236 / 240
第二十三章 未来に戻る
私は敵じゃない
しおりを挟む
少し肌寒く、身動ぎしたら何やらふわふわなのが私の背中を支えてくれる。
温かい……。そう思って目を開けると、私は怪我をしているジョセフさんのお腹を枕替わりにして寝ていた。
背中を支えているふわふわなのが尻尾だった。
ジョセフさんは不機嫌そうに「起きた」と言っていて、全力で謝った。
「ご、ごめんなさい!! 怪我してるのに、なんてことを」
落ち込んでいるとジョセフさんは呆れたような顔になる。
「もう傷口は塞がってる。それよりも、置かれている状況分かってるの?」
「置かれてるって」
私はそこで眠る前の出来事を思い出した。今いる場所は牢屋だ。それに、私の知っている人物の面影と同姓同名な子供。
「あの。ここはどこなのでしょうか?」
「……過去のようだ。おかげでごっそりと魔力が消耗してしまって思うように動かせない」
「過去……? でもジョセフさんは時空を越えられないんじゃ」
「言っただろう、呪文を間違えたって。その呪文がたまたま時空を越える系だったらしい。呪文で魔法の威力や難易度も変わってくるが……闇属性に反応したんだろう。間違えた呪文と闇属性が反応して、通常では有り得ない事が起こった」
「そんなこと、あるんですか?」
「俺は悪魔なんだ。使える術は闇に近い。波長が合うのは必然的だ」
当然だ! とでも言うようにジョセフさんは胸を張って威張っている。
さっきまで気が動転してて気にならなかったのだが、以前と比べて口調が変わってた。
「なんだか、口調が変わってますね」
「嫌か?」
「いいえ、ジョセフさんの言いやすい方でいいですよ。前の口調は慣れてない感じがしてましたし」
ふふっと微笑むと、ジョセフさんは顔を背けた。
私は今いる場所と状況を整理する為に言葉にした。ジョセフさんにも聞いてほしいし。
「今いる場所って……王城? え、じゃああの子供はアレン王太子殿下ということ!?」
「そのようだ」
じゃあじゃあ、護衛していた男の子は、私の知っているキースさん。でもそれならオリヴァーさんは?
そもそもあのアレン様は何歳!? かなり幼かったわよね。しかも性格も穏やかよりも少しやんちゃそうだし……。
頭が痛くなってきた。
「……お前は表情がコロコロ変わるんだな」
「昔から感情が表に出やすいようで……必死に出さないようにしてるんですが、なかなか難しくて」
そう、感情が表に出やすい。すぐに私の表情を見て何かを感じ取るんだよ。みんな。
私には演技の才能も感情をコントロールすることさえ出来ないらしい。
はぁ……と、ため息をしてると、声をかけてきた人物がいたので私は声のする方へ向ける。
「出ろ」
そう言った人物はオリヴァーさんの面影がある。口調は冷たいし、冷ややかな目で私を見ている。
こんなに違うのか。私を護衛してくれた時のオリヴァーさんはとても優しくて何よりも気さくだった。
それはキースさんも同じか。今のオリヴァーさんとキースさんは私を見る目はまるで……犯罪者を見るようなんだもん。
私はゆっくりと立ち上がった。ジョセフさんの身体を持ち上げてギュッと抱きかかえる。
「!? お、おい!?」
「抱きしめさせてください。……怖いんだもん」
「……抱き枕じゃないんだが」
「知ってます」
ジョセフさんは最初は暴れたけど、すぐに大人しくなった。
私はオリヴァーさんに言われるがまま、牢屋から出ると念の為に私とジョセフさんに魔力封じの枷を嵌める。
「王様がお呼びだ。抵抗するなよ」
歩きながらも行先を教えてくれるけど、やっぱりその冷たい態度には慣れなくて本音を言ってしまった。
「……抵抗はしません。ただ、冷たい視線を向けるのはやめてください。慣れてないので」
