本を返すため婚約者の部屋へ向かったところ、女性を連れ込んでよく分からないことをしているところを目撃してしまいました。

四季

文字の大きさ
1 / 2

前編

しおりを挟む
 親に紹介されて出会った青年アルビシレと婚約することとなった私は、流されるように彼と生きることを決めつけられてしまった。

 でも、それに関しては、そこまで問題だとは思っていなかった。

 親がそれを望むならそれでもいい。恋人なんていなかったし、特別誰かと結ばれたいという気持ちもなかったし。だから、親に決められた道を行くのでも構わないと、そう思っていたのだ。

 だが。

「ミーチェちゃぁ~ん、今日も可愛いねぇ~、それ、水着?」
「うふ。そうでっす」
「おちゃれだなぁ~、最高だよぉ~」

 ある日の昼下がり、借りていた本を返そうと思ってアルビシレの家を訪ね彼の部屋へ入ろうとしたところ、何やら不穏な声が聞こえてきた。

 僅かに開いた扉の隙間から様子を窺う――どうやらアルビシレが女性を室内へ入れているようだ。

「かわぁ~いいぃ~ねぇ、ミーチェちゃぁ~ん」
「可愛い? 可愛い?」
「可愛いよぉ~最高だよぉ? 至高の女体だぁ~。……ちょこっとだけ、触れてみてもいいかい?」

 もう少し詳しく見てみよう。
 そう思って様子を確認していると。
 彼は女性に触れ始める。
 両手の指を芋虫のようにうにうにさせながらのタッチは不気味としか言い様がない。

「あら、こんにちは」

 そこへ通りかかったのはアルビシレの母親。

「あ、こんにちは」
「どうしたの? そんなところで。うちの息子に何か?」

 不思議そうな顔をしているアルビシレの母親。

 無理もないか、と思う。
 婚約しているとはいえ、部屋の前でうじうじしていたら、さすがに不自然というものだろう。

 でも今回は仕方がないのだ。
 女性を連れ込んでいるところに堂々と入っていくのは難しい。

「本を返しに来たのですが……」
「婚約しているのだから入っても良いのよ?」
「その……そうしたいところなのですが、何やら、女性と一緒にいらっしゃるようで……」

 事情を聞いたアルビシレの母親は堂々と扉を開けて部屋に入っていく。

「あんた! 何してるの!」

 アルビシレはまだ女性の身体を指先で意味もなくこすっている。

「……ぎょっ」
「女を連れ込んで……!? 馬鹿! 許されないわよ、そんなことして!!」

 その後私とアルビシレの婚約は破棄となった。
 アルビシレの母が息子の悪い行いから目を逸らさずにいられたために話は順調に進み、手続きは半年も経たず無事終わった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

初対面の婚約者に『ブス』と言われた令嬢です。

甘寧
恋愛
「お前は抱けるブスだな」 「はぁぁぁぁ!!??」 親の決めた婚約者と初めての顔合わせで第一声で言われた言葉。 そうですかそうですか、私は抱けるブスなんですね…… って!!こんな奴が婚約者なんて冗談じゃない!! お父様!!こいつと結婚しろと言うならば私は家を出ます!! え?結納金貰っちゃった? それじゃあ、仕方ありません。あちらから婚約を破棄したいと言わせましょう。 ※4時間ほどで書き上げたものなので、頭空っぽにして読んでください。

私知らないから!

mery
恋愛
いきなり子爵令嬢に殿下と婚約を解消するように詰め寄られる。 いやいや、私の権限では決められませんし、直接殿下に言って下さい。 あ、殿下のドス黒いオーラが見える…。 私、しーらないっ!!!

いちゃつきを見せつけて楽しいですか?

四季
恋愛
それなりに大きな力を持つ王国に第一王女として生まれた私ーーリルリナ・グランシェには婚約者がいた。 だが、婚約者に寄ってくる女性がいて……。

明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

四季
恋愛
明日結婚式でした。しかし私は見てしまったのです――非常に残念な光景を。……ではさようなら、婚約は破棄です。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

想い合っている? そうですか、ではお幸せに

四季
恋愛
コルネリア・フレンツェはある日突然訪問者の女性から告げられた。 「実は、私のお腹には彼との子がいるんです」 婚約者の相応しくない振る舞いが判明し、嵐が訪れる。

婚約者が聖女様と結婚したいと言い出したので快く送り出してあげました。

はぐれメタボ
恋愛
聖女と結婚したいと言い出した婚約者を私は快く送り出す事にしました。

王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。が、その結果こうして幸せになれたのかもしれない。

四季
恋愛
王家に生まれたエリーザはまだ幼い頃に城の前に捨てられた。

処理中です...