96 / 148
第96話 壊滅的損害
しおりを挟む
敵兵が我が陣地まで距離が約70mまで近付いていた。
「司令官! 距離約70mです。発砲許可を!」
参謀が叫ぶ!
「いや、まだだ。もう少し引き付けてからだ!」
「距離65…… 60…… 55…… 距離50!!」
緊張感が漂う中、敵兵が50m先まで近付いた。
「ヨシ! 射撃始め! 射てーー!! 」
僕の射撃命令と同時に、
『パンッ パンッ パンッ パンッ』
スナイドル銃が一斉に銃声と共に火を吹いた。馬防柵一面に白煙が広がる。
「ウッ! バタッ」
「ギャーー! バタッ」
「ウワーー! バタッ」
「なんじゃこりゃ! バタッ」
絶え間なく続く、スナイドル銃の銃声が鳴り響く。
敵軍は味方の死骸を乗り越え、一歩一歩前進してくる。ヤツらには死の恐怖というものが無いのだろうか?
確実に敵数は減らしているが、それでも兵数の差は如何ともし難い。
次々と撃ち込まれるスナイドル銃に敵兵も阿鼻叫喚だろう。戦場を知らないヤツが僕の目の前で広がる地獄の光景を見たら誰しもが絶句するだろう。
しかし、本当の地獄はこれからだ!
『完』
漫画であれば、ここで打ち切り案件だろうが、現実はそんなに甘くない……
「前方の敵! 50m切りました!」
参謀の声に僕は我に返り、次の命令を出す。
「ガトリング砲! 射撃始めーー!」
『ダダダダダダダダダダダダダダッ!!』
『パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!』
ガトリング砲の不気味な連射音が鳴り響く、それに加えてスナイドル銃もブチ撃ち込む。
僕は次々と薙ぎ倒されて行く敵兵をただ黙って見ていることしか出来なかった。
敵兵は味方の死骸を越えて一歩づつ確実に迫って来る。敵兵に本物の狂気を感じる。第1軍もまた狂っている…… そして、僕も……
狂《くる》ってなきゃ、こんな戦い方なんてやっていられない。そして、重装備歩兵隊に対して最後の命令を下す。
「第1防衛ライン陣地全兵に告げる。重装備歩兵隊を殲滅せよ!」
◇
おびただしい弾幕の中、敵軍は静かにその姿を消して行った。
その場に立っているものは誰一人もいない。そこにあるものは、我が軍に薙ぎ払われた敵軍の戦死傷者が転がっていた。
多大な犠牲者を出し、ケーリンネガー王国は攻撃を中止した。
ケーリンネガー軍の戦死傷者は約1万人を出し、我が第1軍は戦死傷者は0人だった。しかし、第1軍の意外な犠牲者は出ていた。さすがに一方的な凄惨すぎる大虐殺だったせいか、狂戦士《バーサーカー》であっても精神的に病んでしまった兵士が続出してしまった。こればかりはしょうがない…… 敵軍は状況を妥結することが出来なかったが、もしかしたら味方を捨て石にして、我が軍に恐怖を植え付けるのが目的なら作戦は十分に成功だったと言わざるを得ない。
「アレク様、いやぁ~大勝利でしたなぁ」
カルイ副司令官が上機嫌で僕に話しかけてきた。
「そうだね。まさか一方的な戦いになるとは思わなかったよ」
「そうですな。敵さんもしばらくは大人しくするでしょうな」
「ああ、あれだけの損害だ。兵の増援、部隊編成で大慌てしてるんじゃないかな」
「そのままケーリンネガーへ帰ってくれたら助かるんですけどね」
「全くだよ」
僕とカルイ副司令官は淡い期待をしていた。
「カルイ副司令。敵軍が奇策を考えてるかも知れないから偵察、監視だけは抜かりなくしておくように厳命しておいてくれ。アイツらに裏でもかかれでもしたら、目も当てられないからな」
「ハッ! 了解しました」
カルイ副司令官はそう言って、その場を離れて行った。
しかし、この惨状…… 誰が予想してただろうか。テレビとかゲームなら、『ああ、そうか』と他人事のように考えていただろう。実際に目の前で起こるとあまりの残虐な血の海地獄に吐き気がしてしまう。
こうして、ラニバーレ平原の戦い第1日目が終わった。
――翌日
「司令官! 起きて下さい!」
参謀が僕の休んでいるテントに慌てた様子で入ってきた。本来なら後方の宿舎で休むのだが、開戦直後ということもあり、最前線で兵士と共にテントを設置して休んでいた。
「んっ!? どうしたんだ? そんなに慌てて」
僕が聞き直すと、参謀は
「敵です! 敵がまたこちらに向かって動き出しました!」
「ハァ~ 昨日あれだけの損害を出したのに? またやって来たの?」
「信じられませんがそのようです。何か対策でも思い付いたのでしょうか?」
突然現れた。カルイ副司令官はドン引きした顔で僕にそう告げた……
「司令官! 距離約70mです。発砲許可を!」
参謀が叫ぶ!