オリヴァーさんは私の言葉に首を傾げたがすぐに何かを納得して口を開いた。
「?? お前、王族の命を狙ってるのに気弱なんだな。ああ、でも女なら気の弱いフリして誘惑も可能か」
その言葉に立ち止まって俯く。急に立ち止まったから不機嫌そうにオリヴァーさんが強引に私の腕を掴もうとした。
私は、オリヴァーさんの腰につけてある短剣に狙いを定めて、奪い取る。
一瞬の隙をつかれたオリヴァーさんは動揺したが、私は構わず足蹴りをして転ばせる。
すると、オリヴァーさんは後ろに倒れ、体制を立て直す前に首元に刃を当てる。
「女だからって、誰にでも誘惑するなんて思わないで。女だからって関係ない。それに……私は誰も殺したくなんてない。決めつけないでよ、私は敵じゃない」
信じてくれないのは知っている。だって信ぴょう性なんて無いもの。
それでも、信じてほしい。涙をボロボロと流す。それでも必死に訴える。
オリヴァーさんが混乱しながらも口を開いた。
「敵じゃないって……、この状況で言われても」
言われて気付いた。今の状況で敵じゃないって言われても信じられないはずだと。
いや、だって……仮にもアレン様の護衛騎士、こんな素人に簡単に短剣を奪わるなんて思わなかった。
ついイラッとして、体が勝手に。
しかも短剣を持つと同時にジョセフさんを放してしまったので、少し寂しさがある。
身体能力はあんまり無いけど、人って腹が立つと普段とは違う力を発揮するのね。
「仮にも王族に仕えてる方なので、簡単に短剣を奪えるなんて思わなくて……その」
私は目を泳がしていると、吹き出しながら笑っている人物がいた。
その声の方を向くと、丁度大きな扉があって、扉を少し開けて私とオリヴァーさんを見ながらも涙目で笑っているアレン様がいた。
「強いな。オリヴァーを倒すとは、しかもお情けもかけるなんて」
……あらぬ誤解を生んでしまった。
温かい……。そう思って目を開けると、私は怪我をしているジョセフさんのお腹を枕替わりにして寝ていた。
背中を支えているふわふわなのが尻尾だった。
ジョセフさんは不機嫌そうに「起きた」と言っていて、全力で謝った。
「ご、ごめんなさい!! 怪我してるのに、なんてことを」
落ち込んでいるとジョセフさんは呆れたような顔になる。
「もう傷口は塞がってる。それよりも、置かれている状況分かってるの?」
「置かれてるって」
私はそこで眠る前の出来事を思い出した。今いる場所は牢屋だ。それに、私の知っている人物の面影と同姓同名な子供。
「あの。ここはどこなのでしょうか?」
「……過去のようだ。おかげでごっそりと魔力が消耗してしまって思うように動かせない」
「過去……? でもジョセフさんは時空を越えられないんじゃ」
「言っただろう、呪文を間違えたって。その呪文がたまたま時空を越える系だったらしい。呪文で魔法の威力や難易度も変わってくるが……闇属性に反応したんだろう。間違えた呪文と闇属性が反応して、通常では有り得ない事が起こった」
「そんなこと、あるんですか?」
「俺は悪魔なんだ。使える術は闇に近い。波長が合うのは必然的だ」
当然だ! とでも言うようにジョセフさんは胸を張って威張っている。
さっきまで気が動転してて気にならなかったのだが、以前と比べて口調が変わってた。
「なんだか、口調が変わってますね」
「嫌か?」
「いいえ、ジョセフさんの言いやすい方でいいですよ。前の口調は慣れてない感じがしてましたし」
ふふっと微笑むと、ジョセフさんは顔を背けた。
私は今いる場所と状況を整理する為に言葉にした。ジョセフさんにも聞いてほしいし。
「今いる場所って……王城? え、じゃああの子供はアレン王太子殿下ということ!?」
「そのようだ」
じゃあじゃあ、護衛していた男の子は、私の知っているキースさん。でもそれならオリヴァーさんは?
