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第十二章 動き始めた……○○フラグ
空中庭園
しおりを挟む夕日が沈みかかり、貴族生徒は帰っていて学園内には居ない。
居るとしたら先生ぐらいだろう。
その先生も書類と睨めっこしている。
来る途中で職員室を通ったら疲れた顔をしながら書類に目を通したり、書いていたりしていた。
私は一呼吸してから空中庭園の扉に手を置いて、押す。
なぜ、殿下が空中庭園を待ち合わせ場所に指定したのかは分からない。けど、今わかることは私にとって、良くないことが起ころうとしていることだけ。
お昼休みに指定場所を通信用の魔導具を使って言われるとは思わなかったので内心パニックになりつつも、必死に人気(ひとけ)のないところを探すのは大変だったけど。
キィーーッと、
重たい扉がゆっくりと動き出す。緑と白が基準となっている扉は庭園だとわかるように半透明になっている。
その扉の外側から見ると人一人居ないように見えるが、空中庭園内には人が居る。
人が外側だと分からないような特殊な加工を施されている。
空中庭園内は、花の甘い香りが鼻腔をくすぐり、色んな花が花壇に植えられていた。
歩けるように手入れされている石造りの道なりを進む。
中央まで来ると、噴水がある。小さな池には桃色や紫の花弁が気持ちよさそうに泳いでいた。
流れる水からは勢いはなく、どちらかというとこぼれ落ち、池の花弁を優しく包んでいる。
ーーそして
「待ってたよ」
噴水の近くにいた人物は、夕日に照らされて輝く気高い銀色の髪。男性とは思えないほどの透き通るような肌が光に照らされるとさらに透明感が増す。
上品な藍色の瞳は、優しさに満ちている。
忘れてはいけないことは、この人の外見に騙されてはいけないということだ。
「お待たせしてしまい、申し訳ありません」
その人物、アレン王太子殿下に頭を下げた。
腹黒い内側と純粋無垢そうな外側を持ち合わせてる彼は、私にとって尊いものだ。
「顔色、良くないけど少し休む?」
「え!? い、いいえ。平気です」
まだちょっと体調が良くないことを一瞬でバレてしまった。
さっきまでクロエ様と話していたけどそんなことは一言も……。
もしかしたら、優しさで気付かないフリをしていたのかもしれない。
顔色が悪い原因もわかってそうだし。分かってるからって何も出来ないからね。
横になって寝てれば治るものではないから、それをわかってるからこそ、第三者が声をかけることでは無いと判断したのかも知れない。
ただ単に気付かないってこともあるだろうけど。
「無理そうなら早めに言ってね」
心配そうに顔を覗き込む殿下に一瞬たじろぐ。
殿下が近付いた瞬間、ズキンッと心が痛んだからだ。
「あ、ありがとうございます」
「ノア殿がこの先で待っている。行こう」
殿下はスっと、手を差し伸ばした。
エスコートをされるのは悪い気はしないけど、少しだけ心が痛むから距離を置きたい。
けれど、殿下のエスコートを拒むのはあまりにも失礼だ。
グッと痛みを堪え、精一杯の笑顔を殿下に向け、手を伸ばした。
この痛み、なんとかならないものか。
そう思ってもどうすることも出来ないのがもどかしい。
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