乙女ゲームの悪役令嬢に転生してしまった私は、全力で死亡フラグを回避したいのに、なぜか空回りしてしまうんです(涙)

藤原 柚月

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第十二章 動き始めた……○○フラグ

三作品目の攻略対象者【クロエ視点】

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 ーー呪いがある!

 と、ソフィア様は唇をゆっくりと動かした。

 その声は震えていて、必死に声を絞り出したかのような必死さが伝わってくる。

 ゲームのシナリオだと王太子殿下は呪われていない。

 これはどういうことだ?

 新たなルートが出来たと考えるのが自然だろう。この先のフラグがどうなるのか想像がつかない。

 寮を出て、歩きながら聞いてみた。

「呪いとは、どういうことですか?」
「……具体的にはわかりませんが、ノア先生が言っていて……以前から殿下は悪夢にうなされてたみたいなんです。その原因が呪いかもしれないと」

 ノア……ノア・マーティンのことか。

 三作品目で攻略対象者の一人となる。彼のことは前々から話は聞いていたが、名前を聞く度に信じられないと思った。

 三作品は学園前の話となっている。
 しかも、デメトリアス公爵家の屋敷だ。その主人公ヒロインがアイリス。

 ソフィア様の侍女だ。

 しかも、

「そのノア先生とは仲がいいんですね」
「え!? は、はい。とても素敵な方ですよ」
「そうですか」

 ノアとソフィア様はかなり仲が悪かった。

 ノアは、蝶よ花よと育てられたソフィア様を嫌悪していた。
 何せあのワガママで使用人をいじめたり、仕打ちも酷かったんだ。

 ノアルートでは、嫌がらせされているアイリスを慰めたりフォローしたりしていた。

 今、聞く限りでは、ソフィア様とノアの仲は良好のようだ。

 三作品目は、死亡フラグは無いからそこは安心だ。

 けれど、新たなルートが出来てしまったなら少し厄介だな。

 今までが手探りでフラグを回避していたが、それがいつまでも運良く回避出来るか分からない。

 なにせソフィア様は危なっかしくて目が離せない。

 ソフィア様を支えるつもりで近付いてるから、俺が気をつけてればいいだけの話だけど。

「気になりますね、呪いがなんなのか」
「はい。多分、これからそれがわかるのかもしれません」

 そうか、だからか。王太子殿下自ら伝言するなんて少し気がかりだった。

 よっぽどソフィア様のことが気になってるのかと思ったが、王太子殿下がそんな単純では無い性格なのは理解していた。

 王太子殿下の呪いと、それにソフィア様が関わってるのだとすれば……。

 ソフィア様が黒か白か、見極めにきた。と、いったところか?

 全く食えない男だ。

 目的地の空中庭園前までついた。

 俺はソフィア様に軽くお辞儀をした。

「では、これで失礼しますね」
「はい、ありがとうございます」

 背を翻し、来た道を戻って行く。

 後ろから視線を感じるが、きっとソフィア様が俺の姿が見えなくなるまで見ているのかもしれない。

 振り向いてないから確信はないが。

 それにしても……、

「死なせない、絶対に」

 何らかの力が発揮して強制的に死亡フラグが立ってしまっても。

 死なせるわけにはいかないんだ。

 本当は、空中庭園内に入って一緒に話を聞きたかったが、王太子殿下はそれを許さないだろう。

 呪いに関しては、俺は部外者なのだから。


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