そもそもあのアレン様は何歳!? かなり幼かったわよね。しかも性格も穏やかよりも少しやんちゃそうだし……。
頭が痛くなってきた。
「……お前は表情がコロコロ変わるんだな」
「昔から感情が表に出やすいようで……必死に出さないようにしてるんですが、なかなか難しくて」
そう、感情が表に出やすい。すぐに私の表情を見て何かを感じ取るんだよ。みんな。
私には演技の才能も感情をコントロールすることさえ出来ないらしい。
はぁ……と、ため息をしてると、声をかけてきた人物がいたので私は声のする方へ向ける。
「出ろ」
そう言った人物はオリヴァーさんの面影がある。口調は冷たいし、冷ややかな目で私を見ている。
こんなに違うのか。私を護衛してくれた時のオリヴァーさんはとても優しくて何よりも気さくだった。
それはキースさんも同じか。今のオリヴァーさんとキースさんは私を見る目はまるで……犯罪者を見るようなんだもん。
私はゆっくりと立ち上がった。ジョセフさんの身体を持ち上げてギュッと抱きかかえる。
「!? お、おい!?」
「抱きしめさせてください。……怖いんだもん」
「……抱き枕じゃないんだが」
「知ってます」
ジョセフさんは最初は暴れたけど、すぐに大人しくなった。
私はオリヴァーさんに言われるがまま、牢屋から出ると念の為に私とジョセフさんに魔力封じの枷を嵌める。
「王様がお呼びだ。抵抗するなよ」
歩きながらも行先を教えてくれるけど、やっぱりその冷たい態度には慣れなくて本音を言ってしまった。
「……抵抗はしません。ただ、冷たい視線を向けるのはやめてください。慣れてないので」
オリヴァーさんは私の言葉に首を傾げたがすぐに何かを納得して口を開いた。
「?? お前、王族の命を狙ってるのに気弱なんだな。ああ、でも女なら気の弱いフリして誘惑も可能か」
その言葉に立ち止まって俯く。急に立ち止まったから不機嫌そうにオリヴァーさんが強引に私の腕を掴もうとした。
私は、オリヴァーさんの腰につけてある短剣に狙いを定めて、奪い取る。
一瞬の隙をつかれたオリヴァーさんは動揺したが、私は構わず足蹴りをして転ばせる。
すると、オリヴァーさんは後ろに倒れ、体制を立て直す前に首元に刃を当てる。
「女だからって、誰にでも誘惑するなんて思わないで。女だからって関係ない。それに……私は誰も殺したくなんてない。決めつけないでよ、私は敵じゃない」
信じてくれないのは知っている。だって信ぴょう性なんて無いもの。
それでも、信じてほしい。涙をボロボロと流す。それでも必死に訴える。
オリヴァーさんが混乱しながらも口を開いた。
「敵じゃないって……、この状況で言われても」
言われて気付いた。今の状況で敵じゃないって言われても信じられないはずだと。
いや、だって……仮にもアレン様の護衛騎士、こんな素人に簡単に短剣を奪わるなんて思わなかった。
ついイラッとして、体が勝手に。
しかも短剣を持つと同時にジョセフさんを放してしまったので、少し寂しさがある。
身体能力はあんまり無いけど、人って腹が立つと普段とは違う力を発揮するのね。
「仮にも王族に仕えてる方なので、簡単に短剣を奪えるなんて思わなくて……その」
私は目を泳がしていると、吹き出しながら笑っている人物がいた。
その声の方を向くと、丁度大きな扉があって、扉を少し開けて私とオリヴァーさんを見ながらも涙目で笑っているアレン様がいた。
「強いな。オリヴァーを倒すとは、しかもお情けもかけるなんて」
……あらぬ誤解を生んでしまった。
1
あなたにおすすめの小説
悪役令息(冤罪)が婿に来た
花車莉咲
恋愛
前世の記憶を持つイヴァ・クレマー
結婚等そっちのけで仕事に明け暮れていると久しぶりに参加した王家主催のパーティーで王女が婚約破棄!?
