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3話
しおりを挟むいつからか私は徐々にシープのことを忘れ始めた。
過去としては残り続けるだろう。
でもそれはあくまで過去という海の中にあるたった一つのパーツでしかないのだ。
すべて、もう過ぎ去っていったものだ。
「え、そっちに?」
「ほら」
「わっ」
「どうです? 意外と違和感ないでしょう?」
「本当です……!」
「悪くはないでしょう」
「はい! はい! 本当に……想定外の上手さですっ」
私は私で生きていこう。
それがきっとこの世界で生きるということなのだから。
そうして前を向いていればいつかはきっと傷ついた過去も遠ざかってゆくはずだ。
「アイッシュさん、今日もありがとうございました」
「いえいえ、こちらこそ」
「いつも本当にありがとうございます! 教えていただけてとても嬉しく思っています」
「僕こそ、楽しいですよ。こちらこそありがとうございます。ではまた来週」
◆
あれから数年、私はアイッシュと結婚した。
意外だろうか?
……もしかしたらそうかもしれない。
けれど私たちは愛に包まれて結ばれたのだ。
この先きっと辛いことや苦難もあるかもしれない。一生良いことばかり、なんてことはないから。ただ、それでも、彼となら歩んでゆけると今はそう信じている。山だって谷だって一緒に越える覚悟を持てたからこそ、私はアイッシュと生きる道を選んだのだ。
「ボルフィナ、今週の分も飾っておいたよ」
「ありがとう!」
「今回はボルフィナのイメージで」
「わ、私!?」
「そうそう」
「えええ……ちょ、ちょっと……想定外だったわ……」
花を飾る技術は今もアイッシュに習い続けているが、家に飾る花は大抵彼が丁寧に制作してくれる――彼との暮らしは彩りに満ちている。
ちなみにシープはというと、私との婚約を勝手に破棄したことで親と大喧嘩になり勘当されてしまったそうだ。それによって親から下りてくる予定であった資産を手に入れることができないこととなってしまって。それを知った瞬間あの巻き毛の女性は離れていってしまったそうだ。価値がない、シープはそう判断されたのであろう。
女性に捨てられたシープは発狂。
数日にわたって家の前を走り回った後に海岸まで賭けていって飛び込み、そのまま沈んでいったらしい。
◆終わり◆
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