子が無惨に割れる。
『……私の大切な人を奪っておいて、許せない。許せない許せない許せない!!!! まだ幼いから罪はない? あるじゃない!!! 人を殺しておいて許されるはずないじゃない。あんな子なんて……死んでいまえばいいのに。彼の代わりにあの子が死ねば良かったんだ! こんな事になるなら、産むんじゃなかった。一家の恥さらしだわ』
母は壊れたように泣きながら笑う。硝子の破片を持つと手が傷付いたのか、血が滲み、床に赤いシミを作る。
『お母……さん??』
『ああ、驚かせたわね。手が滑っちゃったのよ。気にしないで』
『……お母さんの子供は私だけだよ。あの子は知らない。赤の他人、そうだよね』
寝室に入ってきたのは私の姉だった。姉は母の様子を見た後、近付き、私を他人として接するように促していた。
そういえば、姉に言われた事がある。
〔あんたが産まれてこなければ両親の愛情は私だけのものだった。全てあんたが悪い。消えてしまえ、疫病神〕
と、傷付く言葉を投げかけられたのよね。
姉は、私が嫌いなんだ。そしてそれは……父が亡くなってから隠すことなく私に言葉をナイフにして投げるられる。
記憶を自ら封印してしまったのもあり、当時はなんで敵視されてるのかが理解出来なかった。
どうして母は私を産んだの?
産んだ事を後悔するならば産まないでほしかった。
私は、望まれて産まれてきてなんていなかった。
私に母が優しく笑いかけられた記憶が無い。姉には何かと責められて、私自身、心から笑った記憶が無かった。
唯一笑顔になったのは、乙女ゲームをプレイしている時。その時だけは辛さも孤独感も忘れられたから。
母や姉の心無い言葉を一つ一つ思い出し、恐怖して息を荒くなった。
苦しくてその場に座り込み、胸を抑え、下を向く。
「はぁ……はぁ……」
呼吸が上手く出来なくなって、苦しい。気持ちが激しく動揺して、呼吸を整えることが出来ない。
「苦しいか?」
子狐は私の肩からぴょんと飛び降りた。
ゆっくりと顔を上げる。
「誰も傷付けることが無い世界に連れて行くことが出来るぞ。何もかも忘れてその世界で生きよう」
その悪魔の囁きは私には魅力的だった。もう苦しまなくていい。辛いのは嫌だ。
辛いならいっその事……全て忘れてしまいたい。
手を子狐の方に差し出そうとしたが、途端に手から優しい光が現れ、私の全身を光で包み込む。
動揺していると、さっきまで苦しかったのが嘘のように気持ちが落ち着いた。
光はとても温かくて優しくて……、ゆっくりと冷静さを取り戻した。
「……迂闊だった。信じるところだった。悪魔、葬式や過去の出来事も全て私の記憶から読み取ったのを実体化しましたよね。……悪魔は記憶を頼りに姿を化ける。その応用、でしょ?」
「なんだバレたか」
子狐は残念そうに舌打ちすると、呪文を唱える。すると、さっきまでの背景や人物が消える。
葬式に戻る。でも、この葬式も……私が死んだ後じゃないだろう。だって、時空を超えて葬式の風景を見るなんて有り得ないもの。
だから、この葬式も偽物だ。私の……(こうだったら良いのに)という思いから生み出したものだと思う。
だったら、私のすべき事は……。
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