王女が婚約破棄した相手は公爵令息?
王女と親しくしていた神の祝福を受けた平民に嫌がらせをした?
あれ?もしかして恋愛ゲームの悪役令嬢じゃなくて悪役令息って事!?しかも公爵家の元嫡男って…。
その時改めて婚約破棄されたヒューゴ・ガンダー令息を見た。
彼の顔を見た瞬間強い既視感を感じて前世の記憶を掘り起こし彼の事を思い出す。
そうオタク友達が話していた恋愛小説のキャラクターだった事を。
彼が嫌がらせしたなんて事実はないという事を。
その数日後王家から正式な手紙がくる。
ヒューゴ・ガンダー令息と婚約するようにと「こうなったらヒューゴ様は私が幸せする!!」
イヴァは彼を幸せにする為に奮闘する。
「君は…どうしてそこまでしてくれるんだ?」「貴方に幸せになってほしいからですわ!」
心に傷を負い悪役令息にされた男とそんな彼を幸せにしたい元オタク令嬢によるラブコメディ!
※ざまぁ要素はあると思います。
※何もかもファンタジーな世界観なのでふわっとしております。
気配消し令嬢の失敗
かな
恋愛
ユリアは公爵家の次女として生まれ、獣人国に攫われた長女エーリアの代わりに第1王子の婚約者候補の筆頭にされてしまう。王妃なんて面倒臭いと思ったユリアは、自分自身に認識阻害と気配消しの魔法を掛け、居るかいないかわからないと言われるほどの地味な令嬢を装った。
15才になり学園に入学すると、編入してきた男爵令嬢が第1王子と有力貴族令息を複数侍らかせることとなり、ユリア以外の婚約者候補と男爵令嬢の揉める事が日常茶飯事に。ユリアは遠くからボーッとそれを眺めながら〘 いつになったら婚約者候補から外してくれるのかな? 〙と思っていた。そんなユリアが失敗する話。
※王子は曾祖母コンです。
※ユリアは悪役令嬢ではありません。
※タグを少し修正しました。
初めての投稿なのでゆる〜く読んでください。ご都合主義はご愛嬌ということで見逃してください( *・ω・)*_ _))ペコリン
【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます
宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。
さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。
中世ヨーロッパ風異世界転生。
乙女ゲームで婚約破棄をリアルに体験するのはごめんだ
いつき
恋愛
身近に最上の推しがいたら、例え結ばれなくても人参をぶら下げた馬にでもなると言うものですよね?
両親を喪い平民から貴族になると同時に、前世で見た乙女ゲーム系アニメの最推しが義兄になったレンファラン
貴族の子女として家の為に婚姻?
前世の記憶で領の発展に貢献?
推しの役に立ちたいし、アニメ通りの婚約破棄だけは避けたいところだけれど…
【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた
22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。
ブスすぎて嫁の貰い手がないから閨勤侍女になれと言われたので縁を切ります、完全に!完全縁切りの先にあったのは孤独ではなくて…
ハートリオ
恋愛
ルフスは結婚が決まった従姉の閨勤侍女になるよう父親に命令されたのをきっかけに父に無視され冷遇されて来た日々を終わらせようとブラコン父と完全に縁を切る決意する。
一方、従姉の結婚相手はアルゲンテウス辺境伯とのことだが、実は手違いがあって辺境伯が結婚したいのはルフス。
そんなこんなの異世界ファンタジーラブです。
読んでいただけると嬉しいです。
悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。
槙村まき
恋愛
スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。
それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。
挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。
そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……!
第二章以降は、11時と23時に更新予定です。
他サイトにも掲載しています。
よろしくお願いします。
25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる