9 / 11
9話「穏やかな楽しみもあるものです」
しおりを挟む「民から愛される王女でありたいですから……できるだけ」
「ああそういうことでしたか」
それが国の平穏を守ることでもあると思う。
「はい。王女であることは変えられずとも皆の心に寄り添うことはできるはず、そう思っているのです。……と言っても、若干世間知らずな要素があるところなんかは変えようがないですけど……そこは、まぁ、置いておくとして、ですね……」
完璧な人間にはなれない。
誰しも欠けはある。
ただ、それでも、それ以上の良いところを持った愛される人間になれたら――そう考えてはいるのだ。
「セレスさんは素晴らしい方ですよ」
「……口説いてます?」
「いえ、そうではなく。純粋にそう思うのです。王女でありながら威張っていないしいきってもいない、金だけを見ているわけでもなく、贅沢することだけを生きがいとしているわけでもない。素朴で可愛らしい女性です」
「え、っと……それって口説いてます?」
違うと分かっていても敢えて言ってしまうという、呆れるような性。
「何回も仰いますね」
「ちょっとそう聞こえます……」
「それは失礼しました」
「い、いえ……」
少し、沈黙があって。
「それに、セレスさんの衣服のセンスが好きです」
「えっ……」
「前から思っていたことなのですが、セレスさんはいつも落ち着いた服装をされていますよね。ドレスにしても過剰な装飾のないものですし。……そういうところも素敵だな、と」
べた褒めされると顔が溶けてしまいそうになる。
「あ、ありがとうございます……でも、ええとその……ヴォルフさん、さっきからどうしてそんなに色々褒めてくださるのですか」
問えば。
「貴女は貴女の良いところにもっと気づくべき、そう感じたからです」
思っていたよりすんなりと答えが返ってきた。
彼はこんな場面ですら冷静だ。
「他者に言われて初めて気づけることもあるのではないかと思いまして」
そうか、だから真剣に教えてくれていたのか――何だかとても腑に落ちた。
「嬉しいです、ありがとうございます」
「参考になればと」
「はい! 元気になってきました!」
「いやいや……元から元気でしたよね……」
「あ、言われてしまいましたね」
21
あなたにおすすめの小説
王子様、あなたの不貞を私は知っております
岡暁舟
恋愛
第一王子アンソニーの婚約者、正妻として名高い公爵令嬢のクレアは、アンソニーが自分のことをそこまで本気に愛していないことを知っている。彼が夢中になっているのは、同じ公爵令嬢だが、自分よりも大部下品なソーニャだった。
「私は知っております。王子様の不貞を……」
場合によっては離縁……様々な危険をはらんでいたが、クレアはなぜか余裕で?
本編終了しました。明日以降、続編を新たに書いていきます。
婚約破棄された令嬢、商才と魅力で運命を変える
腐ったバナナ
恋愛
辺境伯家の令嬢・エリスは、婚約者アントンに社交パーティで公然と婚約破棄され、社交界からも孤立してしまう。
しかし、絶望の淵で彼女は自分の商才に気づき、静かに人生を切り拓くことを決意する。
小さな取引から始まった事業は成功を重ね、社交界では噂となり、かつての婚約者とその新婚約者ヴィオラは次々と策略に失敗して立場を失っていく。
婚約者に忘れられた上に捨てられた私は…そのおかげで、幸せを手にする事が出来ました!
coco
恋愛
婚約者の突然の記憶喪失により、婚約破棄を告げられた私。
私と別れた後、彼にはある考えがあるようで…?
婚約破棄、果てにはパーティー追放まで!? 事故死を望まれた私は、第2王子に『聖女』の力を見出され性悪女にざまぁします
アトハ
恋愛
「マリアンヌ公爵令嬢! これ以上貴様の悪行を見過ごすことはできん! 我が剣と誇りにかけて、貴様を断罪する!」
王子から突如突き付けられたのは、身に覚えのない罪状、そして婚約破棄。
更にはモンスターの蔓延る危険な森の中で、私ことマリアンヌはパーティーメンバーを追放されることとなりました。
このまま私がモンスターに襲われて"事故死"すれば、想い人と一緒になれる……という、何とも身勝手かつ非常識な理由で。
パーティーメンバーを追放された私は、森の中で鍋をかき混ぜるマイペースな変人と出会います。
どうにも彼は、私と殿下の様子に詳しいようで。
というかまさか第二王子じゃないですか?
なんでこんなところで、パーティーも組まずにのんびり鍋を食べてるんですかね!?
そして私は、聖女の力なんて持っていないですから。人違いですから!
※ 他の小説サイト様にも投稿しています
私と従者を追い出した意地悪な義姉は、後にとんでもない後悔をする事になり破滅しました。
coco
恋愛
自分の婚約者を家に住まわせたい為に、私と従者を追い出した義姉。
でも、それを後悔する日がやって来て…?
婚約破棄をした相手方は知らぬところで没落して行きました
マルローネ
恋愛
伯爵令嬢だったアンネリーは婚約者であり、侯爵でもあるスティーブンに真実の愛がどうたらという理由で婚約破棄されてしまった。
悲しみに暮れたアンネリーだったが、偶々、公爵令息のジョージと再会し交流を深めていく。
アンネリーがジョージと楽しく生活をしている中、真実の愛に目覚めたらしいスティーブンには様々な災厄? が降りかかることになり……まさに因果応報の事態が起きるのであった。
あなたの罪はいくつかしら?
碓氷雅
恋愛
公爵令嬢はとある夜会で婚約破棄を言い渡される。
非常識なだけの男ならば許容範囲、しかしあまたの罪を犯していたとは。
「あなたの罪はいくつかしら?」
・・・
認証不要とのことでしたので感想欄には公開しておりませんが、誤字を指摘していただきありがとうございます。注意深く見直しているつもりですがどうしても見落としはあるようで、本当に助かっております。
この場で感謝申し上げます。
婚約破棄をしてくれてありがとうございます~あなたといると破滅しかないので助かりました (完結)
しまうま弁当
恋愛
ブリテルス公爵家に嫁いできた伯爵令嬢のローラはアルーバ別邸で幸せなひと時を過ごしていました。すると婚約者であるベルグが突然婚約破棄を伝えてきたのだった。彼はローラの知人であるイザベラを私の代わりに婚約者にするとローラに言い渡すのだった。ですがローラは彼にこう言って公爵家を去るのでした。「婚約破棄をしてくれてありがとうございます。あなたといると破滅しかないので助かりました。」と。実はローラは婚約破棄されてむしろ安心していたのだった。それはローラがベルグがすでに取り返しのつかない事をしている事をすでに知っていたからだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる