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後編
しおりを挟む彼は私を愛してなどいなかった。
分かっていたはずなのに――いざその真実を突きつけられると辛くて――どうしても心が痛んでしまう。
彼が私を愛するはずがない。当たり前だ。でも、それでも、もしかしたら私は心のどこかで期待してしまっていたのかもしれない。もし奇跡が起きれば……、と。限りなく低い確率だとしても、彼が私を見てくれる未来を想っていたのかもしれない。
愚かだった、私は。
本当に。
どこまでも。
そうよ、彼が私を愛するはずがなかったのに……。
どうしてこんなにショックを受けているのだろう?
どうしてこんなに悲しく辛いのだろう?
期待なんてしているつもりはなかった、けれど――でも、本当は、純粋に誰かに愛されたかったのかもしれない。
私が王城を去ったその日の晩、隕石が降ってきて城に命中した。
それはたまたまの出来事。
いわゆる天災というやつであった。
それによって王家の者はその多くが死亡した。
ウィッシュレもまたその一件によって落命した。
何でも、隕石が落ちたのが自室にかなり近い場所だったようで、飛び散った破片にやられて亡くなってしまったようだ。
また、それによってウィッシュレを愛していたあの女性は正気を失い、この世を去るという選択をすることとなってしまったそうである。
まぁそうか、愛している人が急に亡くなってしまったら……。
――隕石事件から一年、私は今日結婚する。
「今日は新しい始まり、だね」
「ええ」
愛する人と手を取り合える。
そして二人で未来を見つめ合うことができる。
こんなに嬉しいことはない。
「ここへ連れてきてくれてありがとう。そして――これからもよろしく」
「それは私の言葉ですよ」
「いやいやこっちの言葉だって」
「いえ、私の言葉です」
ここからまた、二人の物語を始めよう。
◆終わり◆
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