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前編
しおりを挟むアダルベイカーの王子ウィッシュレ・アダルベイカー、彼は私の婚約者であった。
彼は気さくな人だ。
それゆえ特別美女というわけではない私に対しても楽し気に喋ってくれていた。
しかしその関係はある日突然壊れることとなる。
「ウィッシュレ、愛してるわ」
「ああ、俺も。お前だけを愛しているよ」
私は見てしまったのだ、城内の通路にて美しい女性と身体を寄せ合い見つめ合うウィッシュレの姿を。
二人は明らかに愛し合っている男女であった。
「その言葉、本当……?」
「当たり前だろ。お前以外誰を愛するっていうんだ」
「いるじゃないの、婚約者さんが」
「彼女か。彼女はべつそういうのじゃない。ただの婚約者、家の都合でそうなっただけだ」
その光景を呆然と見つめてしまっていた私は、やがて女性に気づかれてしまう。
「ちょっとあんた! 何見てんのよ!」
「あ……」
「侍女? 無礼でしょ! さっさとどっか行きなさいよッ」
女性は私がウィッシュレの婚約者であるとは知らないようだった。
私は思わずその場から逃げてしまう。
悪いことなんてしていないはずなのに何だか悪いことをしたような気になって。
がつんと言ってやれば良かった。
でもできなかった。
その時の私には勇気がなかったのだ。
――そしてその日の晩。
「見ただろう? 俺は彼女を愛しているんだ。ずっと、ずっと、前から。だから君とはもう――おしまいにするよ。婚約は破棄とする。……今まで付き合わせて悪かったね」
ウィッシュレからそんなことを言われてしまって。
こうして私は急遽王城から出ていかなくてはならないこととなってしまったのであった。
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