ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

文字の大きさ
102 / 148

第102話 二つ名は……

しおりを挟む
最上段から母上が華麗に飛び降りる。つかつかと僕の目の前まで近付くと、

『ドスッ』

おもいっきり気合いの入った腹パンを喰らった…… 僕はその場で崩れ落ちる。

「これくらいの事で城を落とせないとは、なんとも情けない愚息だこと。恥を知りなさい恥を!」

鬼の形相で睨みつける母上をセンターに、そして山車に乗っていたご婦人たちが横並びに並んでいた。

「まあまあ会長。ここは落ち着いて。情けない男共には、この戦場は任せておけないわ。ここは私達が男共に真の正義暴力とは何かを知らしめてやりましょう」

ドールの母親ゼニース伯爵夫人まで狂気じみた事を言い始めた。

「そうね。真の正義暴力とは何かを伝授するのには、ちょうど良い機会ね。では副会長。口上を頼むわよ」
ベルガーさんはマルコス。メルヘン子爵夫人はミレーユの母君だ。ハナーウェさんとユーミィさんは王都でも超有名な天才ど
「はい。会長」

どこからどう見ても貴族とは思えない見知らぬ婦人が会長でもある母上に返事をしていた。

「母上。良いところを邪魔するようで申し訳ありませんが、副会長さんにはこれまでお会いしたことがないのですが?」

恐る恐る母上に聞いてみた。

「副会長のバッキー・ハーネストさんね。平民の出だけど相当強いわよ。二つ名は『地獄の暴走ケルベロス』よ」

「副会長のバッキー・ハーネストです。お目にかかり光栄です。アレク様にはいつも娘のマリアがお世話になっております」

「はぁい? マリアって、もしかしてマリア・ハーネスト嬢のことですか?」

「マリア・ハーネストはわたくしの娘にございます」

マリアの母親であるバッキ―さんがエレガントなカーテシーで答えた。

「こ、こちらこそ、マリア嬢にはお世話になっております」

顔を硬直させながら返事を返した。


――マジかよ? マリアの母親が狂乱鬼婦人会きふじんかいの副会長で、二つ名が地獄の暴走ケルベロス? 母娘おやこで暴走かよ!


「しかたがないわね。アレク、お前のようなゴミクズに狂乱鬼婦人会きふじんかいのメンバーを二つ名と共に紹介してあげるわ」

「は、はい」

「先ずは、ユーリッペ・オオモーノ・ツリタカッター侯爵夫人『魔界の暴君』。マフィン・ケーキ・ホスピカス侯爵夫人『死神の宰相』。ツータン・カメーン・ライダー侯爵夫人『煉獄の手品師マジシャン』。ルピー・ルピア・ゼニース伯爵夫人『修羅界の銭ゲバ』。ストーカート・カバード・フォクスト公爵夫人『暗黒街の暗殺者アサシン』。シャンリン・コーンディショナ・シャンブー侯爵夫人『異世界の悪魔的豊満肉体ナイスバディ』。ベンガル・ベルガーさん『丘の上の黒い十字架ヴァイオレント・ダークネス』。モォーリ・ハナーウェさん『惨殺のデザイナー』。カッツラー・ユーミィさん『終末のインフルエンサー』。ここにはいないけど、ファンシ・ドーリム・メルヘン子爵夫人『空気を凍りつかせる者エアー・クラッシャー』」

「……………………」


――何なんだ? 二つ名のオンパレードは? 因みに、ツリタカッター侯爵夫人はサンペータ。ホスピカス侯爵夫人はルブラン。ライダー侯爵夫人はマリック。ゼニース伯爵夫人はドール。フォクスト公爵夫人はルナール。シャンブー侯爵夫人はフローラ。ベルガーさんはマルコス。メルヘン子爵夫人はミレーユの母君であり、ハナーウェさんとユーミィさんは王都でも超有名なカリスマ天才ドレスデザイナーだ。


「最後にワールグッチ・バットゥ・ジェーンスター伯爵夫人『毒舌の邪神』。ジェーンスター伯爵夫人は素晴らしい武力をお持ちになっているけれど、それ以上に口のみで相手をほふるという武器|《スキル》を持っているわ」

「口だけでほふるって?」

「じゃあ、ジェーンスター伯爵夫人。このゴミクズに軽くあいさつしてもらえるかしら?」

「はい。激烈ワンパン会長」

ジェーンスター伯爵夫人は会長である母上に恐れることなく毒舌を吐きながら返事をし、僕の目の前に立った。

「ごきげんは如何でしょうか? ポンコツヘタレ大王魔王殿下」

「えっ!?」

「えっ!?って、それだけですか? さすが顔だけポンコツヘタレ大王魔王殿下だけのことはあるわ。娘から聞いてたけど、どこまでおゲスなおマヌケな残念王子様なんでしょう。とりあえず死ねッ!!」

「娘さんって、まさか…」

この時点で僕は涙目になっていた。

「ああ、わたくしの娘ですね。メアリー・アン・ジェーンスターですわ。この腐れボケカスクズ顔だけポンコツヘタレ大王魔王殿下。早く死ねッ!」

ついに僕の涙腺が崩壊した。


――!? や、やはり、メアリーの母親だったのか! どおりでキレッキレの毒舌なわけだ。


「何? 泣いてんの? こんなことだけで泣くの? 泣けばめてくれると思ってるの? まるで赤ん坊と同じね。でも、お前にかける慈悲は無い。無慈悲に死ねッ!」

「うわわわわわわわわわーん!! 死ねって三回も言われたー! 無慈悲に死ねってなんだよぉー!」

この一言で、僕の涙腺はついに大決壊をおこしてしまった。俗にいうガチ泣きである。 

「まあまあ、大の大人がガチ泣きなんて滑稽ね。まあジェーンスター伯爵夫人からすれば他愛もない出来損ないのザコモブキャラってところかしら。まあ、ジェーンスター伯爵夫人もその辺でめていいわよ」

「ウィ ムッシュ。地獄のミセス暴君」

『ピキッ』

母上は満面の微笑みを絶さずに、こめかみに青筋を立てていた。

「ジェーンスター伯爵夫人。あなただけよ。わたくしのことを二つ名で呼ぶのは」

「ふふふ。わたくしと血みどろの残虐女王陛下との間柄ですから」

『ピキ ピキッ』

母上のこめかみに二本目の青筋が立っていた。

「まあ、あなたとは同級生で大親友だけど…… そろそろ普通に私|《わたくし》の名前を呼んでもらえるかしら?」

「さすがにバキバキの脳筋王女のお願いでも、これだけは私|《わたくし》の矜持だから無理。ごめんね。地上最狂のメスゴリラ」

『ピキ ピキ ピキッ』

母上のこめかみに三本目の青筋が立った。

「ふぅ~ 相変わらず鋭利な刃物みたいな毒舌ね。まあ、良いわ。ホントあなたは昔から変わらないのね。どうしてこんなのが親友なのか謎だわ」

「フフフ。これも腐れ縁ってやつかしら。ねぇ、異次元の雌豚ファ〇ク」

ジェーンスター伯爵夫人は涼し気な顔で中指を立てていた。

『ピキ ピキ ピキ ピキッ』

ついに母上のこめかみに四本目の青筋が立ってしまった。

「ふぅ~ それ私の二つ名じゃないわよ。ワールグッチ」

母上はジェーンスター伯爵夫人を見ながら、呆れ顔で本日二回目の大きなため息をついた。


――こ、怖すぎる…… 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...