婚約破棄して支援は継続? 無理ですよ

四季

文字の大きさ
2 / 3

中編

しおりを挟む
「婚約破棄? またいきなりね。どうして?」
「好きな人ができてしまった」

 レインは正直だ。昔も、今も。だから、この話だって、本当の気持ちを話してくれているのだろう。それは分かる。そもそも、彼はこんな器用な嘘をつける人ではない。言っていることがすべて、言っていることは事実、ということなのだろう。

「ルリアというんだが、とても可憐で、可愛らしいんだ」
「へぇ……」
「俺が喋っている時はいつも笑ってくれる。うふふ、うふふ、と笑うのが、とても可愛くてな」

 他人が喋っている時にずっとうふうふ言っている……いいのか、それで。

「しかも、華奢だが出るところは出ているのでな、眺めるだけでも楽しいんだ」

 エロオヤジみたくなっているけれど、それは大丈夫なの……?

「そう。分かったわ。その女性の話はもういいわよ」
「婚約破棄、受け入れてくれるか?」
「えぇ構わないわ。ただ、貴方の家への支援は終わらせることになるけれど」

 私と彼が婚約してから、うちは彼の実家へ金銭的な支援を行っている。大きな額を与えているわけではないけれど。ただ、せめて最低限の生活ができるようにと、毎月一定のお金を渡している。

 だがその支援は婚約あってのもの。

 レインの親に罪はないが、婚約破棄となれば支援を継続することはできない。

「なっ……、それとこれとは別だろう!」
「別じゃないわ」

 私との縁は切るが支援は継続してほしい、だなんて、厚かましいにもほどがある。

「ルリアさんだった? その女性の家に支援してもらえばいいじゃない。乗り換えるというのは、そういう覚悟あってのことでしょう」

 もっとも、黙って浮気を続けられるよりかは良かったのだけれど。

「じゃあこれでお別れね、レイン」
「待ってくれ! 家への支援は続けてくれ! 親に罪はない!」

 レインは今になって慌てている。支援がなくなると気づいたからか。だが、気づくのが遅過ぎる。いざそういう話になってから気づいても、もはや手遅れ。今さらやり直すことなどできない。
しおりを挟む
感想 6

あなたにおすすめの小説

王妃さまは断罪劇に異議を唱える

土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。 そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。 彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。 王族の結婚とは。 王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。 王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。 ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。

真実の愛かどうかの問題じゃない

ひおむし
恋愛
ある日、ソフィア・ウィルソン伯爵令嬢の元へ一組の男女が押しかけた。それは元婚約者と、その『真実の愛』の相手だった。婚約破棄も済んでもう縁が切れたはずの二人が押しかけてきた理由は「お前のせいで我々の婚約が認められないんだっ」……いや、何で? よくある『真実の愛』からの『婚約破棄』の、その後のお話です。ざまぁと言えばざまぁなんですが、やったことの責任を果たせ、という話。「それはそれ。これはこれ」

なんで私だけ我慢しなくちゃならないわけ?

ワールド
恋愛
私、フォン・クラインハートは、由緒正しき家柄に生まれ、常に家族の期待に応えるべく振る舞ってまいりましたわ。恋愛、趣味、さらには私の将来に至るまで、すべては家名と伝統のため。しかし、これ以上、我慢するのは終わりにしようと決意いたしましたわ。 だってなんで私だけ我慢しなくちゃいけないと思ったんですもの。 これからは好き勝手やらせてもらいますわ。

聖水を作り続ける聖女 〜 婚約破棄しておきながら、今さら欲しいと言われても困ります!〜

手嶋ゆき
恋愛
 「ユリエ!! お前との婚約は破棄だ! 今すぐこの国から出て行け!」  バッド王太子殿下に突然婚約破棄されたユリエ。  さらにユリエの妹が、追い打ちをかける。  窮地に立たされるユリエだったが、彼女を救おうと抱きかかえる者がいた——。 ※一万文字以内の短編です。 ※小説家になろう様など他サイトにも投稿しています。

貴方が望むなら死んであげる。でも、後に何があっても、後悔しないで。

四季
恋愛
私は人の本心を読むことができる。 だから婚約者が私に「死んでほしい」と思っていることも知っている。

身分が上だからと油断しているようですけど……

四季
恋愛
私の婚約者は、私を舐めきっていました。 とにかく、女遊びし過ぎです。

婚約破棄は喜んで

nanahi
恋愛
「お前はもう美しくない。婚約破棄だ」 他の女を愛するあなたは私にそう言い放った。あなたの国を守るため、聖なる力を搾り取られ、みじめに痩せ細った私に。 え!いいんですか?喜んで私は去ります。子爵令嬢さん、厄災の件、あとはよろしく。

妹の方が大切なら私は不要ですね!

うさこ
恋愛
人の身体を『直す』特殊なスキルを持つ私。 毒親のせいで私の余命はあと僅か。 自暴自棄になった私が出会ったのは、荒っぽい元婚約者。

処理中です...