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第122話 メアリーの前世
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黙り込んでしまったメアリーに僕は話を続けた。
「それに…… 僕の親友だったグランプロス帝国皇太子のアイスキーとユリアラに約束をしたんだ。彼らの分も、この世界で幸せになってやるって。それが親友をこの手で殺めてしまったアイスキーとその後を追ったユリアラ達への僕の贖罪…… そして、この世界に残された僕の覚悟だ。それと僕が生きて幸せになることが生きることに執着しなかった二人への『ざまぁ』でもあるんだ」
僕はそう言って自分の手を見た。僕の手は穢れてしまったけれど、彼らの分まで生きて生き抜いて幸せになるんだ。それだけが唯一、僕に出来る二人への贖罪だから……
「……………………」
黙り込んでいたメアリーが突然、
「私、決めたわ。私もこっちの世界に残るわ。そして、あなたが幸せになる手伝いをしてあげる!」
メアリーはプリストの世界に残り、僕の幸せの手伝いをするとかトチ狂ったことを言い出した。
「ハァ!? なんでそうなるんだ! 折角、日本に帰れるチャンスじゃないか!」
「私ね…… 両親が居ないのよ。小さい頃に両親が失踪しちゃって、ずっと母方の祖母に育ててもらったの。その祖母も二年前の私が高1の時に亡くなって天涯孤独ってやつかな。親戚付き合いもほとんど無かったから、私が日本に居なくても誰も悲しむ人はいないわ。こっちの世界には両親と弟も居るし、クリスだっているから寂しくはないわ。ルナールとマリアに別れるのは辛いけど…… あと、フローラとミレーユにサヨナラを言うのも辛いわね」
「――そうか…… 分かったよ。とりあえず、まだ考える時間はたっぷりとあるから、色々と考えてから決断をした方がいいよ」
――メアリーはメアリーで色々と経験して来たんだな。ここは彼女の意思を尊重してあげよう。これ以上話し込むと毒舌の精霊が目覚めてしまうかもしれないし。
「じゃあ、私の話はおしまい。本当にアレク。今日はみんなのためにありがとうね」
メアリーはそう言って、手をヒラヒラさせながら部屋を出て行った。
◇
後日、ヒロインたちから最終的な答えではないが、今の考えを聞いてみた。
ルナール、マリア、フローラ、ミレーユは日本に帰るとのことだった。
クリスについては、卒業後はクリスの両親であるチャンスキー男爵家とは離れ、僕の妹分として王宮で生活しながら魔法研究所で研究者として働いてもらうのはどうだろうかと提案させてもらった。
クリスも僕の提案に乗ってくれ。後日、チャンスキー男爵夫妻を父上と母上の名において王宮に呼び出した。
チャンスキー男爵夫妻はごちゃごちゃと言っていたが、父である国王陛下が強引に黙らせた。父上がというよりは母上の方がクリスの現状に同情し、率先して正義の暴力で、チャンスキー男爵夫妻を黙らせた。
メアリーもこちらの世界に残ることをルナールとマリアに告げると、必死になりメアリーを止めようとしたがメアリーの決意は変わらなかった。
◇
そして…… 卒業式を間近に迎えた。
その頃になると僕の髪も銀髪から金髪に戻り、究極魔法をいつでも使えるようになった。ヒロインたちとは何度かの打ち合わせを済ませ、いつでもヒロイン達を日本に送り出す準備も整った。
ルナール達にはXデーまでは、このプリストの世界で今まで育ててくれた家族へ残された時間を大事にして欲しいとお願いをした。
◇
みんなとの話し合いで、Xデーは卒業式から一週間後の深夜に決定し、各自の自宅に向け、遠隔操作で究極魔法を使うことになった。
あと、ヒロインたちからの強い要望で、ヒロインたちと僕だけでお茶会を開くことになった。
そのお茶会こそが最終打ち合わせとなる。彼女たちにとって最後の晩餐と言ったところだろうか。
お茶会の会場はシンシアヌ高原が良いとのことで、みんなの意見が一致した。景色も良く、落ち着いた時間を過ごせると言う理由からだった。
移動手段については前回は徒歩だったが、今回は特製の馬車を準備させてもらった。
僕の自信作として華々しくデビューをする特製馬車は、揺れや振動を軽減するためにタイヤは木製の車輪にゴムを厚目に巻き付ける。わかりやしく説明するならば、超高級な自転車のタイヤだと思ってもらえたら良いだろう。
そして、プリストの世界で特許申請でもしようかと思うほどの新技術『インディペンデント・サスペンション』である。
インディペンデント・サスペンションとは、左右の車輪が別々なシャシー取り付けられているので、片方のタイヤに衝撃があっても、もう片方には伝わらない。まさに揺れや振動を抑え、快適空間をお約束する一品なのだ。
さらに、もう1つ秘密が隠されているのだ。
「それに…… 僕の親友だったグランプロス帝国皇太子のアイスキーとユリアラに約束をしたんだ。彼らの分も、この世界で幸せになってやるって。それが親友をこの手で殺めてしまったアイスキーとその後を追ったユリアラ達への僕の贖罪…… そして、この世界に残された僕の覚悟だ。それと僕が生きて幸せになることが生きることに執着しなかった二人への『ざまぁ』でもあるんだ」
僕はそう言って自分の手を見た。僕の手は穢れてしまったけれど、彼らの分まで生きて生き抜いて幸せになるんだ。それだけが唯一、僕に出来る二人への贖罪だから……
「……………………」
黙り込んでいたメアリーが突然、
「私、決めたわ。私もこっちの世界に残るわ。そして、あなたが幸せになる手伝いをしてあげる!」
メアリーはプリストの世界に残り、僕の幸せの手伝いをするとかトチ狂ったことを言い出した。
「ハァ!? なんでそうなるんだ! 折角、日本に帰れるチャンスじゃないか!」
「私ね…… 両親が居ないのよ。小さい頃に両親が失踪しちゃって、ずっと母方の祖母に育ててもらったの。その祖母も二年前の私が高1の時に亡くなって天涯孤独ってやつかな。親戚付き合いもほとんど無かったから、私が日本に居なくても誰も悲しむ人はいないわ。こっちの世界には両親と弟も居るし、クリスだっているから寂しくはないわ。ルナールとマリアに別れるのは辛いけど…… あと、フローラとミレーユにサヨナラを言うのも辛いわね」
「――そうか…… 分かったよ。とりあえず、まだ考える時間はたっぷりとあるから、色々と考えてから決断をした方がいいよ」
――メアリーはメアリーで色々と経験して来たんだな。ここは彼女の意思を尊重してあげよう。これ以上話し込むと毒舌の精霊が目覚めてしまうかもしれないし。
「じゃあ、私の話はおしまい。本当にアレク。今日はみんなのためにありがとうね」
メアリーはそう言って、手をヒラヒラさせながら部屋を出て行った。
◇
後日、ヒロインたちから最終的な答えではないが、今の考えを聞いてみた。
ルナール、マリア、フローラ、ミレーユは日本に帰るとのことだった。
クリスについては、卒業後はクリスの両親であるチャンスキー男爵家とは離れ、僕の妹分として王宮で生活しながら魔法研究所で研究者として働いてもらうのはどうだろうかと提案させてもらった。
クリスも僕の提案に乗ってくれ。後日、チャンスキー男爵夫妻を父上と母上の名において王宮に呼び出した。
チャンスキー男爵夫妻はごちゃごちゃと言っていたが、父である国王陛下が強引に黙らせた。父上がというよりは母上の方がクリスの現状に同情し、率先して正義の暴力で、チャンスキー男爵夫妻を黙らせた。
メアリーもこちらの世界に残ることをルナールとマリアに告げると、必死になりメアリーを止めようとしたがメアリーの決意は変わらなかった。
◇
そして…… 卒業式を間近に迎えた。
その頃になると僕の髪も銀髪から金髪に戻り、究極魔法をいつでも使えるようになった。ヒロインたちとは何度かの打ち合わせを済ませ、いつでもヒロイン達を日本に送り出す準備も整った。
ルナール達にはXデーまでは、このプリストの世界で今まで育ててくれた家族へ残された時間を大事にして欲しいとお願いをした。
◇
みんなとの話し合いで、Xデーは卒業式から一週間後の深夜に決定し、各自の自宅に向け、遠隔操作で究極魔法を使うことになった。
あと、ヒロインたちからの強い要望で、ヒロインたちと僕だけでお茶会を開くことになった。
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そして、プリストの世界で特許申請でもしようかと思うほどの新技術『インディペンデント・サスペンション』である。
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