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3話
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この日は一旦別れることにした。
このまま話を続けても平行線のままだろう、と考えたからである。
まずはサイン自身にも確認してみなくてはならない。先のことはそれから考えよう。本人にも聞いてみなくては話を進めることはできない。女性の発言が完全に真実かも分からないし。
◆
「……今まで黙っていてごめん」
サインは女性との関係を認めた。
正直なところがある彼だから、この状況で嘘をつくことはできなかったのだろう。
「じゃあ彼女の話は本当なのね?」
「うん」
「彼女の腹に子どもがいるというのも事実なの?」
「……うん、多分」
あぁ、やはりそうだったのか。
サインと私の間には身体の関係はなかった。婚前だから当然とも言えるのだが。ただ、婚前どころか婚約者でもない女性とは身体の関係に発展していたというのは、非常に残念だ。
「残念でならないわ。他の女性とそんな関係になっていたなんて」
彼に対する信頼はすべて崩れ去った。
もう一緒にやっていくことはできない。
「ごめん。本当に。でも、知ってしまったんだ」
「何を?」
「本当の愛っていうものを」
なぜ私に対してそれを言うの? 貴方も私の存在を鬱陶しく思っているの? 私はいない方がいいのか。私という存在は、彼と彼女の関係を邪魔する存在でしかないのか。暗に去れと言っているの? だからそんなことを言えるのだろう、と、思わずにはいられない。
「……私たち、終わりにしましょう」
「うん。ごめん」
◆
私とサインの婚約は破棄された。
婚約破棄の理由は、サインが他の女性と関係を持ったこと。それゆえ、私の評判に傷がつくことはなかった。むしろ逆で、彼の評判に傷がつくことになった。彼は慰謝料を支払うことになる。こうして、手続きは無事済んだ。
婚約者がいるにもかかわらず他の女性と交わったという話が出回ったことで、サインは恥をかくこととなったらしい。もちろん彼の両親も、恥ずかしい思いをすることになっただろう。
それだけでも十分な罰。
だが、それだけで終わる話ではなかったらしくて。
恥ずかしい噂が広がったことによって、サインは、いろんな人たちから批判を受けることとなる。職場でも悪口を言われ嫌われ、冷ややかな視線を向けられることとなったらしい。時には家に石やら何やらが投げ込まれることもあったそうだ。また、家の壁に性的な落書きをされることなども、少なくはなかったようだ。
最終的にサインは親と共に遠い地へ引っ越した。
女性もまた、気の毒な道を辿ることとなったようだ。というのも、心の底から愛し合っているはずだったのに見捨てられてしまったのである。
後に、彼女は腹の中にいた子を出産。けれどもサインは父親であることを認めなかったそうだ。そして彼は逃げるように女性の前から去っていった。サインが誠実な対応をしなかったことにショックを受けた女性は、やがて、赤子を抱いたまま崖から身を投げる。そのまま亡き人となった。
◆終わり◆
このまま話を続けても平行線のままだろう、と考えたからである。
まずはサイン自身にも確認してみなくてはならない。先のことはそれから考えよう。本人にも聞いてみなくては話を進めることはできない。女性の発言が完全に真実かも分からないし。
◆
「……今まで黙っていてごめん」
サインは女性との関係を認めた。
正直なところがある彼だから、この状況で嘘をつくことはできなかったのだろう。
「じゃあ彼女の話は本当なのね?」
「うん」
「彼女の腹に子どもがいるというのも事実なの?」
「……うん、多分」
あぁ、やはりそうだったのか。
サインと私の間には身体の関係はなかった。婚前だから当然とも言えるのだが。ただ、婚前どころか婚約者でもない女性とは身体の関係に発展していたというのは、非常に残念だ。
「残念でならないわ。他の女性とそんな関係になっていたなんて」
彼に対する信頼はすべて崩れ去った。
もう一緒にやっていくことはできない。
「ごめん。本当に。でも、知ってしまったんだ」
「何を?」
「本当の愛っていうものを」
なぜ私に対してそれを言うの? 貴方も私の存在を鬱陶しく思っているの? 私はいない方がいいのか。私という存在は、彼と彼女の関係を邪魔する存在でしかないのか。暗に去れと言っているの? だからそんなことを言えるのだろう、と、思わずにはいられない。
「……私たち、終わりにしましょう」
「うん。ごめん」
◆
私とサインの婚約は破棄された。
婚約破棄の理由は、サインが他の女性と関係を持ったこと。それゆえ、私の評判に傷がつくことはなかった。むしろ逆で、彼の評判に傷がつくことになった。彼は慰謝料を支払うことになる。こうして、手続きは無事済んだ。
婚約者がいるにもかかわらず他の女性と交わったという話が出回ったことで、サインは恥をかくこととなったらしい。もちろん彼の両親も、恥ずかしい思いをすることになっただろう。
それだけでも十分な罰。
だが、それだけで終わる話ではなかったらしくて。
恥ずかしい噂が広がったことによって、サインは、いろんな人たちから批判を受けることとなる。職場でも悪口を言われ嫌われ、冷ややかな視線を向けられることとなったらしい。時には家に石やら何やらが投げ込まれることもあったそうだ。また、家の壁に性的な落書きをされることなども、少なくはなかったようだ。
最終的にサインは親と共に遠い地へ引っ越した。
女性もまた、気の毒な道を辿ることとなったようだ。というのも、心の底から愛し合っているはずだったのに見捨てられてしまったのである。
後に、彼女は腹の中にいた子を出産。けれどもサインは父親であることを認めなかったそうだ。そして彼は逃げるように女性の前から去っていった。サインが誠実な対応をしなかったことにショックを受けた女性は、やがて、赤子を抱いたまま崖から身を投げる。そのまま亡き人となった。
◆終わり◆
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