「いや、まだだ。もう少し引き付けてからだ!」
「距離65…… 60…… 55…… 距離50!!」
緊張感が漂う中、敵兵が50m先まで近付いた。
「ヨシ! 射撃始め! 射てーー!! 」
僕の射撃命令と同時に、
『パンッ パンッ パンッ パンッ』
スナイドル銃が一斉に銃声と共に火を吹いた。馬防柵一面に白煙が広がる。
「ウッ! バタッ」
「ギャーー! バタッ」
「ウワーー! バタッ」
「なんじゃこりゃ! バタッ」
絶え間なく続く、スナイドル銃の銃声が鳴り響く。
敵軍は味方の死骸を乗り越え、一歩一歩前進してくる。ヤツらには死の恐怖というものが無いのだろうか?
確実に敵数は減らしているが、それでも兵数の差は如何ともし難い。
次々と撃ち込まれるスナイドル銃に敵兵も阿鼻叫喚だろう。戦場を知らないヤツが僕の目の前で広がる地獄の光景を見たら誰しもが絶句するだろう。
しかし、本当の地獄はこれからだ!
『完』
漫画であれば、ここで打ち切り案件だろうが、現実はそんなに甘くない……
「前方の敵! 50m切りました!」
参謀の声に僕は我に返り、次の命令を出す。
「ガトリング砲! 射撃始めーー!」
『ダダダダダダダダダダダダダダッ!!』
『パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!』
ガトリング砲の不気味な連射音が鳴り響く、それに加えてスナイドル銃もブチ撃ち込む。
僕は次々と薙ぎ倒されて行く敵兵をただ黙って見ていることしか出来なかった。
敵兵は味方の死骸を越えて一歩づつ確実に迫って来る。敵兵に本物の狂気を感じる。第1軍もまた狂っている…… そして、僕も……
狂《くる》ってなきゃ、こんな戦い方なんてやっていられない。そして、重装備歩兵隊に対して最後の命令を下す。
「第1防衛ライン陣地全兵に告げる。重装備歩兵隊を殲滅せよ!」
◇
おびただしい弾幕の中、敵軍は静かにその姿を消して行った。
その場に立っているものは誰一人もいない。そこにあるものは、我が軍に薙ぎ払われた敵軍の戦死傷者が転がっていた。
多大な犠牲者を出し、ケーリンネガー王国は攻撃を中止した。
ケーリンネガー軍の戦死傷者は約1万人を出し、我が第1軍は戦死傷者は0人だった。しかし、第1軍の意外な犠牲者は出ていた。さすがに一方的な凄惨すぎる大虐殺だったせいか、狂戦士《バーサーカー》であっても精神的に病んでしまった兵士が続出してしまった。こればかりはしょうがない…… 敵軍は状況を妥結することが出来なかったが、もしかしたら味方を捨て石にして、我が軍に恐怖を植え付けるのが目的なら作戦は十分に成功だったと言わざるを得ない。
「アレク様、いやぁ~大勝利でしたなぁ」
カルイ副司令官が上機嫌で僕に話しかけてきた。
「そうだね。まさか一方的な戦いになるとは思わなかったよ」
「そうですな。敵さんもしばらくは大人しくするでしょうな」
「ああ、あれだけの損害だ。兵の増援、部隊編成で大慌てしてるんじゃないかな」
「そのままケーリンネガーへ帰ってくれたら助かるんですけどね」
「全くだよ」
僕とカルイ副司令官は淡い期待をしていた。
「カルイ副司令。敵軍が奇策を考えてるかも知れないから偵察、監視だけは抜かりなくしておくように厳命しておいてくれ。アイツらに裏でもかかれでもしたら、目も当てられないからな」
「ハッ! 了解しました」
カルイ副司令官はそう言って、その場を離れて行った。
しかし、この惨状…… 誰が予想してただろうか。テレビとかゲームなら、『ああ、そうか』と他人事のように考えていただろう。実際に目の前で起こるとあまりの残虐な血の海地獄に吐き気がしてしまう。
こうして、ラニバーレ平原の戦い第1日目が終わった。
――翌日
「司令官! 起きて下さい!」
参謀が僕の休んでいるテントに慌てた様子で入ってきた。本来なら後方の宿舎で休むのだが、開戦直後ということもあり、最前線で兵士と共にテントを設置して休んでいた。
「んっ!? どうしたんだ? そんなに慌てて」
僕が聞き直すと、参謀は
「敵です! 敵がまたこちらに向かって動き出しました!」
「ハァ~ 昨日あれだけの損害を出したのに? またやって来たの?」
「信じられませんがそのようです。何か対策でも思い付いたのでしょうか?」
突然現れた。カルイ副司令官はドン引きした顔で僕にそう告げた……
10
あなたにおすすめの小説
悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!
水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。
ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。
しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。
★ファンタジー小説大賞エントリー中です。
※完結しました!
幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない
しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?
ラララキヲ
ファンタジー
わたくしは出来損ない。
誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。
それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。
水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。
そんなわたくしでも期待されている事がある。
それは『子を生むこと』。
血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……
政略結婚で決められた婚約者。
そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。
婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……
しかし……──
そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。
前世の記憶、前世の知識……
わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……
水魔法しか使えない出来損ない……
でも水は使える……
水……水分……液体…………
あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?
そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──
【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】
【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】
【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】
◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。
◇ご都合展開。矛盾もあるよ!
◇なろうにも上げてます。
【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!
MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!
笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる