ざまぁにはざまぁでお返し致します ~ラスボス王子はヒロインたちと悪役令嬢にざまぁしたいと思います~

陸奥 霧風

文字の大きさ
4 / 148

第4話 悪役令嬢ルナール・ミラ・フォクスト

しおりを挟む
――!?


「ごめんなさい。私ったらよそ見してたみたいで…… 本当にごめんなさい」

メインヒロインのマリア・ハーネスト嬢が申し訳なさそうに謝っていた。

「君、危ないじゃないか! これでも一応は王子なんだぞ! それにアレクに何かあったら大変な事になるんだぞ!」

ルブランがマリア・ハーネスト嬢に注意をしていた。

「お前、随分と飛ばされたなぁ。立てるか?」

マリックが僕の手を引っ張り起こし上がらせてくれた。

「マリックありがとう。ルブランもうその辺で許してあげて、君もよそ見をしないようにしてくれ」

僕は余裕のある大人の対応をした。

――正直、後ろからの高速タックルはやめて欲しい…… もう少しで首と胴体が離れるところだったぞ。ルブランとマリック。お前達少しは王族を敬え! それとな人前なんだから最低限『殿下』は付けろ!

「あの~…… 私…王子様だったなんて知らなくて…… 私、マリ……」

「さぁ、みんな教室に行こうか」

僕はマリア嬢が自分の名前を言いそうな雰囲気だったので、スルーをして教室へと向かった。


「アレク」

「なんだい? ドール」

「さっきの、可愛かったな」

「お前なぁ…… 余所のむすめばっかり見ていると婚約者様にマジで殺されるぞ」

「そりゃ~ そうだけど…… でも可愛かったなぁ~」

「お前ホントになぁ…… お前。この前、婚約者様にブチ殺されかけたことを忘れたのか? 僕ら四人で『許してやって下さい! ドールによく言い聞かせてやりますから今回は勘弁してください。この通りです』って土下座をして、やっと許してもらえたんだぞ。こっちの方がホントに勘弁してくれって感じだよ」

僕はドールに釘を刺した。

――王子に土下座させるドールの婚約者様は、末恐ろしいお方であることはハッキリさせておきたい……

「ドール、ホントに気をつけてくれよ。お前の婚約者様はやきもち焼きですぐにキレるからなぁ」

サンペータは困った顔で言った。

「やきもちを焼いてくれるなんて可愛いじゃないか。そんな彼女と婚約できるなんて、俺幸せすぎる!」

ドールはノロケ始めやがった。いつかコイツを地獄へ落とす!



教室に着き、空いている席に座った。

「アレク。お前、新入生代表の挨拶辞退したんだってな」

マリックが不思議そうな顔で聞いてきた。

「ああ、丁寧に辞退させてもらったよ。あまり学園で目立ちたくなくってね」

「お前イヤミか! 顔も良くて勉強も出来る。おまけに運動、魔法何でも一流、残念なのは酔拳とエムタイくらいか……」

「お前ら酔拳をなめるなよ! 酔拳は酒を呑めば呑むほど強くなれるんだぞ! と言うことは酒が呑めるってことだ! しかも合法的に! あとなエムタイは凄いんだぞ! エムタイを極めるとエムタイの神『マモォール鳥』からご加護がもらえるんだぞ!」

マリックから酔拳とエムタイを残念な部類に入れられた為、そのあまりにも酷い考え方に憤りを覚える。

「アレク…… ただ酒が呑んでストレス発散に暴れたいだけだろ? 疲れたオッサンと同類じゃないか」

「……………………」

ルブランの核心をつく発言に言葉も出なかった…… そう、それは的を射た図星だった……





入学式も終わり新入生代表のフラグを折ることが出来たが、強引な力技でヒロインとの出会いフラグは回避出来なかった。自分自身の不甲斐なさに、次こそはとフラグを折るぞと覚悟を決めるのだった。


学園に入学してから数か月間、マリア嬢の来襲は増えて行った。高速タックルに始まり、迷子になり僕らに助けを求める。僕たちの前で物を落とす。僕の攻略を一旦休止して外堀を埋めるべくサンペータ達に近寄るなど、彼女の惜しみない努力には心からの賛辞を送りたいが、悲しいことにラスボスとして恋愛フラグは折り続けねばならない。


許せよ。マリア嬢…… 僕はエムタイの神『マモォール鳥』に愛されし者。この乙女ゲーの世界で、責任を持って自分の役割を全うしなければならない。ラスボスとして…… 鬼畜王子として、君の今までの努力、これからするであろう努力に『ざまぁ』をする人間として…… 覚悟しやがれ!

ということでマリア嬢に関してはスルーしている。何かあったときはドールを中心にマリア嬢を押し付けている。ドールにお願いする理由…… やきもち焼きの婚約者に殺されろ! この一点の為だけにドールに押し付けている。





ある日、僕は珍しく一人で園庭を歩いていると『ギャー ギャー』とうるさく鳴いている得体のしれない小鳥のさえずりか? といわんばかりの大騒音を耳にした。

怖いもの見たさと何事かと興味が沸き、周りにバレないようこっそりと近づいた…… 姿は見えないが声だけは聞こえてきた。何やら言い争いでもしているのだろうか? 悪趣味とわかっていながらも、僕の探求心に火が着き、盗み聞きをすることにした。


「あなた最近と言うか入学式からずっと、アレク様にちょっかい出してるみたいじゃないの! 平民のあなたがどういうことなのかしら」

「そうよ。ちょっと頭が良いからって平民が貴族の通う学園にくるんじゃないわよ」

「私、そんなつもりじゃ……」


――!? あの声はマリア嬢か? 数人の貴族らしい女子生徒がマリア嬢に絡んでいるようだ……


「平民のあなたがそんなつもりじゃなくてもアレク様公式ファンクラブが許すわけないでしょ!」

「公式ファンクラブ?……」

「あなたね。ファンクラブも知らないの? とんだ田舎者ね。アレク様公式ファンクラブ会長であり、ファンクラブ会員NO.1の公爵令嬢ルナール・フォクスト様! 彼女に一言言ってやって下さい!」


――!? 自己紹介か? うん、自己紹介までしてくれてありがとう。フォクスト公爵家令嬢ルナール・ミラ・フォクスト嬢。ゲーム内でもヒロイン達の邪魔をしてくる悪役令嬢のリーダー格だ…… まさか、こんなところで会うとは…… 実際には隠れているから会っていないのだが……


「あなたの行動はファンクラブ条約第2章第3条、アレク様に対して抜け駆けは絶対しないに該当しているわ。ちなみにファンクラブ条約第3章第1条は、アレク様の監視を怠る事を禁ずるよ。よく覚えておきなさい」


――!? 僕の監視を怠る事を禁ずるだと? それは立派な僕のストーカーじゃないか!! ファンクラブこわっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!

えながゆうき
ファンタジー
 妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!  剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

水しか操れない無能と言われて虐げられてきた令嬢に転生していたようです。ところで皆さん。人体の殆どが水分から出来ているって知ってました?

ラララキヲ
ファンタジー
 わたくしは出来損ない。  誰もが5属性の魔力を持って生まれてくるこの世界で、水の魔力だけしか持っていなかった欠陥品。  それでも、そんなわたくしでも侯爵家の血と伯爵家の血を引いている『血だけは価値のある女』。  水の魔力しかないわたくしは皆から無能と呼ばれた。平民さえもわたくしの事を馬鹿にする。  そんなわたくしでも期待されている事がある。  それは『子を生むこと』。  血は良いのだから次はまともな者が生まれてくるだろう、と期待されている。わたくしにはそれしか価値がないから……  政略結婚で決められた婚約者。  そんな婚約者と親しくする御令嬢。二人が愛し合っているのならわたくしはむしろ邪魔だと思い、わたくしは父に相談した。  婚約者の為にもわたくしが身を引くべきではないかと……  しかし……──  そんなわたくしはある日突然……本当に突然、前世の記憶を思い出した。  前世の記憶、前世の知識……  わたくしの頭は霧が晴れたかのように世界が突然広がった……  水魔法しか使えない出来損ない……  でも水は使える……  水……水分……液体…………  あら? なんだかなんでもできる気がするわ……?  そしてわたくしは、前世の雑な知識でわたくしを虐げた人たちに仕返しを始める……──   【※女性蔑視な発言が多々出てきますので嫌な方は注意して下さい】 【※知識の無い者がフワッとした知識で書いてますので『これは違う!』が許せない人は読まない方が良いです】 【※ファンタジーに現実を引き合いに出してあれこれ考えてしまう人にも合わないと思います】 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇ご都合展開。矛盾もあるよ! ◇なろうにも上げてます。

【完結】立場を弁えぬモブ令嬢Aは、ヒロインをぶっ潰し、ついでに恋も叶えちゃいます!

MEIKO
ファンタジー
最近まで死の病に冒されていたランドン伯爵家令嬢のアリシア。十六歳になったのを機に、胸をときめかせながら帝都学園にやって来た。「病も克服したし、今日からドキドキワクワクの学園生活が始まるんだわ!」そう思いながら一歩踏み入れた瞬間浮かれ過ぎてコケた。その時、突然奇妙な記憶が呼び醒まされる。見たこともない子爵家の令嬢ルーシーが、学園に通う見目麗しい男性達との恋模様を繰り広げる乙女ゲームの場面が、次から次へと思い浮かぶ。この記憶って、もしかして前世?かつての自分は、日本人の女子高生だったことを思い出す。そして目の前で転んでしまった私を心配そうに見つめる美しい令嬢キャロラインは、断罪される側の人間なのだと気付く…。「こんな見た目も心も綺麗な方が、そんな目に遭っていいいわけ!?」おまけに婚約者までもがヒロインに懸想していて、自分に見向きもしない。そう愕然としたアリシアは、自らキャロライン嬢の取り巻きAとなり、断罪を阻止し婚約者の目を覚まさせようと暗躍することを決める。ヒロインのヤロウ…赦すまじ!  笑って泣けるコメディです。この作品のアイデアが浮かんだ時、男女の恋愛以外には考えられず、BLじゃない物語は初挑戦です。貴族的表現を取り入れていますが、あくまで違う世界です。おかしいところもあるかと思いますが、ご了承下さいね。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

処理中です...